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第13話【フェアリーの実力】

 なぜリズがお怒りなのか?

 なぜリズはこんなにもボロボロなのか?

 なぜフェアリーはこんなところで寝ていたのか?


 それら全ての事情を説明されてフェアリーは納得した。


「なるほど。そう言うことでしたか。なら寝坊した件については謝ります。でも――」


 フェアリーは自分の頭を指差した。

 そこにはリズにぶん殴られたタンコブが多段に腫れ上がっている。


「こんなに殴ることないでしょう! 穢らわしい!」


「いいからさっさと戦いなさいよ。あんたあれだけ偉そうなこと言ったんだから、負けたら一生バカにするからね」


「誰に言ってるんですか。私がドラゴン以外に負けるわけないでしょう。そこで見てなさい。まったく……」


 不貞腐れながらフェアリーは目の前に立つイルセラと、その前にいる大きな騎士を見た。


 他より少しだけマシな闘気を見せるこの大きな騎士に、フェアリーはピンと来た。

 どうやらコイツが例の剣聖とやらみたいだ。

 はっきり言って人間に毛が生えた程度の闘気しか感じない。


「ようやくお目覚めみたいね? 主がこんなにボロボロになるまで気づかないなんて、とんだ『使い魔』だわ」


 イルセラに言われ、フェアリーは腕を組んで彼女を見つめ返した。


「それが例の【剣聖】とやらですか? 他よりちょっとマシなだけで、やっぱり弱そうですね」


「な!」


 肩を竦めるフェアリーにイルセラが絶句する。

【剣聖】を目前に弱そうと言い放つフェアリーに、観戦者たちが湧き上がる。


「【剣聖】が弱そうだと!?」

「自分の姿を見てから言え!」

「お前の方が弱そうだよ!」

「戦い方知ってんのかぁ?」


 外野がうるさいがフェアリーは完全に無視した。

 

「イルセラさん。悪いことは言いません。恥を晒す前に降参してくれませんか?」


「……? なん、ですって?」


 さすがにイルセラだけでなく周囲も絶句した。

 あまりに舐め腐ったフェアリーの言動に、今度はブロンクソン騎士長が前に出てきた。


「キサマ! 言葉を慎め!」


「事実を言ったまでです。勝負になりませんよ? 私と、そこの【剣聖】では。それとも、あなたが私と戦いますか? もっと話にならなくなりますが……」


「キ、キサマ……」


「下がりなさいブロンクソン」


「イルセラ様……」


「【剣聖】本気でやりなさい。どうせ『使い魔』は殺しても一日経てば回復するわ」


 指示された剣聖はフェアリーの前に立ち大剣を構えた。

 リズの時とは違い、本気で殺す気だと分かる殺気を放ってきた。


 ドラゴンの殺気に比べれば、あまりに可愛い殺気なのだが、周囲の観戦者たちや騎士たち、そしてリズも、その剣聖から発せられる殺気に戦慄していた。


 あまりのレベルの低さにフェアリーは眠くなりそうだった。ついアクビをしてしまう。


「やっておしまい!【剣聖】!」


 吼えたイルセラに反応して剣聖は脚をピクリと震わせた。


 刹那!

 

 雷光めいた残像がフェアリーに肉薄する! 

 傍目から見れば剣聖はまだ一歩も動いていない。

 その接近動作を目で追えたのは一人もおらず、まだ誰も気づいていない。


「おお、なかなかの速さですね」


 ただ一人フェアリーを除いて。


「止まって見えましたよ」

 

 嗤い、剣聖の(いかづち)の如き縦一閃を最少の体捌(からださば)きのみで回避したフェアリーは拳を握り、そのままなんの変哲もない拳打を叩き込んだ。


 剣聖の腹部に直撃し、その衝撃は鎧を破砕し、それでも止まらない衝撃波が剣聖の腹を貫いた。

 

 フェアリーのパワーは二メートルの巨体を宙に浮かせ、舞い、イルセラの目の前に落ちて大の字になって倒れた。


 大剣が地面に突き刺さり、その間わずか五秒。

 勝負と言うにはあまりにも呆気ない速さで終わった。


 エタンセルの広場にいる全員が口を開けてポカンとしている。

 リズも、イルセラも、何が起こったのかを理解していない。


 まるで時間が止まったかのような静寂を、フェアリーは肩を竦めて掻き回した。


「ほら。だから言ったじゃないですか。勝負にならないって」

挿絵(By みてみん)

世界樹の妖精フェアリー ???歳 身長170センチ



挿絵(By みてみん)

人間の女猟師リズ・リンド 15歳 身長155センチ

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― 新着の感想 ―
[一言] 強ぇ! 剣聖に勝った!
[一言] もうフェアリーの口癖が「穢らわしい」に定着してきた(笑) 海賊王に俺はなるみたいなノリで(笑)
感想一覧
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