家へ
「ところで、君は何しにここに来たん?」
その女子高生は目を見開いて僕に問いかけた。
「え?」
「だって君、ここの住人じゃないでしょ?」
「え、うん、そうだけど・・・」
「何しに?」
「えっと・・・いや、なんとなく」
「都会に、飽きてきたんでしょ?」
うっ鋭いなあ。
女子高生は、僕の顔を覗き込むようにしてみる
「すごいね。何で分かるの?」
「だって、よく見ない顔だし、こんな山奥で変に嬉しそうに目を光らせていたからね」
そうか、そういうもんなのか。
森の空気は本当に良い。
そして、こう、二人で歩いているのも幸せ。
しばらく二人で歩いていた。
一向に森が開けてこない。
でも、少し住宅が見えたような気がした。
遠くを見ながら歩いていると、森が開けた。
「あの青い屋根の古そうな家が、私の家」
「もうすぐだ。がんばろう。」
そしてまた、元気を出して歩き始めた。
「そういえば、私、さっき学校行こうとしてたんだけど、あんなことがあったから、家に戻ってきちゃった」
「えっ!?でも私服じゃ・・・」
「私服の学校だからね」
そして、彼女が言った学校は、僕の家ととても近い所であった。
「着いたよ」
「結構いいところだねー。山に囲まれていて、僕の思った通りだ」
「そう・・・かな。さっ入っていいよー」
「いいの?」
「いいよいいよーどうせおばあちゃんしかいないし」
「両親は?」
「ちょっと、昼間は畑出てるからね」
さすが。
「お邪魔しまーす・・・って、鍵かけてないの!?」
「え?だって、かける必要なくない?」
田舎はそんなもんなのか。
「おばあちゃん」
「おや?もう帰ってきたのかい?」
「崖から落っこって、携帯も忘れたから、今日はもう危ないと思って、帰ってきた!」
案外軽いな、この子。
「おやまあ。大丈夫かい?あの辺は気を付けてね」
いやおばあちゃんも反応薄いな。
結構おおごとだと思うんだけど。
「ところで、どうやって崖の下から戻ってきたんだい?」
「あの子が助けてくれたの」
「こ、こんにちは・・・」
「あら、いらっしゃい。ありがとう。本当にこの子、時々抜けているところがあってね。急によろよろ落ちちゃったのかもね。なんもないけど、ゆっくりしていってね」
「で、でも、さっきはでっかい熊が!!」
「とにかく、気を付けてね。あ、そうだ。お昼ご飯は食べたかい?せっかくだから、どうかね?ここで食べていかないかい?」
「えっ!?でも、そんな悪いですよー」
しかし、僕はおなかが鳴ってしまった。
「とりあえず、食べようよ!持ってきてないでしょ!お昼ごはん」
そこではじめて気づいた。
こんな山奥に来ているのに、ほとんど食料を持ってきていなかった。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
そして、座布団に座った。
「私も手伝うよ」
「美穂ちゃんも今日は座ってていいよ。その子としゃべってなさい」
「わかった」
そして、僕の隣に座った。
「そういえば、名前聞いてなかったね。私は美穂。君は?」
「僕は喜良。改めてよろしく」
「そうだ。LINE交換しようよ!最近買ったの!!」
「いいね!」
そういって、LINEとメアドと電話番号の交換をした。
ここまでしあえる仲になるとは、すごくうれしい。
「ねえ。君の家、私の学校の近くならさ、定期的に会おうよ。まだ私も学校は言ったばっかりだから、町のこととかいろいろ教えてよ」
「そうだね!!なんだか楽しみになってきたよ!」
そうこうしている間に、おばあちゃんが料理を持ってきてくれた。
そうめんだったのだが、隣に、きゅうりとごまが浮いている汁があった。
「うわあ~。冷や汁だあ~。おばあちゃん、ありがとう!」
「冷や汁?」
「あれ?きっちゃんは冷や汁知らないの?」
「きっちゃん」と言われてちょっと戸惑ったが、すぐに首を横に振った。
すると、おばあちゃんが説明してくれた。
「冷や汁っていうのは、熊谷市っていう埼玉県の地域と、宮崎県、山形県で食べられているの。ごまときゅうりをたくさん入れてね。宮崎は魚を入れるらしいけど、私の地元は熊谷だったからね。これでいいかい?」
「すごいですね。いただきます。う~ん。おいしい!!」
「た~んとお食べ。美穂を助けてくれたお礼だから」
「あっありがとうございます!!」
「きっちゃん、これからなんかある?」
「いや、特にないけど・・・」
「じゃあ、この辺をちょっとうろうろしてみない?」
「えっでも・・・」
「大丈夫。私はこれから何もなくて暇だからさ」
「でも、どこに行くの?」
「う~ん。この辺何もないけど、とりあえずどっか行ってみよ!」
「ありがとう」
そして、冷や汁という麺をちゅるちゅるとゆっくりと一緒に食べた。
本当においしかった。
ごまの風味がとっても聞いていて、その上に、きゅうりのっ触感があり、めんのむにゅむにゅ感がそれとうまくマッチして、絶妙な味わいとなっている。
よく味わうと、大葉やみょうがも入っていて、その少し来るからさや甘さも、バランスが取れていておいしかった。
すごくくせになる味だった。
そして、あっという間に食べてしまった。
「すごくおいしかったです」
「それはよかった。あなたのお口に合ったなら、うれしいわ。」
「本当にこれはこんな暑い日だと格段においしいよねー。う~ん。満足!」
「ありがとうございました」
そして、少しぼーっとしていた。
「きっちゃん、じゃあ行くか!!」
美穂は、すごくノリノリだった。
僕はさっさと準備をして、席を立った。
「じゃあ、行こう」
そして一緒に家を出た。
「気を付けてね」
さっきのことがあったからか、おばあちゃんはやはり美穂のことを心配していた。
冷や汁、おいしいです!
作ってみてください!