49.乙女の恋
「ん······ふ······っ!」
まるで口内を犯すようなキス。
全てを奪われてしまいそうな、先輩の激しさに私は身震いをした。
廊下に響くリップ音に頭の芯が溶けていく。
拒めばいいのに。
前みたいに、叩いて拒否を示すことも出来るのに。
「ふぁ······っ」
「愛してる······レフィ」
囁やかれて、腰が抜けそうで、立っているのがやっとなのに。
「エリアス先輩······っ」
「レフィ······ああレフィ······!!」
どうして。
一体いつからだろう。
触れられるのが、嬉しいだなんて。
貴方のキスが甘くて堪らないなんて。
交わす吐息に脳が痺れる。
交わる唾液に胸が震える。
────先輩。エリアス先輩。
ごめんなさい。
本当はお父様と貴方の話を聞いた時、理解していたの。
ちゃんとわかっていたのに、わざと駄々をこねたの。
私だって貴族の子。
それがどんなに大変で、どんなに時間がかかるものか、事前にやらなきゃここまで話を進められなかったことぐらい、ちゃんとわかっているの。
だけど、悲しかったの。
貴方が一番に私を優先してくれなかったから。
貴方が私へ請う前に、別の者に請い願ったから。
ごめんなさい、エリアス先輩。
だって私、女の子なの。
貴方のキスに頬を染める、普通の女の子なの。
こんな恰好してるけど、これが初めての恋なの。
貴方との恋に夢を持った乙女なの。
貴方の一番は、私でいたかったの。
ちゅ······と音を立て、目元が朱に染まったまま、エリアス先輩は私を見つめながらゆっくりと唇を離した。
「言えよ、レフィ······もう一度俺が好きだと······」
「はぁ······馬鹿······先輩の、馬鹿······」
「おい」
ぼんやりしたままの頭で見上げる先輩の端正な顔。
どうしようもなく、感情が溢れる。
「好きです······エリアス先輩······」
「もう一度」
「好き」
「······ホント、可愛すぎて食べてしまいたい」
そう言うと、エリアス先輩の唇がまた私に重なった。




