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10年前

~10年前ノーラ街~

「この者のスキルは【浮物】です!」


 教会の司教さんにそう言われて僕は思わず息をするのも忘れてしまった。【浮物】て何。後ろを振り返ると、スキル授与式に来ていた同年代は笑いをこらえていた。


「あの、そのスキルてどういうものなんですか?」

「このスキルは、自分が触れた物に限り浮かすことが出来るスキルの様です」

「それじゃあ重い物も?」

「過去の文献を見てみますと…1gの物()()浮かすことのできるスキルだそうです」


 僕はそのまま気を失った。僕の故郷はダンジョンのお陰で利益が出ている街ともいえ無し村とも言えない微妙なところだ。だけど、その地に一獲千金を求め、ある一定以上の冒険者が訪れその地に外貨を落とす。僕はダンジョンにモンスターを狩りに来た冒険者や、ダンジョン内のお宝を探すトレジャーハンターから話を聞くうちに自分もそんな冒険に出てみたいと思った。

 しかし、現実は甘くない。勿論、死と隣り合わせの職業だし外れのダンジョンを引くことだってある。6歳の時に僕はつたない言葉で両親を説得し、何とか冒険者になることを許して貰った。我流だがひたすらに素振りをした。例えスキルが両親と同じ【農民】でも鍬を振り下ろす動作は剣に通じると思ったからだ。それからスキル授与式までひたすら励んでいたのだが駄目だったようだ。気が付くと僕は教会のおばあちゃんシスターの膝枕で寝ていた。


「おや、起きましたか?」

「あ、はい。どうもすいません、ご迷惑とご心配おかけしました」

「ふふふ、イイのですよ。悩める若者よ頑張りなさい」

「あ…」


僕は自分のスキルを思い出した。【浮物】でどう頑張ればいいのだろうか?


「あなたは自身のスキルに悩んでいるそうですね。ですがスキルなんて些細なものなんですよ。私のスキルだって【聖女】じゃありません【糸紡ぎ】です。ですが、どうしてもみんなを救う【聖女】になりたかった…。今はその真似事ですがシスターをやらせてもらっています」

「そう…ですよね!なにもスキルが絶対じゃないですもんね!」

「ふふふ、そうです。ではおこがましいですがアドバイスを…『スキルを徹底的に磨いてごらんなさい』」

「徹底的に磨く?」

「えぇ、そうです。磨くのです。私もこの歳になっても磨き続けたらほら…」


そういうと、シスターは自身の白くなった髪を数本抜くと瞬く間に1本の糸にしてしまった。それは髪の毛のように細いが、強度も申し分なく失われた糸といわれる『シルク』のようであった。


「す、すごい」

「前に鑑定士に見てもらったところ、ダンジョンの宝箱に稀にあると言われる『シルク』と同じだと言われました。本来は髪の毛ほどの細さは紡げません。しかし、磨き続ければ…こうなります」

「…ありがとうございます!僕、頑張ってみようと思います」


ペコリとお辞儀をして教会を後にする。そのシスターは笑みを浮かべると教会内にある絵の中に戻っていった。


・・・・・

・・・・

・・・

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