プロローグ的な
どうも架空戦記はPV数が多いということが忘れられず、性懲りもなくまた太平洋戦争を題材にした話を書こうとするカトユーです。
前作の「太平洋戦争~とある人間が変えていく歴史~」は失踪気味になりましたが、更新を続けたいという欲はあります。まあ、戦闘の見通しが絶望的過ぎて、書いてて鬱になりそうですけど。
ともかく今作では、海軍と比べると比較的末期まで損失の少ない陸軍をメインに書いていきます。
「臨時ニュースを申し上げます。臨時ニュースを申し上げます。……帝国陸海軍は、本8日未明、西太平洋においてアメリカ、イギリス軍と戦闘状態に入れり。」
ラジオの周りに居た人達はワッと盛り上がった。互いに喜びを分かち合い、華々しい戦果に興奮していた。
一方で、俺はと言うと……
(始まったか……)
このように暗い感情に包み込まれていた。
俺はつい先日、1941年12月2日にこの世界へとやってきた。タイムスリップしてきたのだ。ラジオの内容からも分かる通り、俺は太平洋戦争開戦直前の大日本帝国にやってきたのだ。前日には大本営が開戦第1日目を12月8日にすることを決定し、各司令官に開戦第1日目からの作戦行動開始を命令していた。平時から検討されていた南方作戦計画はとうの昔に固まっていた。
何の偶然があったのかは解らないが、帝都を彷徨っている内に帝国陸軍参謀本部の人間に出合い、そこで自らの知識を教えることとなった。しかし、歴史を変えるにはやって来る時代があまりにも遅すぎた。
今までの戦況は以下の通りだ。
対華戦域(中国)は日華事変から続く泥沼の戦いとなった。陸軍は比較的早くに敵首都(南京)を占領したものの、中華民国は徹底抗戦を主張し重慶へと引いた。それを追って重慶への攻撃を始めたものの、戦果は芳しく無く僅かに敵を圧迫する程度であった。
対ソ戦域(満洲)は一応平穏であった。4月には日ソ中立条約を締結していたからである。しかし、6月になると同盟国のドイツが不可侵条約を破棄してソ連に侵攻したのだ。ドイツ曰く短期決戦で決着をつけるとのことだったが、戦局は決して油断出来ずソ連降伏の見通しは立っていない。陸軍は独ソ開戦を当てにして関特演なる満洲の兵力増強を行ったが、日ソ開戦の可能性は殆ど無くなり、増強された兵力は後述の南部仏印進駐を経て、南方へと向けられた。
1941年は南方への意識が高まった時期だった。第三次近衛文麿内閣が成立してすぐに、日仏印共同防衛協定が成立した。他国の反応は非常に大きかった。アメリカは日本の資産凍結、対日航空用ガソリンの禁輸を相次いで断行した。この時点で対米戦は必至となった。
しかし、南方の敵はアメリカのみではなかった。マレー半島にはイギリス、ジャワ島にはオランダが居た。気づけば日本に敵対的なのは、アメリカ、イギリス、オランダ、中華民国の4ヶ国になっていた。
この戦いは勝てる見込みは無かった。俺もその旨を参謀本部にそう言った。しかし、参謀本部は心配し過ぎだと一蹴された。極一部、米英で学んだ将校が賛同してくれたが、影響力は微々たるものだった。
こうしてウダウダしている内に1週間近く経ち、陸軍によるマレー半島上陸、海軍による真珠湾攻撃で太平洋戦争が始まった。
どちらも史実通り上手く進み、陸軍はシンガポール目指して快進撃を始め、海軍は米太平洋艦隊に大損害を与えた。
今の俺には太平洋戦争に勝とうなどという気持ちは無かった。早期講和も難しいだろう。既に大日本帝国が降伏するその時まで、如何にして自軍の損害を減らすか、史実での失敗を減らすかということばかりを考えていた。
取り敢えず、南方第一段階作戦終了までは黙っていても問題は無い。
本当の勝負は1942年だ。
今回は割り切って主人公のタイムスリップの様子とかを省きました。とっとと太平洋戦争に突入した方が作者的にも、読者的にも良さそうなので。(下手に凝った設定作ると後々詰むことを3年掛けて学んだ……)
次回は未定。
前作はこちらから。
太平洋戦争~とある人間が変えていく歴史~
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