レクロ家全員集合の夕餉
「失礼いたします。お待たせしてしまい、申し訳ありません。」
「いや、構わない。謝らなくていいから、早く席につきなさい。」
「はい、かしこまりました。」
この偉そうな方。まあ実際に偉い方なんですが...こちらの方は今生の父親、そしてレクロ公爵家現当主であるキナーク様です。優しい方ではあるんですが、圧がねえ...表情筋が動くことも少ないですし...ですが、子どもたちにやりたいことをやらしてくれて良い父親ではあるんですよね。現に私も公爵令嬢と平民で身分の差があるというのにルートアとは仲良くさせてくれますし、勉強やパーティー開催の強要もしませんし。表情の変化が乏しいところ以外は良い父親です。
「ミラ、今日は何をした。」
「はい。午前は二ーダル様に訓練をつけてもらいました。本日は一度しか剣の先を二ーダル様に届けることができませんでした。踏み込みが浅く避けられると言われたため、本日の反省を活かし、次の鍛錬も頑張ります。午後はモクケ大陸に生息するドラゴンについて学びました。」
「そうか。二ーダル殿に剣が届くように今後も励んでくれ。それから、一つ。今までは私の仕事の1割をやってもらっていたが、カグラダから最近は効率よくでき、仕事をする時間が短くなってきていると聞いた。そのため、明日からは2割をやってもらうことにする。わからないことは随時私なり、カグラダなりに聞いて勧めてくれ。」
「かしこまりました。御父様。」
このザ好青年の男性は今年20歳となりました、お兄様であり、時期レクロ公爵家当主のシミラー様です。時期公爵家当主として日々奮闘しておられますが、常に家族思いのいいお兄様です。そして、20歳という歳から想像できるように、婚約者がおります。我が国第一王女であり、ロルーリの姉である、ラクレカ様です。婚約自体は政略婚約なのですが、元々絡みがあったこともあり、仲睦まじく、今では言わなければ政略婚約と思われぬ仲の良さです。
「ロスは今日は何をした。」
「はい。本日はストーラ公爵令嬢であるカルーゼ様、サクータ侯爵令嬢であるシャートナ様とともに、ネリア公爵令嬢のヒージエ様が主催するティーパーティーに参加してまいりました。誰の不倫や謀反などもなく、平和な会でした。最近の流行から推測するに香水はまだ当分売れます。レクロ商会で、いつもより少し多めに輸入しておくことをオススメいたします。」
「そうか。ありがとう。では、そうするとしよう。」
こちらの淑女の手本のようなお淑やかな方は我が敬愛するお姉様、クロスト様です。常に笑顔を絶やさない、優しいお姉様です。つい先日学園を卒業なされた14歳で、学園卒業と同時に世間を騒がせた方でもあります。まあそれに関してはおいおい説明していきますかねえ。
「レミ、今日は何をした。」
「はい。本日はロルーリ様、ロクレラ様、ルートアとともに意見交流会、そして春より学園に入学するルートアのお見送り会をしました。」
「そうか。彼はもうそんな年か。身体に気をつけて頑張ってきてくれと伝えてくれ。」
「はい。ありがとうございます。ぜひ、明日伝えさせていただきます。」
私だけ言葉が少なくないかって?まあ、意見交流というのは名だけで雑談会ですからね。特別、言うことがないんです。短いときは、本日も規則正しい生活を送りました。ですし、それよりは長いと思いましょう。
「メロ、今日何をした。」
「はい。午前は近隣諸国そして、レクロ家が取引する国について学びました。午後は6日後に開催させていただくティーパーティーの軽食、お茶の種類などについて決定いたしました。」
「そうか。今後も勉強に励んでくれ。ティーパーティーの準備も順調そうでなによりだ。」
この大人びている落ち着いている可愛い子は我が愛する弟、リスメロです。齢6歳ながら、しょっちゅう勉強してどんどん知識をつけてきていて、いつ知識量で負かされるのかと日々ワクワクしております!歳から想像できますように、婚約者はおりません。婚約しようとしまいと、ずっと幸せではいてほしいものですね。
「直前となってしまい申し訳ございません、旦那様。先ほど申し上げられましたとおり6日後にあります、メロが主催するティーパーティーについてです。当日、御子息や御令嬢を我が家までお送りにいらした奥様方を返すのもただ待つのも時間の無駄ですので、子どもたちがティーパーティーに参加中にやることなど要望はないかと伺ったところ、先輩の御母方様に最近母となられた方々が子育てについて聞く、婦人会を開催してほしいとのことでした。そのため、その声にお答えして婦人会を行える準備をいたしました。本日、旦那様の御許可がいただけましたら明日、開催可能の旨の手紙を御婦人方にお送りいたします。いかがでしょうか。」
「御婦人方の要望でもあるようだし、構わない。時間が無駄にならないのはいいことだしな。」
こちらの所作の美しいご婦人は我が母にして、レクロ公爵婦人である、ミカラ様です。優しく常に笑顔でこういうお母様にお姉様は似たのかなと思いますね。お父様と同じで、子どもたちのやりたいことをやらしてくれるいい母親です。私が今もずっとルートアと仲良くできてる理由はこのような両親に育ててもらったことが大きな理由ですし、本当に感謝しかないです。それから、少し余談ですが、お母様とお父様の結婚自体は政略結婚だそうです。ですが、今まで喧嘩をしたところを見たところがないほど仲がいいです。お母様の前ではお父様の表情筋も仕事をしてくれるそうです。私は見たことないですが、いいですねえ。お母様に対してもお父様の表情筋が仕事しないようでしたら、お父様の表情筋を殴っているところでした。まあ、お顔を殴るのはよろしくないので、表情筋だけを殴りたいものの、表情筋だけを殴る方法などあるのか存じませんので、調べて実践する前にわかってよかったです。
「「「「「「では、ごちそうさまでした。」」」」」」
ごちそうさまでした、は日本と同じ食後の挨拶です。ここは適応しやすくて非常に助かりますね。また余談で失礼しますが、我がレクロ家では出張や学園などで家に不在ではない限り、朝食と夕食をみんなで食堂に集まって同じ机を囲み、同じものを食べて、ともに食前食後の挨拶をする。そして、お父様が現当主が今日は何をしたかを夕飯の席で家族に聞きます。これが、我がレクロ家の暗黙のルールです。別に誰かが明言した決まりごとではないんですが、全員が自然と守っております。
「お嬢様、明日の朝はいつもの時間で大丈夫ですか?」
「いいえ、ごめんなさい。明日は大事な予定があるため5時半に起こしてほしいわ。」
「かしこまりました、お嬢様。」
「ごめんなさいね。よろしくお願いするわ。」
では、明日は大事な予定があるので、早くに寝ますね!おやすみなさいませ。