城下での食事後の異変
「さま...?王宮に戻っても濁さないで答えてくれるの?」
「いや、わかりませんわ。」
「なら!」
「ロルーリ様。防御魔法を展開してください。ロクレラ様は私たちの傍から絶対に離れないようにしてください。」
「え?」
「あら本当に...?...了解。.........うん、これで大丈夫。確かに一応王宮に戻ろうか。」
「え?」
「基本的に今まで外に出るときは護衛と一緒だっただろうけれど、今はいない。つまり?」
「まさか、敵が...?」
「ええ、そのまさかでございます。」
「倒さなくていいのか?」
「今は王族が二人もいます。私一人ならまだしも王族の方がいるのに傍を離れるなどできません。」
「そうか...じゃあ戻ろう...」
「申し訳ありません。この場にいるのが王族であることを明かせば、お二人を慕う国民は守ってくださるでしょうが、その分悪意を持った者が増加します。その全員に気を配るとこぼしてしまう可能性が激増し、危害が及ぶ可能性がございます。王宮に着くまで警戒は私がいたしますので、戻りましょう。」
「わかった...」
「気になられるかとは思いますが、申し訳ありません。」
「うん...今度教えてくださいね?」
「...レミーラ、私は掴めないのだけれど、位置と人数は?」
「...ロルーリ様は魔法の展開に注力なさってくださいませ。」
言葉にするとロクレラの意識がそちらに向き、いざというとき身体が強ばってしまいかねません。ロクレラにも聞こえる声で教えるのは控えておきましょう。
「...そうね。ロク、眠くはない?よかったら私が抱っこしようか?」
「...いえ、大丈夫です。自分の足で歩きます。」
「そう。では、速さは私たちに合わせてくださいね。」
「あ!はい!」
「早くないので大丈夫ですよ。ロクレラ様。」
「はい!」
わざわざ警戒を前に出す必要はないですが、こういう経験もいいですからねえ。この警戒を出すことで話を逸らすこともできますが、そっちが本心じゃないですからね。
「おかえりなさいませ、殿下方。」
「ええ、ただいま。」
「...ただいま、帰りました...」
「お邪魔いたします。」
「ごゆっくりどうぞ。」
ふー、なんとかなにもされず王城に帰ることができましたね。時間はあっただろうに危害を加えてこない...見るためだけだったのでしょうか...
「ロク、どう?久しぶりに護衛なく動けたでしょう?楽しかった?」
「ごめんなさい!迷惑かけて...!僕がわがままを言ったせいで...」
「ロク...迷惑なんてかかっていないわよ。何も起こっていないのだから。」
「そうですわ、ロクレラ様。何も起こっておりませんし、元々は私たち二人で行く予定だったのです。当初の予定通りでも我々が追いかけられていたでしょう。ロクレラ様がついてきたからといって、何かが変わったわけではございませんわ。」
「でも、でも、もしかしたらその人は僕を見に来ていたのかもしれないから...」
「理由は多分上級貴族と王族だからですよ。ロクレラ様が増えたから、なんて可能性は低いかと。」
まあ、わかりませんが、ロクレラのためにはそう言う方が良いでしょう。
「そう...じゃあ、そう思っておきますね!」
ああ、そんな作った笑顔を...
「ロク、よかったら今日は一緒に寝ない?怖かったでしょう?」
「ロルーリお姉様...よろしいのですか...?」
「ええ、なんだったらレミーラも寝てくれるわよ。」
「え!?」
「あ、いいよいいよ、忙しいもんね...」
「....んー、馬車を帰すため少し遅れてしまいますが、それでもよろしいですか?」
「うん!!待ってる!」
ああ、そんなにぱあっと...身体は年頃の男の子と女の子だから少し気は進まないけれど、今回わざと話したのは私だし仕方ないかな。
「じゃあ、レミーラと先に風呂に入っていくから先に護衛と一緒に部屋にいてちょうだい。ロクの部屋で寝ましょう。」
「わかった!じゃあ後でね!」
「ええ。」
「待ってるからね!早く来てね!」
「はいはい、わかったから前を見なさいね。」
「はーい!」
「...レミーラ、一度私の部屋に行きましょうか。」
「申し訳ございません、先に馬車に行ってまいります。ずっと待たせてしまっているので。」
「ああ、それはそうね。気が利かなくてごめんなさいね、じゃあ行きましょうか。」
「あ、ええ。」
ロルーリもついてくるとは...驚きですね。
「ごめんなさいね、こんなに夜遅くまで待たせてしまった後で悪いのだけれど、こちらで一晩過ごすことにしたわ。あなたは城下の宿に泊まってくれてもいいし、その場合のお金はこちらが全額負担するわ。そしてこんなに長く待たせてしまったから、次の支給でその手当も出すわ。本当にごめんなさい。」
「お嬢様、お顔を上げてくださいませ。かしこまりました。では、お言葉に甘えて城下にある中で一番いい宿の一番いい部屋に泊まらせていただきますね?それでいいので、お嬢様はこれ以上気になさらないでくださいませ。この程度待つのは屁でもございませんから。」
「本当にごめんなさい。宿に泊まる際の料金はこのくらいで足りるかしら?」
「多すぎますよ!お嬢様!...これぐらいで大丈夫です。では、失礼いたしますね。」
「ええ。」
「ごめんなさいね、迷惑をかけてしまって。」
「とんでもございません、ロルーリ様。ではお部屋にまいりしょうか。」
「ええ。」
「さて、防御魔法を張れたし、話をしましょうか。」
「ええ。」
「いつからいたの?そのつけている人たち。」
「少なくとも気付いたのはお店を出たときね。それまでは私の感じられる距離にいなかったと思う。」
「そう...つけていた理由は?」
「ごめん、今の段階ではそこまではわからない。」
「そうよね...うん、了解。お父様に話しても構わないかしら?」
「うん大丈夫。ていうかごめんね、話題逸らすためにロクレラに話してしまって、こんなことになってしまって...」
「ううん、大丈夫よ。...話す?ロクに。」
「うーん...今回のを加味して、事後報告のほうがいいかなとは思ったけれど...家族として関わっている時間が長い、ロルーリが話してもいいと判断するのなら話してくれていいよ。」
「私も同感ね...あの小さな子に真魔討伐は私たち二人でする、は重いと思う。...じゃあ討伐するまで話さない方向でいこう。」
「うん。」
「じゃあ、聞きたいことは聞けたし、私は先に身体を洗ってくるわね。」
「うん、いってらっしゃい。」
さて、私はその間に聞きに行ってきますか。
「こんばんは。って、あら。二人だけだったのね。」
「レミーラ・レクロ...呑気だな、お前。」
「呑気なのはそちらではなくて?私の魔法だと理解して、かつ抜け出せなくて苦戦しているのでしょう?」
「はは、わざとはまってあげただけだ!抜けようと思えば抜けられたけどな!」
「そうだそうだ!」
「そう...じゃあ見ていてあげるから抜け出したら?あと三分以内に抜け出せたら、見逃してあげるわよ?」
「温室育ちの貴族令嬢になにかできるのか?なにもできないだろ!」
「そこは自分の目で確かめてくれる?わざわざ話すのはめんどくさいから。てゆーか、時間経ってるけど出ないの?それとも温室育ちの貴族令嬢に何ができるのか見たくて仕方ないの?」
「いや、そういうわけでは...」
「出られないよねえ?まあでも言った通り、三分は待ってあげるよ。」
ふー...護衛なしに城下でレクロ公爵令嬢と王族二人が話すことを偶然王城にいて見たため、なにか企んでいるのではないかと危惧したストーラ公爵からの命令で、決して危害を加える許可は出てなかった、ですかあ...
先代の陛下と先代のストーラ公爵は仲良かったため、王族二人をつけて話を聞いていたことがバレても構わないと考えたのでしょうか...
今のところ、今代のストーラ公爵と陛下が特別仲が良いと聞いたことはありませんが、水面下でなにか起こっている可能性はなくはないのですかね...お父様に共有しつつ、今後はストーラ公爵のみならず陛下の動向も少し気を付けるようにしましょうか。
さて、ロルーリが上がるまで時間があと少ししかないでしょうから、すぐに戻るとしましょうかねえ。
...一旦この人たちはこのままでいいですかね。明日また来るとしましょう。