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19.合宿 4
博物館を見て回った私達はカフェに戻ると、お婆ちゃんは手を繋いだ私とエリアス先輩を見て「あらあら」と言って笑っていた。
お昼に賄い飯のパスタを頂いて、午後も人のこないカフェで名目ばかりのお手伝いをしていたが、先輩は私の側でずっと大人しくレポートを書いていた。
だけど、たまに顔をあげて私を見ると手を延ばす。
さっきみたいに手を繋いてあげると、先輩はまた大人しくレポートを書き始めた。
先輩は、ずっと迷子みたいな少し不安気な顔をしていた。
今は傍にいるのに。手を繋いでいるのに。
何に迷っているのかな。
ティータイムを過ぎた辺りで、お世話になったお礼を言って、学校の制服に着替えて私達はホテルに戻った。
帰り道、エリアス先輩は私の手を離さなかった。
私はもう女装はしていなかったけど、三つ編みを解いた髪は束ねてもフワフワと風に舞い、エリアス先輩は私の髪にそっと触れては手を強く繋ぎ直した。




