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17.合宿 2

 


「何でお前がここにいるんだ」


 相変わらず顔が赤い先輩にアールグレイティーをお出しした私は直ぐ様事情を聞かれ、持病で水泳が出来ないため、先生に言われてここの手伝いをしていると伝えた。



「持病······なんの病気だ?」

「ブルクハウセン国にしかない奇病です。大したことはないです。お気になさらず」


 変に突っ込まれたくないので、もう堂々と嘘をつくことにした。


「手伝いはいいとして······何でそんな恰好をしている?」

「お婆ちゃんから、これが制服だって渡されたんです」

「制服って······これディアンドルじゃないか」


 エリアス先輩はちらりと私の胸元に視線を寄越し、直ぐに外した。


「前も思ったんだが、お前の女装凄すぎないか?」

「そりゃあ、まあ。凄いですよ」


 なんせ本物の女ですからね。


「そ······その、胸の膨らみとか本物みたいで戸惑うんだよ」


 そりゃあ、本物も本物。自前ですからね。


「先輩は何でこちらに?」

「俺は······今日の朝稽古で少し怪我をしたんだ。大したことは無いんだが、主治医から暫く激しい運動を控えるよう言われてな」

「え。怪我ってどういう······」

「肋骨にヒビが入った」

「大怪我じゃないですか!!」


 何を平然としているのだろう、この人。

 病院に入院するなり、公爵邸で療養するなりすればいいのに。


「だから、遅れてこちらに到着したんだが、担任から水泳をしないように止められた。代わりにこちらの博物館の見学とレポートを出すように言われて」


「エ?! レポート? 僕もそっちが良かったのに!」


 こんな風に女装して仕事をするよりよっぽど学生らしい代替案ではないか。


 まあ、先輩は手伝いをすることは出来ないないからレポート案が出た訳だ。だって骨にヒビが入ってるくらいなんだから。


「レフィちゃん。せっかくだから二人で博物館見ていらっしゃいな。お客さんなんて、そもそもあんまり来ないんだから」

「でも······」

「賄いで良かったら、そこのお兄さんの分と2人分用意して待っててあげるわ。ゆっくり見てらっしゃい」


 私達の会話を聞いていたお婆ちゃんは、優しく施設見学を促してくれた。


「じゃあ······せっかくだから私もご一緒します、先輩」

「······その恰好で行くんだよな?」

「あ、着替えて来ましょうか? 奥で······」

「駄目だ! 着替えるな! そのままでいろ!」


 何故か怒るエリアス先輩と共に、私は博物館の入口へ移動した。



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