球技大会②
体育館の二階の観覧席に行く。
こっちは、熱気で溢れてる。
外の気温より高いんじゃないの?
私は、上から会場を見る。
皆、バテ気味だ。
熱中症が怖いから、スポーツドリンクの差し入れしよう。
私は、体育館を出て、購買部の近くに有る自販機に向かった。
自販機にたどり着くとスポーツドリンクを人数分購入し戻った。
ちょうど休憩に入ったみたいで、コートの外で涼をとってるメンバー。
「お疲れ様。これ飲んでね」
メンバーに声を掛けて、スポーツドリンクを渡していく。
「亜耶、ありがとう」
「鞠山さん、ありがとう」
「うん。皆が頑張ってるから、差し入れだよ」
って、笑顔で返した。
「ちょっと、押され気味だけどまだ盛り返せるよ。頑張ろう」
「「「オー!」」」
梨花ちゃんの言葉で気合いが再びはいる。
メンバーがコートに戻っていく。
梨花ちゃん、ほんとムードメーカーだよね。
この調子なら、大丈夫かな。
「亜耶ちゃん、俺等のは?」
って声がかかり、振り返ると龍也くんがそこに立っていた。
「えっ、あっ、ごめん。今から、買ってくるよ」
私が踵を返して買いに行こうとすると。
「嘘。俺らより女子の方がしんどそうだったから、亜耶ちゃんの気遣いに感謝」
龍也くんが苦笑を浮かべる。
「もう…。で、そっちは勝ったの?」
「勿論。で、亜耶ちゃんの方は?」
「ギリギリ勝ち残ったよ」
「そっか。梨花の方は、2セット終わって、一対一なんだよ。で、外でサッカーの試合が始まるだろ。俺、このまま梨花の応援するから、亜耶ちゃんサッカーの応援に行ってもらっても良い?」
龍也くんが申し訳なさそうに言う。
「うん。じゃあ、後宜しく」
「おお」
龍也くんと別れて、グランドに向かう。
グランドでは、悠磨くんのクラスと対戦してるメンバー。
私が行った時には、中盤までいっていた。
得点は…っと。
ボードを見る。1対0でうちのクラスが勝ってる。
試合を見ていると、リーダーの林元くんの声が、次から次へと指示を出してグランドに響く。
彼の指示の素、他のメンバーがキビキビと動き回ってる。
何このチームプレーのよさ。
うちのクラス、凄いじゃん。
何て、感心しながら見ていた。
「君のクラスすごいな」
不意に声を掛けられて、振り返れば朝の嫌な奴が居た。
何で、上から目線でしかモノが言えないの?
私は、彼を無視してグランドを見る。
あっ、悠磨くんがシュート体制に入ってる。
悠磨くんが蹴ったボールは、ゴールポストの外に流れていった。
おっしいなぁー。もう少しずれてたら、入ってたのに…。
「なぁ。何で無視するんだよ」
後ろに居たはずの彼(細川くんだっけ?)が、横に居た。
「……」
煩いなぁ。
どっか、行ってくれないかなぁ。
「おい。俺の話聞いてるのか!」
こんな人無視するに限る。
「姉貴と高橋さんの結婚決まったって」
突然、遥さんの名前を持ち出され、内心焦りまくってる自分がいる。
「それ、嘘ですよね。遥さんの婚約は、破棄されたって聞きましたけど」
彼の方に向き直りそう告げた。
昨日の今日だし、由華さんが嘘つくわけ無いもの。
「やっと口をきいてくれたな」
ホッとした顔で言われ、仕舞ったと思った。
「なぁ、この間の事、考えてくれたか?」
朝も言ってたけど、何の事?
私が困った顔をしたのを見逃さなかった彼が。
「俺の彼女になるって話」
あぁ、何かそんなこと言ってたっけ…。
「思い出したか?返事、今くれ」
だから、人に頼む態度じゃないよね。
「ごめんなさい。あなたと付き合うことできません」
私は、それだけ言うと悠磨くんのクラスに足を向けた。
彼と話しているうちに試合が終わったからだ。
私は、悠磨くんのスポーツタオルを手にして、彼の方に近づく。
「お疲れ様」
委員会で、何度となく顔を会わせてる女の子が、悠磨くんにタオルを渡そうとしてる。
「あっ、オレはいいや」
悠磨くんが、彼女のを断って、こちらに来る。
気付いてたんだね。
「お疲れ様、悠磨くん」
そう言って、彼にタオルを渡す。
「残念だったね。もう少しだったのに…」
悠磨くんと話してるとさっきのに子が、私を睨んできた。
うっ、怖いかも…。
「仕方ないさ。それより、亜耶の試合は?」
悠磨くんが、“こんな所に居ていいの?”って顔をしてる。
「えっ、あぁ。これからなんだけど…。ちょっと、押してるかなぁ」
ヤバイ、忘れてたよ。
あいつのせいだ!
「亜耶。何か隠してるのか?」
悠磨くんが、訝しげな顔で私を見る。
私は、それに対して首を左右に振った。
「だったら、何でそんなに警戒してるんだ?」
警戒…。
確かに警戒してるのかな。
「悠磨くんを狙ってる女の子に悪いなって…」
だって、あっちこっちから女の子達の視線を感じるんだもん。
「オレは、亜耶に独占されたいんだよ」
悠磨くんが耳元で囁く。
何、その台詞は…。
遥さんに言われたら…。
ボンッ…。
あ、ヤバイ。想像しただけで顔が熱い。
取り合えず。
「もー、悠磨くんのバカ」
って、誤魔化すように言う。
「次の試合、応援してるな」
周りのクラスの人に聞こえないように配慮して囁き声なんだろうなと思いながら。
「…うん」
小さく頷いた。