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31.回顧 sideエリアス 2

 


 ブルクハウセン国との国交50周年記念祭を当年の冬に控え、殿下と春先から城の執務室で仕事を片付けていると、王城の事務官が頭を下げに来た。


 ランベルト殿下に付くはずだった、ブルクハウセン語の通訳者が急逝したため、代わりを探しているがすぐには見つけられないと。


 ブルクハウセン国の言語はとても変わっていて、使いこなすのが大変だからと、語学を学ぶ者でも嫌厭しがちで、しかも王族の通訳者となると品性をも求められる為、なかなか手を挙げるものはいなかった。


 近隣諸国と海の向こうの大陸の共通言語であれば、俺も殿下も習得しているため通訳は不要だが、ブルクハウセンみたいな小国の言語など、いくら同じ大陸だとて学ぶ必要を感じず全く触ってこなかったので、通訳者無しには立ち回れないだろう。


 国王陛下の通訳者となるリーネル侯爵に誰か手配出来ないか相談すると、丁度俺達の学校にブルクハウセン国から留学に来ている妹の子がいるという。


 ランベルト殿下と共に取り敢えずどのぐらいの語彙力があるのか、試しに聞きに行った。


 レフィはとても流暢にヴァルテンブルク語を話し、しかも上流階級特有の言い回しや、ネイティブが使う単語まで使いこなしていた。


 母はヴァルテンブルク国リーネル侯爵家、父はブルクハウセン国ローゼンハイン伯爵家という生粋の貴族家系で育ったレフィは、幼い頃から2か国語を随分と叩き込まれていた。


 微妙なニュアンス、熟語から小さな嫌味までそつなくこなせるレフィのヴァルテンブルク語を聞いて、通訳者に決めてしまおうと先に言い出したのはランベルト殿下の方だった。


 だが俺は内心愕然としていた。

 レフィの心の内が、全く見れなかったからである。


 殿下と会話を交わすレフィを目を見開いて見続けたが、何一つ読み取ることが出来ない。


 後になって「ローゼンハイン君の真意を読み取れたか?」と殿下に聞かれたが、真っ青になって「わかりません。そもそも見ることが出来ません」としか答えられなかった。


 嘘だろう? 何故、あいつには魔物の血が効かない?

 まさかあいつが俺にとっての『歌う者』?

 いや、違う! だってあいつは男だぞ?


 殿下からは「暫く当たり障りのない仕事をさせて様子を見ろ。リーネル侯爵には悪いが、彼は外国人だ。そのうち尻尾を出すかもしれん。使えるだけ使えれば切り捨てて構わん」と俺を学校の貴賓室にレフィと置いて、とっとと王城に戻ってしまった。


 殿下は「もし彼が色を用いて迫って来ることが有れば、必ず報告しろ。ブルクハウセンにそのまま送り返してやる」と言っていたので、俺は最初からレフィが殿下に下心を抱いているのだろうと疑ってかかっていた。





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