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35.初デート

 


 週末、ワクワクと胸を踊らせ私はエリアス先輩を待っていた。


 今日の私はダークブラウンの厚手のスーツに、インバネスコートを羽織ってハットを被っている。信頼する仕立て屋マダムの冬のコーディネートだけあって、上品な仕上がりだ。


 ランチ後の午後、馬車で寮に迎えに来てくれた先輩はそんな私を一目見るなり半眼で「却下だ」と言って馬車に放り込むと、そのまま馬車を城下町まで走らせた。


 ついたのは劇場ではなく、近くのブティックだった。


「仕立てる時間がないからな。既製品で許せよ」


 そういうなり、私を数人のお姉様方の輪の中に放り込んだ先輩は店内の脇にあるチェアーに長い足を組んで座り、優雅に出された紅茶を飲み始めた。


 1時間後、人形のように髪をクリンクリンに巻かれ、白いロールカラーとディープカフスが可愛らしいミルクティー色のワンピースに着替えさせられていた。


 男装用にした僅かながらのメイクは全て洗い落とされ、ベテランメイクアップアーティストを名乗るお姉様により、ホイップクリームのような甘い女の子メイクを施された。チークのホワホワ感が恨めしい。


 着てきた服は店で保管し、帰り際着替える為に預かってもらった。



 トリミングコートを後ろで用意するお姉様方に背を押され、エリアス先輩の元におずおずと出ると、エリアス先輩はすくっと立ち上がり、ホゲーっと口を半開きのまま私を見ていた。


「······死ぬほど可愛い······くそっ。今すぐ食べてしまいたい······やはりデートはこうでなくてはな」


 つまり女装でなければならないと、そういうことですか?


 先輩、やっばり男の娘をご所望ですか?!


 先輩の性癖を改めて確認した私は、満足そうに手を引くエリアス先輩に先導され店を出た。





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