正体を知りました
本日2話です
そうして準決勝を無事勝つことができたのだが、『人殺シノ刀』はなかなか酷い技能だった。使えるのは少々控えよう。
俺はさっき刺されたせいで服がボロボロだったためまたコロシアムを出て服を買いに行った。買ったのは黒のシャツとスキニーとコート。我ながら全身黒はどうかと思ったが、これが一番落ち着くのだ。それにあの刀を抜刀した時黒いオーラのようなものを纏うため、全身黒だと隠しやすいかなと思ったのだ。
そしてコロシアムに戻るとまだ時間があったため、決勝戦のもう一人を決める準決勝を見ようと思ったのだが、端的に言ってなんの参考にもならなかった。
その男がロングソードを抜いたかと思うと戦いは終わっていた。
こいつはさっきの女の子以上に強いな。
いや、こいつしか強い奴がいないと言っても過言ではないな。俺以上に強いだろうか? いや、でも当てるかもしれないな。なんて、慢心しているとまけかねぇ。
こいつ多分ユニークスキル持ちだ、他の奴らと違う雰囲気を持っている。しかし貴族がなんでこんなところに? ま、俺も一様貴族だから考えてもきりがないな。
そして決勝戦が始まるのでコロシアムの中に向かって行く。
するとさっき上から見ていた時すぐに勝負を決めていた例の男はすでに来ていた。いや、終わってからもここで待っていたのだろうか?
決勝戦ということもあって観客の声はさっきに比べてとても大きな物になっている。
「あんた、さっきの試合を見て思ったんだが、強いな。しかもおそらくユニークスキル持ちだ。違うか?」
「おやおや、あの一回の試合を見ただけで僕がユニークスキル持ちだというところまで見抜きますか、まぁ、見抜いたご褒美としてその事実を認めてあげましょう。」
「ほぅ? まぁ俺も初めてのバトルロイヤルで今まで難なくここまで上がって来て、ここに来て慢心していたらやばいなと思ったよ、あんたの強さは空気中からひしひしと伝わってくるからな、」
「そこまで言ってくれるなんて嬉しいですねぇ、では始めましょうか?」
「ああ、そうだなあ!!!」
そう言って俺は抜刀しながら奴との間合いを詰める。そして一振り、それを奴は武器を使い弾く。
「これは楽しめそうだ」
「そうですか? それはよかったですねぇ、ですがあなたは楽しむことなく私に殺される予定ですよ?」
すると奴の持っていた刀は俺の刀を力だけで押し切り俺を切り裂いた。
「グハァッ! く、何をした!」
「あなた、ユニークスキルに気づいていたでしょう? それを使ったまでです。ユニークスキルの名前は『超越』、相手のレベルとステータスより自分のレベルとステータスを2倍にするというスキルです。」
「クハハハハ! すげぇな、面白いじゃないか、俺の刀もお前みたいな強い奴は大歓迎だろうよ」
名前もわからない刀の感情を代弁する。しかし、この刀が楽しんでいるのは間違ってはいないだろう。さっきから刀から入ってくる力が強くなって来ている。
「ふふ、変な人ですね、まぁ、死んでください!」
やはりこいつの剣は早いし剣筋が読めない。
だがこいつは言った。レベルも俺の倍になっていると。すると俺はこいつからのダメージを70%カットすることができる。勝てないことはないだろう。
「ふぅ、攻撃魔術って俺使ったことないんだが、少々負けないけどやばいから使ってみるぜ、これで死ぬなよ? くらえ! サンディザスター!!!」
すると奴を中心に魔法陣が展開される。
そしてその魔法陣から小さな太陽を思わせるようなものが出現して奴を襲う。
「グハァッ!!! なんてね、こんなのが効くわけないでしょう? ほんと、真面目に殺しにかかって来ているんですか? 本当に舐めていますねぇ、」
そしてその後も両者傷を負わず、負わせることもなくただ時間だけが過ぎて行く。
「ふふふ、そろそろあなたは体力的に危ないのでは?」
「はぁ、はぁ、確かにやばいな、でもなんでお前は大丈夫なんだよ」
「まぁ、スキルの恩恵ですかね?」
「マジかよ、強ぇや、お前。本当に負けちまいそうだな。いっそ棄権した方が楽そうなくらいだ」
「棄権? そんなことさせませんよ?」
「だよな、はは、もうぶっ倒れそうだよ」
その時その声は聴こえた。
『わが主君よ、我の名前はいつになったら呼んでくれるのだ?』
「ん? 誰だ?」
「なんですかあなた? 私の気を逸らそうとしているのですか?」
『何をキョロキョロしておるんだ、我が主君。主君は手に我を持っているじゃないか、なぜそんなにキョロキョロしているんだ?』
ま、まさかこの声の主はこの刀からなのか?
『そうであるが? して主君、だいぶ負けそうになっているではないか。我は主君をなくしてから400年ほどは一人だったから、寂しいのはもうこりごりじゃ、だから主君に力を貸そうと思ってな、』
力? 力を貸してくれるのか?
『そうだが、何せ主君はこのままだと確実にこの貴族に負ける。そこで我が主君に力を貸そうという考えに至ったわけである』
成る程了解した、それで、力はどうやって貸してくれるんだ? お前は刀だろ?
『我の名を知れば、今より多い力を貸すことができる。が、時に主君よ、我の名前を覚えておるのか?』
お、覚えているのかって!? んな馬鹿な、俺はお前と出会ったのは今日なんだぞ? 覚えているも何もないだろう?
『主君は何一つ変わってないようだな、前回も主君は我の問いかけに驚き知らないと言って我から名前を聞いた、変わっていないな、何一つ、そろそろ思い出してもいいと思うんだがな、主君よ』
妖刀 渡桜
あぁ、思い出したよ桜、お前が見かけにもよらない名前だったこと。
俺がお前のことを桜って呼んでいたこと。
俺がお前を置いて転生してしまったこと。
全部思い出した。そして俺が魔の神だったことも。
『主君、主君は前もそう言って我のことを思い出してくれたのだぞ?』
そうだったかな? 何せ500年も前の話だしな、単純に忘れてしまったよ。
『そうか、それは仕方がないな。ではまずはこの男を倒そうではないか、主君。』
あぁ、そうだな。なんで俺はこんな雑魚に手こずっていたんだろうな。
「おやおや? どうしましたか? 私のスキルには勝てないと踏んで棄権しますか?」
「ふッ、何を戯言を吐いているんだ、そろそろ雑魚相手に手こずっていては神の名が廃ると思ってな」
「ほぅ? 口だけは達者のようですねぇ、ですが私のスキル『超越』の前ではあなたは私を超えることはできない! 行きますよ!!!」
「ああ、お前は強かったがここまでだ。俺もスキルを使うよ、『光ヲ喰ウモノ』」
そのスキルを発動した瞬間相手の貴族は指の先から消えて行く。
「な、何をした! この俺に何をしたんだ!!!」
「ついに本性表したなぁ、口調が出てるぞ?」
「く、くそがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
だが俺を倒せても彼の方にお前は敗北するだろう。」
そして奴は最後、闇に飲まれてこの世からいなくなる。
彼の方? どういうことだろうか?桜何かわかるか?
『全く我には分からんな、』
だよな、すまない。
そして審判は俺に問う。
「ふ、ファフィル選手、一体何を!?」
「あ? 見ての通りこ退場してもらったんだよ、相手の選手はもういねぇんだ、俺の勝ちだろ?」
「ヒ、ヒィ!」
「何を怖がっているんだ? 優勝は俺だろ?」
「は、はい! そうでございますぅ!!!」
少し腑に落ちないところはあったが、俺は無事記憶を取り戻し、バトルロイヤルでも優勝を成し遂げることができた。
続きは今日の20時ごろに