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24.ブルクハウセン国の舞踏会

 


 1ヶ月半後、私達は舞踏会と記念祭の打ち合わせのため、ブルクハウセン国に入った。


 二日前に入国し、舞踏会前日には王族同士の晩餐と打ち合わせを行ったが私はその間待機となり、実家の執事に連行され、ドレスの調整をさせられることとなった。


 ブルクハウセン国滞在については、殿下やエリアス先輩、叔父上達は公式な招待客として王城に滞在している。


 私は勿論、大人しく王都の屋敷(じっか)に行くようお父様から厳しく言い渡された。


 久しぶりと言ってもいいぐらいの我が家は何だか懐かしくて、弟も以前より少し顔つきが大人になったようだ。


 エリアス先輩とは、舞踏会当日、前と同じように王城の玄関ホールで待ち合わせをした。


 今日の私の衣装はトラペーズネックの深い赤の秋用のドレスだ。袖には美しいレースのアンガジャントが施されている。


 昔ながらのクラシックなドレスに、亜麻色の髪は編み込んでシニヨンに結って合わせた。耳元には巻いた後れ毛がフワフワと揺れている。


 所々にリボンと宝石入のピンを散りばめて、光を反射するとキラキラと光る編み技は、うちのメイド珠玉の一品だ。


 イヤリングとネックレスはお母様のものを使った。


 私がヴァルテンブルク王太子の通訳者となり、クライン公爵家の跡取りの補佐に入ったと知ったら、かの国の元侯爵令嬢は笑って褒めてくれただろうか。


「エリアス先輩!」


 玄関ホールに佇んでいたエリアス先輩は、私の姿を視界に捉えると少し微笑んでから恭しく、ボウ・アンド・スクレープをした。


「せ、先輩······?」


 ほんの少し顔を上げたエリアス先輩は、ニッと口端を上げたので、今日も素敵なエスコート役を演じてくれるのかなと私も笑って、丁寧にカーテシーを返した。


「ああ、とても綺麗だ、レフィ」

「ふふ。先輩だんだんと僕の女装に合わせるの上手くなりましたね」

「ああ、何度でも付き合ってやる。さあお手を、お嬢さん」


 丁寧にマニキュアを塗られた手でそっと先輩の腕を掴むと、先輩は私の耳元に唇を寄せて「本当に美しいな」と耳朶を打ったので、柄にも無く私は照れてしまった。




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