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ホーザを連れて魔物討伐へ

 西の城門に着くと帯剣をし、大きいバッグを背負ったホーザの背中が見えた。

「待たせてしまってごめんなさい、ホーザ。」

 声を掛けるとホーザは勢いよくこちらに向いた。

「あ!よかったあ。きた。ここに来るか分からなくて、でも入れ違いになるわけにもいかなくて...!」

 泣きそうな顔でホーザは言ってきた。...申し訳ない。

「ごめんなさい。お父様に集合場所を聞き忘れてしまって、ネルダー様に聞きに行ってきたのですが...こちらの不手際で待たせてしまって本当にごめんなさい。」

 そう言って頭を下げた。

「あ!いえ!大丈夫です!そんなに待ってませんから!頭を上げてください!」

 慌てたように言うホーザのその言葉に私は頭を上げた。

「本当にごめんなさい。...ところで差し支えなければ教えてほしいのだけど、その荷物は何でしょうか?」

 たかが魔物討伐にそんなに大荷物持っていきます?普通。

「あ!水分に食料、寝袋、魔物に効くと聞いた胡椒になります!」

 ...そう聞いて私はつい頭を抱えてしまった。

 ...マジですか?胡椒が魔物に聞くっていう情報まだ消えてないんですか!?かなり小さい魔物なら胡椒に咽ってしまいますが、大きい魔物、モクケ大陸にいるような強い魔物には何も効きませんよ...。

「ホーザ。時間を取ってしまいますが、荷物は置いていきましょう。」

「え!?でも、寝袋とか胡椒とか必要じゃないんですか!?」

「...まさかとは思いましたが、胡椒以外はネルダー様がご準備してくださいましたか?」

「あ、いえ。胡椒もです。私の持っている荷物は全部お父様に用意していただきました。」

 私はつい頭を押さえてしまった。

 第六団長ともあろう方が魔物に対する間違った知識を持っていらっしゃるとは...どんな地獄ですかね?第六団は王城警備だから知らないんですかね?だとしても、知らないほうがおかしいでしょう!団長でしょ!?なんなんだよ!せめて胡椒は止めてくれよ!!嘘だぞって言いにくいじゃん!...ふー、落ち着きましょうか。一旦聞きましょうか。

「...そうですか。せっかくネルダー様がご準備してくださったのなら、できる限り置いていきたくないですか?」

 頼む!いいえって言ってくれ!言ってください!

「...そうですね。師匠命令でも...。公爵令嬢からのご命令であれば従うしかないですが...。」

「...分かりました。では少しお待ちいただいても構いませんか?」

「?はい。」

 ...はあ。師匠命令ならって思ったら先手打ってきたよ...

 私はホーザを再び置いて、影に隠れた。

 荷物は困りますから、ボロを出す心配のないライグを呼びましょうか。

 人の気配がないことを確認、と。よし、いいでしょう。

 "サモン ライグ"

「我が主。いかがいたしましたか?」

「ごめんなさいね、ライグ。一つ急用ができてしまったの。今から言う設定を守ってついてきてくれる?」

「かしこまりました。」

「あなたは私の従者の...ナリ。私のことはお嬢様、またはレミーラ様と呼ぶ。今からあなたは私の弟子の荷物を持って、モクケ大陸についてくる。魔法は緊急時を除き、使ってはいけない。防御魔法は有無を言わず張らせろ。」

 偽名は(カミナリ)から持ってきたけど、そう簡単には分からないでしょう。即興でそんなセンスの良い名前は出てきません!...最後、ついイライラして命令口調になってしまいました。

「かしこまりました。お嬢様。」

「よし。じゃあ今の設定のまま、出てきてね。」

「はい。お嬢様。」

 サリーと迷いましたが、サリーよりは従者のような言葉遣いできますし、大丈夫でしょう。...少し不安は残りますが。



「お待たせしました、ホーザ。荷物はこの私の従者に渡してください。」

「え?」

 私の突然の言葉にホーザはぽかんとした。

「先ほど一緒に来た従者ですが、今連れてまいりました。荷物を置いていったりしませんし、大丈夫です。なにより、公爵家に仕えるものです。信用できます。」

 かなりゴリ押しですが、これは頷いてもらわないと。邪魔で、んんっ!困ったことになりかねませんからね!

「...分かりました。御守も入っているので、大事にお願いします。」

「かしこまりました。お任せください。」

「じゃあ、行きましょうか。ホーザ。」

 そう言って私たちは馬車に向かった。



 馬車で港に向かい、港から船に乗り、モクケ大陸に無事予定通りに着いた。

 ...長かった。いつもなら魔法でびゅーん!で終わるのに...馬車って時間かかって面倒ですねえ。もう日が真上ですよ。

 さて無事ついたことは喜ばしいですが、すぐに魔物討伐にいかないと、今日中に帰れませんからね。急ぎましょう。っと、その前に。

「ホーザ。そこから動かないでくださいね。"スタート ダークバリア"、"スタート ウインドバリア"、"スタート アイスバリア"、"スタート アクアバリア"。うん、視界は少し悪くなったかもしれませんが、これが条件なのでこれで向かいます。」

「...はい。」

 ホーザは驚きを隠せない様子で返事をした。

 なにも見えなくなってしまうから土魔法使ってないんだけど...そこまで下に見られてた?まさか。

 まあそんなのは置いといて行くとしましょうか。今回の目的!


 うん、一日の平均魔物増加率に変化なさそうですね。やっぱり880年のものと同じ感じでしょうか。いつもとは違いますね。

 さて、魔物増加率を見ることができましたし、魔物を狩るとしましょうか。

「ホーザ、ここから先は魔物と正面で退治することが多くなります。決して、前に出たりしないようにしてください。」

 前に出てこられて、万が一怪我でもされたら怒られるのは私なんですからね!そう心の中で釘を追加した。

「はい!」

 いつもより強い返事が返ってきた。...流石に信じるとしましょうか。最悪なにかあったらライグが止めてくれるでしょう。

 そう思い、私は背中に指していた剣を抜いた。


 と、おやおや早速ゴブリンの群れですかあ...連携されるのが面倒ですし、ちゃっちゃと倒しましょうか。


「ギギッ!ギッ!ギー!」

「「「「ギー!」」」」

「うるさい。」

 レミーラが軽く一振りすると、ゴブリン二匹は飛ばされていった。

「ギッ!?」

「ギー!」

 仲間が飛ばされたのが見えなかったのか、先程よりも激しくゴブリンは声を上げた。

「...。」

 再び一振りすると、もう二匹のゴブリンも飛ばされていった。

「ホーザ、ここからはきちんと着いてきてくださいね。臭いで体調が悪くなったら、すぐに言ってください。」

 とは言っているも、レミーラの張った風の防御魔法で臭いなんて届かないだろう。

 レミーラは飛ばしたゴブリンの元まで歩き、息がないことを確認すると後ろを向いた。

「こんにちは。...オークが三匹か。」

 木の裏に隠れている一回り大きいオークも含め、レミーラは数えた。

 その場で軽くステップを踏んだ後、前に飛んだ。

「っふぅ!はああ!」

 縦に、横に、縦に。一体に一撃ずつ、軽いように見えて、でも重く、剣を入れていった。

 その場にオークの死体が転がる。


 んー、だるいなあ...。剣を使うのそんなに好きじゃないんだよなあ...。どうしても一振りが大きくて、隙が生まれちゃう。短剣の方が好きなんだけど、ホーザが使うの剣だもんなあ。...剣でできる限り頑張りますかあ。

「おや。」

 珍しい。ゴブリンとオークの声に反応したのか、オーガが一体だけといえどこんなに手前に降りてきている。

 ...まあそんなの関係ないんだけど。


 レミーラは前に飛び出し、一気に距離を詰める。

 勢いを殺さずにオーガに剣を刺し、下に引いた。

 その早さに対応しきれなかったオーガはその場に寝転んだ。

 息がないことを確認し、レミーラは次のゴブリンに標的を動かした。

 地面を蹴った勢いのまま、ゴブリンに斬りかかる。


 そのゴブリンを倒すのを待っていたように、四方から大量のゴブリンがレミーラに襲いかかった。

「レミーラ様っ!」

 その状況にやばいのではと思ったホーザが剣を抜き、走って助けに入ろうとする。

 そこでゴブリンに囲まれた山の中から、レミーラの剣先が見えた。レミーラは剣を振り上げた勢いのまま、右足を重心に回り、ゴブリンを吹き飛ばした。

 そしてそのゴブリンを放置し、ホーザに迫った。

「ごめんなさいね?言葉分かりますか?前に出るなって言いましたよね?」

 どんどん来るゴブリンを背後で処理しながら、レミーラはホーザに問いた。

「あ...レミーラ様が危ないと思って...」

「危なくなれば、そこにいるナリが処理します。前に出ないように。そしてその剣をしまうように。」

「はっはい!」

 そう返事をするとホーザは慌てて剣をしまった。

 静かにため息をついて、レミーラは再び魔物に向き合った。



 ふう。魔物を狩り始めて1時間ぐらいでしょうか。予定の量の魔物を倒すことができましたし、帰りましょうかね。ホーザに怪我はなく、ライグもなにもせずに終わってよかったよかった。

「ホーザ、お待たせしました。今日の分はこれでおしまいです。魔法を解いて、船に戻りましょうか。」

 そう言ってホーザに身体を向ける。

「...。」

 ホーザから返事がない。いつもきちんと返事をしてくれるというのに。

「ホーザ?大丈夫ですか?」

 そう言って顔を覗き込むとはっ!と音がしそうな勢いでホーザは顔を上げた。

「あ!すみません!なんておっしゃいましたでしょうか!?」

「え?ああ、今日の分は終わったので帰ろうと。」

 ホーザの勢いに驚きながらも、答えた。

「あ!左様でしたか!でっでは!船へ参りましょう!」

 そう言って腕と足を同時に出し、歩き出すも、

「ホーザ。そっちではありませんよ。こっちです。」

 方向が違っている。

「はっはい!」

 そう言って私が指した方向に歩き出すも、やはり足と手が同時に出ている。

 魔物と戦うことなく、怪我もなく、無事に終わったというのに何かあったのでしょうかね?



 その変な状態のままのホーザとともに帰城した。


「ふう。もう日が暮れますね。あ、ホーザはどのように帰るのですか?」

 日を見ていた目線をホーザに移し、私は聞いた。

「え!?えっと!...あ...。」

 思い出すようにホーザは悩み始めてしまった。

「どうかしましたか?」

「...その、モクケ大陸で一日過ごす予定だったため、宿を取っておらず...今から帰るのも厳しく...。」

 ああ、そういうことですか。たしかに何故か道が混んでおり、馬車の到着が遅くなってしまいましたし、帰城時間が想定よりも遅いですよね。

 ...って、ん?一日モクケ大陸で過ごす予定!?それ言ったのはネルダー様でしょうから、そんなに魔物倒すの遅いと思われてましたか...

「では、ネルダー様に助けてもらうか、私は今から家に帰るので家に泊まるかですね。どっちにしますか?」

「おっお父様に聞いてきます!」

「では、私も着いていきますね。ネルダー様が無理であれば、家に泊めますので。」

「はい!」

 私たちはそのまま、ネルダー様の元に向かった。

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