表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/132

疑問解決

「なぁ、透。前から聞きたいと思ってたんだけどさぁ、何で、そんなに財閥関係に詳しいんだ?」

そう、この前聞こうと思った日は、亜耶が男物の時計をしてて、それに動揺して、すっかり忘れてたんだ。

「あっ…、あ、うんと…」

何か戸惑ってる。

言えないことなのか?

オレの視線に耐えきれなくなったのか『ハァー』と溜め息を漏らす。

何だ?

「気になるか?」

透が確認するように聞いてきた。

オレは、首を縦に振る。

「わかった。ここじゃあ、話しにくいから場所変えよ」

そう言うと、人気の無い方へ歩き出した。


校舎裏(裏門に通じる場所)に移動した。

「何から、話せば良い?」

透がオレに聞いてきた。

「あの人…高橋さんの事。それから、亜耶のお兄さん夫婦の事。お前自身の事」

オレがそう口にすると。

「殆んど全部じゃないか…」

透が、空を仰ぎ見てから口を開いた。


「まずは、俺の家の事から話すな。俺の家は、湯川財閥の総帥で、財界からすれば、五本指にはいるぐらいの家柄だ。俺は、次男だから家を継ぐとかはないが、それなりの令嬢と婚約してる。…で、財界のトップに君臨してるのが、鞠山財閥。鞠山さんが、その孫娘。ここまでは、良いか?」

透が一旦言葉を切ってオレを見る。

オレは、それに頷く。

「彼女の兄嫁が、政界で五本指に入る沢口家のお嬢様。その沢口家の兄嫁になったのが、俺の姉なんだよ。…で、あの家は、資産価値でしか結婚させないガメツイ親父さんなんだ。だから、お嬢様をそう簡単に嫁がせるわけがなかった。政治の道具になるからな。だが、お嬢様が付き合っていたのが、鞠山家の跡取りだったから、直ぐに許しがもらえたんだと思う」

えっ…。

って事は…亜耶って、本当にお嬢様なんだ。

なんだか、現実味がない。

亜耶は、偉ぶったりしない。

だから、余計にそう思えないのだ。

「高橋財閥も、俺ん家と同じ格式の家柄だ。一時、傾きかけては居たが、最近建て直したって話がある。その立役者が、高橋遥さん。彼のずば抜けた戦略で元に…いや、それ以上に利益を出している」

企業の建て直しをあの人が…。

ハッ…。

「高橋家は、ホテル業を生業にしてるからな」

透が、付け足す。

「…で、その高橋さんと鞠山さんが、婚約関係なんだよ。鞠山家のトップにも気に入られてるんだ、高橋さんは」

それって、政略結婚に近いんじゃ…。

「悠磨が彼女を好きなのはわかってる。だけど、あの二人の関係は、悠磨でも解くことは出来ない。早いところ諦めた方がいい」

透が、憐れんだ顔をしてオレに忠告する。

そんなんで、オレが諦めるわけ無いだろ。

だったら、オレ自身があの人以上の事をすればいいことだ。

「それから、彼女がしてる時計だけど、さっきは忘れてくれって言ったが、ペアウォッチ。彼女が男物をしてるなら、何処かの男がもう一つの時計をしてる筈だ」

透が言い切った。

えっ…。

あの時計って、ペアウォッチだったのか。

じゃあ、もう片方って、誰に渡したんだ?

それとも亜耶自身が持ってるのか?

「悠磨。顔色が悪いぞ。休むか?」

透が心配そうに聞いてきた。

「イヤ。大丈夫だ」

オレは、そう答えた。

「それと、余談だがな。入学式に新入生代表挨拶をした奴も細川商事の子息だ」

と付け加えた。

本当に余談だ。

「この学園には、財界、政界の子息令嬢が少なからずいるんだよ。だから、少しでも鞠山家の恩恵を得ようとする人も居る筈。悠磨、彼女を守れよ」

透のエールが、心に染みる。

ってもなぁ……。

正直、そこまで凄いとは思わなかった。

亜耶がいたって、普通の女の子だって、ずっと思ってたけど、透の話を聞くとやっぱりお嬢様なんだなって思わされる。

「まぁ、彼女なら、自分の身ぐらい自分で守るだろうけど…」

また、意味深な言葉を呟く。

ん?

「…試合、応援しなくていいのか?」

急に話を変えやがった。

まぁ、大体の事を把握できたし、亜耶の応援でもするか…。

「ああ、そうだな」

そう言うとオレ達はテニスコートに向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ