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物語の社

猫の手紙

作者: 五月雨

 にゃあ、とは猫の言葉を知らない者の擬音だろう。


 大雑把すぎる。長さが違えば音程も違う。かといって単純ににゃあああ?などと啼かれても困るのだが。


 そもそも人間の文字や声帯で表せはしない。文字や言葉を使わずに、では一体何の手紙なのか?


 猫は昔から、魔法めいた存在である。



 ☆★☆★☆★☆★☆



 人間が二人いる。


 何か話しているようだ。血を流して倒れた人間のこと。


 そして猫一匹、こちらはとりあえず関係ない。


 二人が去った後も、多くの人間達が入れ替わりに訪れた。そこでは必ず何かを話してゆく。難しい顔をして二言三言、時には侃々諤々。


 やがて遺体が片付けられた。


 来る者も少しずつ減っていったが、ひとつだけ変わらないことがある。


 猫だ。猫が出入りしていることは、昔から変わっていない。



 ☆★☆★☆★☆★☆



 それが起こったのは、十日ぶりに人が現れたときだった。


 猫と話している。無論、本当に言葉が通じているのではない。目で追ったり撫でたりしながら、独りごとを勝手に延々と。


 そのうち驚きの声をあげて去り、忘れたように来なくなってしまう。


 昼寝に散歩、お隣との喧嘩。いつもどおりなら、猫にとってどうでもよいことだ。


 普通はこれで何事もなく終わる。しかし今回は稀な例だった。独りごとをした人間が戻ってきて、お前のお蔭だ何だと一方的に騒ぐ。


 迷惑な話だ。土産の一つもあれば別かもしれないが。



 ☆★☆★☆★☆★☆



 猫がいる。それは何も変わっていない。

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