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村と都市  作者: 栄啓あい
1/4

山へ行くと

 私は、ある「村」に住んでいる女子高生だ。


 バスは数時間に一本、電車はない代わりに、森がたくさん生い茂っおり、生物も多種多様である。


 学校には、自転車で三十分、電車で三十分かけて行っている。


 今は夏休みであり、蝉がぎゃんぎゃん泣いている。


 私はとある道路の山道を自転車で走らせていた。


 そこは崖がとても急であり、森だらけである。

 

 坂道を下っていると、突然、熊が出た。


 熊くらい出ることは知っていたが、いざ間近で見ると、恐いものだ。


 だからと言って、迫ってくるわけでもなかろうと思い、静かに引き下がろうとした。


 しかし、その熊は、こちらを向くと、目が合ってしまった。


 

 どのくらい経っただろうか。


 熊と見つめ合って、三分くらい固まっている。


 突然、その熊は歯ぎしりをして、目が光ったような気がした。


 私はいきなり怖くなり、急いでその坂道を駆け上がった。


 私の心臓はとても跳ね上がっていた。


 刹那、その熊は坂道をどんどんという力強く重い音とともに上ってきた。


 ハアハアゼエゼエ言いながら、ひたすらに走った。


 少しずつ距離が近づいている。


 とにかく、分かれ道まで逃げようと、無心で走った。


 でも、タイミングが悪かった。


 私がある程度走って登っていると、突然何かの動物の影を感じて、その瞬間、目の前に狸が現れた。


 そのタヌキをよけようと、自転車の方向を曲げた。


 すると、ふらついて、自転車をその場に倒してしまった。


 迫ってくる熊。


 照りまくる灼熱の太陽。


 その中で私自身も、力尽きてしまい、倒れてしまった。


 しかし、頭は地に付かなかった。体全体が放り投げられた気がした。


 そう、私は、してしまった。


 崖から、落ちた。


 「きゃああああ!!」


----------------------------------------------


 ただ平凡な男子高校生の僕は、近くの公園で少し休憩をしていた。


 歩き疲れたのだ。


 熱いし、景色は変り映えない住宅街だし、人はたくさんいるし。


 都会はもう、飽きてきた。


 疲れた。


 どこかの森へ行きたい。


 そう思っていた。


 その日は何も用事がなかったので、本当にいくことにした。


 行先は、僕の住んでる都市から程近く、それであってとんでもなくど田舎で森林が生い茂りまくっているところだ。


 玄関で、ロープと針金を見つけた。


 ロープなんていらないかな、と思いながら、針金とセットで何となく持って行った。


 電車に乗って、ゆったりと行く。


 着くと、そこは、のどかとしか言いようがないようなところだった。


 バスがちらほらいたが、本当に良い風景だ。


 僕は、一日に数本しかない、ある村の方面のバスに乗った。


 辺りは森だらけである。


 空気がおいしいように感じる。


 とにかく、気持ちいい。


 落ち着く。


 こんなところに、来てみたかった。


 僕はただ、ボーっとしていた。


 気が付けば、もうすっかり山奥だった。


 何分くらい揺れているだろうか。


 でも、全然疲れて来ない。


 やはり、森の力はすごいのかもしれない。


 ふと、そんなことを思ったので、次の停留所で降りることにした。


 バス停の名は、すぐに忘れてしまった。


 とにかく森の中で、歩くのも一苦労だった。


 でも、山を少し登っていった。


 バスは、もう何時間も来ない。


 車もちらほら。


 ただ、蝉がぎゃんぎゃん、ずっと鳴いていた。


 蝉の音がすごくうるさい。


 僕は、この空間にいられて、とても嬉しかった。


 何もない、がある。


 それがここの良い所だと感じた。


 しかし


 暑い


 そして、休憩するところもない。


 僕は、さすがに疲れていたので、ガードレールに腰かけていた。

                       

----------------------------------------------


 

 私が目を開くと、そこにはたくさんの木があった。


 「何だ・・・」


 そう呟いて、上を見上げた。


 すると、空ははっきりとは見えず、たくさんの木々が降ってくるようだった。


 やっと状況が飲み込めた。


 私は、落ちたのだ。


 あの時、熊に襲われて。


 よく生きていたなあと自分でも感心する。


 さてと、とりあえずどうやって上に戻るかだ。


 この石の壁を昇るにも、足場もなく、危険すぎる。


 助けを待つか・・・。


 あ!自転車!と思ったが、そんな場合ではない。


 しかも、今日は携帯を持っていなかった。


 もう、対処法はない。


 終わりだ。


 そう思い、また目を閉じた。

                       

------------------------------------------


 僕は、腰かけていると、遠くに何かが落ちているのを見つけた。


 自転車だ。


 この自転車、やけに急に倒した感じがある。


 何か動物にでも襲われたのだろうか。


 この村では、何が起こるか全くわからない。


 少し恐い気もした。


 その時、何か遠くから声がした。


                       

--------------------------------------------


 しかし、私は目を閉じても落ち着かなかった。


 仕方ないから、起きていた。


 心臓の鼓動は高まっていった。


 ここはひとつ、叫んでみよう。


 「助けてー!だれか―!助けてー!」


 そう叫んでみたが、返事はない。


 やっぱり無理だよねえ。


 でも、もう一回。


 「助けて―!誰か助けて下さーい!」


 ずっと叫んでも、反応はない。


 上をぼーっと見上げていた。


 その時、顔が一つ出てきたような気がした。


                       

----------------------------------------------


 僕は、その声がどこからなのか、何なのか、全然わからなかった。


 もう一度、集中して聞いてみた。


 「助けて―!誰か助けてくださーい!」


 女性の声。


 崖の下から聞こえる。


 そして、ひょこっと崖の下をのぞくと、一人の女子高生が下にいた。


 「大丈夫ですかー!」


 と叫んでみた。


 すると、


 「助けてください!道路に!」


 と聞こえた。


 「ちょっと待っていてください!」

                       

----------------------------------------------


 上から出てきたのは、男の人の顔だった。


 少しやりとりをした後、その人は針金とロープを出した。

                       

----------------------------------------------


そして、針金を道路のでこぼこした部分に刺し、色々と細工をし、縄を針金に結び、縄を崖の下におろし、叫んだ。


 ものすごく念のために、持ってきておいてよかった。


 「これに掴まって登って!」

 「でも・・・」

 「縄は念のため僕もおさえているから!」

                       

----------------------------------------------


 なんて優しいんだ!この人は


 あとでさっき採れたっていう野菜をお裾分けしなきゃ!


 でも、こんなロープ私で登れるかなあ。


 いやでも、戻るためだ、頑張ろう!

                       

----------------------------------------------


 その女子高生は、しばらく何か考え込んだ後、縄をしっかり掴んで、力強く登ってきた。


 肩には鞄をかけていた。


 そして、道路まで何とか登り切った。


 「ありがとうございます!すごく助かりました!」

 「いやいや。こちらこそ、無事に助かってよかったです」

 

 その女子高生は、同年代くらいだった。


 僕は、歳をきいてみた。


 「失礼ですが、何歳ですか?」

 「15ですー」


 あれ、もしかして年下か?


 でも、まだ誕生日が来ていないのか。


 「え、じゃあ何年生ですか?」

 「え?ああ、高一ですけど・・・」

 「高一!同じ年だ!」

 「同い年!じゃあ、仲良くしようよ」

 「うん!」


 その娘は、とてもかわいかった。


 「君、ちょっと時間ある?」

 「え?うん。たくさんあるよ」

 「じゃあ、一緒に来てほしいんだけど・・・」

 「ど・・・こに?」

 「私の家」


 僕は、突然の誘いに、とても驚いた。


 いきなり僕みたいな人が女の子の家に入っていいのだろうか。


 でも、村の人と触れ合えるなんて、こんなチャンスはないと思い、すぐに返事をした。


 「行こう。じゃあ」

 「ほんと!?ありがとう!」


 それから、二人は歩きだした。

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