貴族の弟子との鍛錬
さてさて、本日も新たな一日が始まりましたー。さっさと起きてご飯だご飯だ。
コンコン
「お嬢様、起きていらっしゃいますでしょうか?」
「ええ、起きているわ。ありがとう。」
「失礼いたしました。では、昨日、朝食を召し上がるとお伺いいたしましたが、ご変更ございませんか?」
「ええ、いただくわ。」
「かしこまりました。時刻はいつも通りです。お待ちしております。」
一度夜中まで調べ物していたら、大事な予定の日に寝坊しまして...それから扉の向こうから声をかけてもらってるんですよ。最近は起きてることが多いですが、一応お願いしてます。さて、着替えて顔洗って行きますかー。
お、今日は一番手ですねぇ。待ちますかー。
朝食美味しかったです。さあて、今日の予定はまずは弟子に訓練つけるので第五訓練場に向かいます。
「二人共、元気だった?」
「「はい!」」
「それはよかった。じゃた今回は前回の最後に告知した通り武術の打ち合いを行うから、各々武器を選択してくれるかな?」
「「はい!」」
「ではまず、コルノ。何にする?」
「はい、私は短剣二本にします。」
「了解。では、ホーザ。何にする?」
「はい、私は剣一本にします。」
「了解。すぐに持ってくるから、各自体を温めて待っていてくれる?」
「「はい!」」
今回教える弟子は二人です。そして、私が現在教えている弟子は前回の三人、今回の二人、合計五人です。コルノはキザー伯爵家の令嬢で七歳。風、氷の魔力を持っています。ホーザはネルダー騎士爵家の次男で六歳。雷、水の魔力を持っています。二人とも貴族なので揉め事などを起こさないように平民である三人とは別に教えています。ホーザは騎士爵なのに公爵令嬢が教えているのは何故かという疑問を持つと思いますが、彼の父、ネルダー騎士爵家当主は王宮勤めで忙しく、休日は剣術などを教えられているそうですがそれではせっかくの騎士爵家が名前だけになってしまいかねませんし、彼は魔力にも長けていたというわけで私が教えております。主に魔術をになりますが、最低限のくせにならない体術なども教えてますね。
「はい、持ってきたよ。まずはコルノから手合わせしていくから、剣を持って。あ、ホーザはもう少し待っていてね。コルノ、準備ができたら言ってね。」
「「はい!」」
私は剣一本にしました!さすがに弟子との手合わせで武器使用スキルの剣や弓を出すわけにもいかないですしね。それに一番使用者数も多い武器らしいですし、二人とも剣で手合わせしますか。
「はい!準備できました!」
「了解。いつでもどうぞ。」
「はい!いきます!」
んー、前回までに基礎は教えたが故に今回手合わせしているわけなのですが。基礎ができてない上に、うーうん...
「はい!一度やめようか。キザー伯爵家でなにか起こったということは聞いてないけれど、最近なにかあった?前回までに教えた基礎が何もできていないけれど。それから、右膝、痛む?急に曲げると痛がっている様子だけど。」
「家は何も起こっていません。膝はこの間転んでしまい、擦りむいてしまいました。申し訳ありません。」
んーそれだけではないような?
「別に謝らなくて大丈夫。じゃあ、なんで膝を擦りむいたの?言いたくない?」
「えーっと。うーんと。」
「別に怒らないし、伯爵やメイドに報告とかもしない。約束するよ。でも本当に言いたくないとしても、今手当だけしたいんだけど…どうかな?」
"オープン メンタルステータス"
「ええっと、先日庭で走っていたら転んでしまって。それだけです。手当は一昨日メイドにしてもらいました。なので大丈夫です。」
「そっか…でも一昨日のままでは傷口が膿んでしまっているかもしれないし、一度見てみようか。見て手当する程度だったら私でもできるけれど、一応メイドを呼ぼうか?」
「いっいえ!ぜひレミーラ様がやってくださいませ!」
「わかった。じゃあ、少し待っていて。消毒など準備してくるから。」
"オフ メンタルステータス"
とりあえず、先程ステータスを見た限りですと転んだというのは嘘ではないようですね。夜、お腹が空いて起きてしまったので食堂に行こうとして転んでしまったようです。よかったです、家族やお友達といった類にやられた傷ではなくて。ただどうせなら、治してあげたかったんですが私、回復に便利な光属性は持ってないですし、ゆっくり内側に"もや"を忍ばせて治していく闇属性の回復魔法も私は基本的に傷などはスキルで治せてしまうので覚えてないんですよね。覚えますかねえ、こういう場面で役立ちますし。
「お待たせ。消毒して包帯を巻くから少し染みるよ。じゃあ、話を戻そっか。なんで前回までにやった基礎が何もできてなかったかな?」
「いっ。あーええっと。」
「覚えられなかったというわけではないのかなあと思ったんだけど…前々回に学んだ踏み込みの基礎を前回の復習で教える前にできていたし。それとも、覚えられないような教え方をしてしまった?それだったら、教え方を再検討したいから教えて欲しいな。」
「ええっと、淑女教育が始まり、それらと被ってしまって、前の記憶が抜けてしまってと言いますか、前回まではきちんと覚えていたのですが、言い訳ながら覚えることが被ってしまいまして、忘れてしまったと言いますか。」
「ああ、コルノはこの時期からだったんだね。ごめんなさい、こっちが全然その情報の把握ができてなかった。了解。じゃあ、コルノの再手合わせはもう少し遅くするね。これからの時間はもう一度基礎を教えるから、一緒に思い出しましょう。」
「はい、すみません。」
「子供の頃の女性は誰でも通る道だし、気にしないで。私もよくあったから。」
そういうことなら私ももう少し教えていきましょう。基礎は大切ですからね。
「じゃあコルノ、ホーザとの手合わせを見て思い出せる範囲で思い出していてくれるかな。ホーザ、お待たせ。こっちにきて。」
「「はい!」」
「ホーザ。私は短剣で手合わせするけど、気にせずに打ち込んできてね。多分盗賊とかには短剣で戦う者もいると思うから、本番だと思って打ち込んできてくれると嬉しい。」
「はい!」
ホーザ相手にはコルノに見て思い出してもらうためにも短剣に変更します。まあ別に武器変更しても私には問題はないですしね。基本どれでも対応できますし。
「よし、うん。私はいつでも大丈夫。準備が整ったら、いつでもどうぞ。」
「はい!ふーっ...いきます!」
うん、いい感じですね。基礎はできており、ご子息に教えるうえで調べたネルダー騎士爵の使う流派と同じですね。基礎はできており、身体づくりも怠っておらずきちんとかかるべきところに力がかかっています。
「うん、一度やめ。休日にネルダー様にお教え頂いたであろうものをきちんと使えているし、その年でそこまでできているのはかなりすごいこと。だから、私から言えることは何もないかな。逆に疑問とかはある?」
「大丈夫です!ありません!」
「了解、じゃあ今からの時間は魔法を復習しようか。前回教えた水球を的に打ってみて。上に威力を可視化して表示するから、7を目標に。休憩、水分補給などは必ずこまめに行なってね。」
「はい!」
「じゃあ、道具を置いて魔法の練習に入って。じゃあ、コルノ。こっちにきてくれるかな。」
「はい!」
「うん、ありがとう。じゃあ、"スタート ショートウインド"。ここに拳を打ち込んできて。その体の動きをみてアドバイスさせてもらうから。」
「はい。」
「うん、いい感じだね。さっきのホーザとの手合わせを見て少し思い出せた感じかな。じゃあ次はもう少し右足の裏に体重をかけてみてやって。」
「はい!」
「うんうん、いい感じ。ごめんね、少し待ってて。...ホーザ、水分補給をしてね。」
「あっ!はい!ありがとうございます!」
"オープン ホーザ マジックステータス"。うん、まだまだ魔力に余裕はありますね。
「待たせちゃってごめんね。じゃあ、次は回避に移ろっか。"クリア ショートウインド"。十球、魔法を飛ばすからその場から足は動かさず、避けてみて。」
「はい!」
「じゃあいくよー。"ゴー テン ショートダーク"。」
「うん、いいね!四球も避けられたね。」
「はあはあ、あ、ありがとうございます。」
「疲れるよね、これ。一度休憩を挟もっか。10分ぐらい体を休めておいで。」
「はあはあ、はい。」
次回の訓練は持久力ですかね。まあ主にコルノのためにはなりますが。
「ホーザ、調子はどう?」
「あ、はい!今のところ最高値は4です。」
「そっか、いい感じだね。その調子で頑張って。きちんと適宜、水分も取ってね。」
「はい!」
魔力はまだありますね、さすがですが。
「さて、そろそろ10分経ったかな。コルノ、そろそろ大丈夫?」
「はい!」
「じゃあ続きに入ろうか。」
「今日もお疲れさま。次回の鍛錬は持久力を付けるために長い時間走ってもらう。はじめはゆっくりでもいいから、まずは一時間ぐらい走り続けることを目標にしてね。ホーザは恐らくネルダー様に習ったことをきちんと覚え、使えていたね。コルノは淑女教育で忙しかったにも関わらず、少しの鍛錬で癖などを思い出していたね。素晴らしかったよ!じゃあ、そろそろ終わりにしよっか。二人ともの馬車は着いたみたいだし。では、お疲れ様でした!ありがとうございました!」
「「はい!ありがとうございました!」
ふー、みんな帰宅しましたね。ホーザについて、今日は少し気になったことがあるのでそれを調べに行きます。なので、お遊びはできないですねえ。まあ杞憂に終わればいいんですけど。夕餉までに帰ってきたいので、なるべく早く済むといいんですけど。
「ごめんなさい、少し調べ物をしに行くので夕飯に間に合わないかもしれないの。間に合わなかったら、部屋に籠もって明日について準備していると言っておいて。帰ったら食べるから部屋に置いといてくれるとありがたいわ。」
「不在になる可能性は理解いたしました。ですが、ご飯はぜひ温かいものを召し上がってほしいので帰宅いたしましたら我々に言いつけてくださいませ。すぐにご用意させていただきます。」
「ううーん、じゃあそうしようかな。ごめんね、ありがとう。」
「とんでもございません。お気をつけていってらっしゃいませ。」
「ええ、ありがとう。いってきます。」
さーて、行きましょうかねえ。この勘が杞憂であることを願って。