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21.合宿 6

 


 足元から揺らいだ私の身体は、全体重をそのまま先輩にぶつけた状態になってしまったが、先輩の広くて大きな胸は私を軽々と受け止めた。


「ごめんなさ······!」


 肋骨のヒビを気にして、直ぐに先輩から離れようとしたけど、気がついたら長い腕が私の背に回り、私の頬の直ぐ側にはエリアス先輩の蜂蜜色の髪があった。


 ぎゅう、と強く強く縛るように、私の身体は先輩の胸の中に閉じ込められて、身動きがとれない。


「エ······エリアス先輩?!」


 本当に肋にヒビが入っているのだろうか、この人は。


 私の肩に顔を埋めるエリアス先輩は、何も言わずただ私を抱き締めていた。


 もしかして、先輩泣いている?


「先輩······どうしたんですか?」

「レフィ······っ」


 何で泣いているの?

 どうして? 私のせい?

 それともランベルト殿下と何かあったの?


 分からない。

 私は何も知らない。


 先輩の腕の力はとても強くて、私が身を捩っても離してくれない。


 余りにも強く抱きしめるのでポカポカと手だけ動かして叩いたがビクともしない。


「せんぱ······っ! 苦し······!」


 だんだんと呼吸すら辛くなり、肩で息をしながら喘ぐように声を漏らすと、パッと腕の力が弱まった。


「! すまない······っ」


 開放された瞬間、思わずその場にへたりこむと、浅瀬の海水がジャージのズボンに染み込み、先輩は慌てて屈み込んだ。


 苦しかった私はゲホゲホと咳き込んでしまい、先輩も心配そうに背を擦ってくれたが、私の頭の中は酷く混乱していた。


 肺が圧迫から開放されて、急に酸素を取り込んで軽く目眩がする。


 ふと、背を擦る先輩の手が留まった。


「······?」


 そのまま、背から肩に滑るように手が動き、先輩は私の顔を覗き込んで不思議そうに見つめた。


「先輩······?」


 肩に手が置かれた手が離れると、先輩は私の半袖のTシャツの裾を掴み、正面から一気に胸元まで捲りあげた。


「······っ!!」


「チェストプロテクター······?」


 ────見られた······!!


 先輩の目には涙は無かった。


 私の身体は動かなかった。

 声も出なかった。



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