表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/1

1話 舞い込んだ依頼

「なあなあ、悠。今日帰ったらFPSやろうぜ」



「無理。今日はバイト入ってるから」



「ちぇっ、つれねえなぁ」



 僕──────こと、佐藤悠(さとうゆう)は、しがない高校二年生。特筆すべきことはなにもない。しいて言うなら─────家事が得意かな。家事自体小さい頃からやっていたし、自然に身に付いたって感じ。



「明日は暇だから、明日ならできるよ」



「オッケー、じゃあ明日。必ずだぞ? 絶対だからな? 寝てましたーとかやめてくれよ?」



「僕が約束をすっぽかすわけないじゃないか」



「……………いや、現にお前、前科あるからな?」



「あはは……………そうだっけ?」



「すっとぼけんじゃねえ」



 今僕とこうして話しているのは──────親友で幼馴染みの三好陽翔(みよしはると)。サッカー部に所属していて、目鼻立ちがくっきりとした感じのイケメンではなく、ちょっと爽やかなイケメンみたいな感じ。まあ、腐れ縁だ。



「……………ところでさ、悠。知ってるか? 『氷姫(こおりひめ)』、また告られたらしいぞ」



「知ってる。しかもこっぴどく振ったんでしょ?」



「ああ。振られた男子も泣きながら帰って来たらしい」



 『氷姫』──────藤森安奈(ふじもりあんな)。彼女は、そう呼ばれている。黒色のロングヘアーにキリッとした顔立ちで、僕からすれば高嶺の花。何故『氷姫』なんて呼ばれているのかというと──────普段から滅多に笑わないのと、告白した男子を振る際の冷たい態度が原因だろう。



「あー、俺も早く彼女欲しいな~」



「はるって案外彼女できそうなのに……………彼女いないよね」



 僕はそれが不思議でならない。はる程の男だったら、彼女がいてもおかしくないように思う。こう見えても……………はおっと、失礼か。まあ、ある程度の気遣いはできるし、中々の好物件なのでは? と僕は思っている。なんでだろう? …………………まさか。



 僕はふと気づいてしまった。



「………………没個性?」



「うぬぬ……………その可能性を否定できない自分が恨めしい」



 唸るはる。



「……………まあ、個性は人それぞれだしね?」



「だから没個性が個性ってか? お前、それ、慰めるどころか傷口抉りにかかってるようなもんだぞ」



 苦笑するはる。全く慰めたつもりもないんだけどね。まあ、彼女ができるように頑張って欲しい。僕は隅で旗振ってるから。




◇◆◇◆◇



 学校が終わって、バイト先。僕は自分の特技を生かして、家事代行サービスというのをやっている。自分の性に合ってるし、それでお金ももらえるんだから、いいことづくめだ。



「おっ、悠。今日もご苦労様」



 仕事場に入ってきた僕に声をかけてくれる女性。



「ご苦労様って、僕、これからなんですけどね」



「まあまあ、素直に労いの言葉は受け取るものよ?」



 バイト先の上司──────宮内冬野(みやうちふゆの)さんだ。僕をここに誘ってくれたのも冬野さんで、僕をこの仕事に引き合わせてくれた。



「……………それより、今日ってなんか依頼入ってたりします?」



「それよりってひどーい。う~ん……………今日は特に入ってないかな」



「そうですか………………」



 まあ、こういう時もたまにある。座って本でも読むことにしよう。気になるところで止まってるんだよね。



 妙にウキウキしながら持ってきた鞄から本を取り出そうと───────



「あ、電話だ」



 電話が鳴った。静かな空間にはっきりと響く。冬野さんが受話器を手に取る。



「はい、こちら孔明家事代行サービスです」



 この孔明家事代行サービスの孔明は、あの諸葛亮孔明から取ったらしい。謎だ。孔明と家事になんの関連性が────………………



 などと馬鹿げたことを考えていた僕。やがて、電話を終えたのか、冬野さんが僕の方へとやってくる。



「悠。今さっき依頼が入ったから、悠にそこに行ってもらいたいの。場所はここだから、宜しく」



 冬野さんから渡された紙には、そこまでの行き方の地図と、『藤森さん』という名前が書かれていた。



「分かりました」



 僕は特段気にかけることもなく、頷くと準備をして目的の場所へと向かう。僕は気づくべきだったんだと思う。『藤森』という名前で気づくべきだったんだ。 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ