閑話…細川修平視線
あいつ…鞠山亜耶。メチャ可愛かった。
ただ、俺の事を知らないってのには、落ち込んだ。
まぁ、高橋さんが姉貴の婚約者なんだから、彼女は俺がもらえばいい。そう思いながら、親父の書斎の前を通った。
ドアが少し開いてて、中から親父の怒鳴り声が聞こえてきた。
何があったんだ?
俺は、気になってその隙間から覗き込んだ。
「お前のせいで、首が回らなくなっただろうが!!」
親父が姉貴に怒鳴り付けてる。
「そんなの知らない」
姉貴が、口を尖らせて言う。
「お前が、鞠山財閥の社長令嬢の悪口を言ったせいで、鞠山財閥との仕事全部キャンセルさせられた」
はぁ?うちの仕事の大半は、鞠山財閥から仕事を請け負ってるはず。
「そんなの私の所為じゃない。向こうが勝手に切ったんでしょ」
って……。
ちょっと待って…。それってさぁ、姉貴の所為で仕事が無くなって、社員さんに迷惑かけてるってことだろ。何で、姉貴は気付かないんだ。
「それに、遥さんに相応しいのは、私ですもの」
自信満々で言う。
「高橋さんとの婚約は、解消しただろうが。お前では、彼を支えることなんて無理だ」
親父が言う。
えっ、婚約解消になってたなんて、俺知らなかった。
「それに、修平の新入生代表、お金を積んだんだってな。その金どこから出した?」
はっ、俺の代表挨拶って、姉貴がお金で買ったのか…。
「それは、お父様の預金から…。いいじゃない。修平が代表で挨拶して、細川家に箔がついたなら…」
あっ…。何?
俺にぬか喜びさせたわけ?
新入生代表と言えば、入試で一番成績が良かった人がやるんだろ。
「最初に決まってたのは、鞠山亜耶さん。鞠山財閥の令嬢だった。それをお金で買って、修平にやらせるって…、お前は何を考えてるんだ!」
「いいじゃない。修平だって、喜んでたんだし」
何、それ。俺だけ、何も知らずにノホホンとしてたのか…。
俺は、姉貴に信じてもらえてなかったのか?
「お前こそ、何もわかってない。修平の気持ちも何もわかってないだろ!」
親父の声が、落胆してる。
「修平の気持ちなんて、知る必要ない。早く、遥さんと婚約パーティー進めないと…」
姉貴が、嬉しそうな顔で言う。
何で、そんな顔が出来るんだよ。
俺の気持ちは、関係ないんだ…な。
俺は、書斎のドアを開けた。
「修平!お前、今の話聞いて…」
親父が、驚いた顔で聞いてきた。
「あぁ。全て聞いた。俺、金輪際姉貴を赤の他人と思うことにします!」
俺は、そう断言した。
「俺の為にしたことは、全部姉貴の見栄なんだろ。そんな姉貴は必要ない」
「何よ。私はあんたの為にやったのよ!」
鬼の形相で言う姉貴。
「それは、姉貴のエゴだろ。俺は、嬉しくもなんともない!!」
「ゆかり。高橋さんの婚約者は、鞠山亜耶さんだ。それは、一度足りとも覆す事はない。高橋さんは、元々鞠山会長の唯一認められてる人物。ゆかりが入る隙なんか無い」
親父が、その一言を告げると姉貴が足元から崩れた。
「私が、遥さんの婚約者なんだから…」
何かの糸が切れたのか、その場で泣き崩れた。
あぁ、やっぱり彼女は俺の手に入ることはないんだなぁ。
「修平。お前、会社の建て直し、手伝ってくれるか?学生との両立大変だと思う。ゆかりの尻拭い頼めるか?」
親父が、俺に頼むって事は、よっぽどの事だ。
「俺で手伝えることがあるなら、手伝わせてくれ」
俺は、精一杯手伝うつもりだ。
姉貴が仕出かしたことは許せないが、会社が潰れるのは阻止したい。
社員の事を考えたら、今俺が出来ることで返すしかない。
これから忙しくなるだろうが、やるしかないと腹を括った。
要らないと思ったんですけど、これで彼も救われるかなと思い書きました。今後、出てくること無いと思います。