球技大会①
長くなったので途中で切りますね。
あっという間に球技大会の日を迎えた。
私は登校すると体操服に着替えた。
「鞠山さん、おはよう。あの事、考えてくれた?」
目の前にこの前脅してきた彼が立ち塞がる。
あの事?
って、その前にこの人誰?
頭の中で疑問符が浮かぶ。
う~ん。
「亜耶。どうしたの?」
後ろから梨花ちゃんが声をかけてきた。
「…ん。ちょっと…」
私が困ってると。
「何?細川。亜耶ちゃんにちょっかいかけてるの?」
梨花ちゃんが、彼に文句を言う。
へぇー、細川くんって言うんだ。
まぁ、関わりたいとは思わないけど。
あんな事言ってたんだから、金持ちなのだろうか?
だけど、思い出せない。って事は、最近伸ばしてきてる企業の方なのだろう。
「相沢…。チッ…出直すか」
そう言うと何処かに行ってしまった。
「変なのに目つけられたね」
梨花ちゃんが言う。
「…って言うか、彼何者?」
「あぁ。細川修平。細川商事の御曹子。何かと金で片付けようとする奴だよ」
呆れたように言う梨花ちゃん。
へぇー。
あの人、私の私情を知ってる一人なんだ。
私の裏事情も知ってるかも…。
気を付けないと…。
「亜耶?」
梨花ちゃんが心配そうに見てくる。
「何でもないよ。教室に行こう」
梨花ちゃんを促して教室に向かった。
試合前に委員の雑用を済ませて、試合に集中した。
トーナメントでの勝ち上がり戦。
「亜耶。応援に来たよ」
梨花ちゃんの陽気な声。
「ありがとう」
「彼は?」
彼?
あぁ。
「試合中だと思うよ」
自分の試合の前に確認しておいたから…。
「だったら、見に行こう。まだ、試合始まらないでしょ?」
まぁね。
「ユキ。亜耶、借りてくね。始まりそうになったら呼びに来て。グランドに居るから」
梨花ちゃんが、ユキちゃんに言うと私の腕を引っ張った。
グランドには、学年関係なく女子が終結していた。
クラスの応援の人も居れば、男子の物色してる子も居る。
「亜耶。ここなら直ぐにわかると思う」
テニスコートからわかりやすくグランドが見える場所を取る。
「うん」
試合も盛り上がっている。
「亜耶、応援しないの?」
梨花ちゃんに言われて。
「うん、するよ」
悠磨くんの姿を探す。
いた、グランド中央にスペースを陣取って。
「悠磨くん頑張れ!!」
声を張り上げて応援する。
その声に他の子が振り向いた気がするが気にしない。
だって、彼は中学の時からそうだったから…。
私の声でスイッチが入ったのか、動きがよくなった。
ザッシュ!
ボールがゴールに吸い込まれた。
周りが、彼を称える声をあげてるなか。
「すごーい。悠磨くん!」
って、声をあげていた。
「亜耶ちゃん、試合始まるよ」
ユキちゃんが呼びに来た。
「はーい」
私は、テニスコートに足を向けた。
久し振りにラケットを握った。
この感触、懐かしい。
軽く素振りをする。
しっくり来る。
よし…。
今日は、クラスのために頑張ろう。
そう思って何度か素振りを繰り返してた。
フと視線を感じて、その方を向いた。
そこには、体操服姿の生徒に混じって、スーツ姿で教師のごとく振る舞う遥さんの姿が…。
何でいるの?
遥さんが、私の視線に気付いたのか、左腕を持ち上げて、時計を見せてきた。
あっ……。使ってくれてるんだ。
それだけで、顔がほころんだ。
『あ・り・が・と・う。がんばれ』
ゆっくりと口を動かして私に解るように口にした。
それに頷くと彼は立ち去った。
見て行ってはくれないんだね。
でも、それは仕方ないよね。彼は、今忙しいんだから…。
私は、自分の腕に着けている時計を触った。
彼と繋がってると思うと胸が熱くなる。
よし、頑張ろう。遥さんも応援してくれてるんだから…。
団体戦だから、4コートのうち2コートづつで、試合が進められていく。
私は、シングルなのでダブルスの後。
ベンチに座って、試合を応援する。
フと顔をあげると視線があった。
私は、彼のところに行く。
「悠磨くん。来てくれたんだ」
私は、笑顔で言う。
「うん。俺らも時間が空いたから、応援に来た」
悠磨くんも笑顔で返してくれる。
「鞠山さん。試合頑張って」
悠磨くんの隣に居る男の子が言ってきた。
確か…湯川財閥のご子息だったよね。
頭の隅に各財閥のご子息を引っ張り出して、確認してから。
「ありがとう、湯川くん。じゃあ、そろそろ始まるから、後でね」
私は、そう言って二人に背を向けてコートに向かった。
う~ん。対になってる。
これは、頑張るしかないか…。
クラスのために。
自分の頬を両手で叩き、気合いを入れ直して、エンドラインについた。
ラリーが続き、緊張感が増していく。
こんなところで負けたくない。
私は、甘く打ち上がったボールをスマッシュで打ち返した。
それを見越して、その場に居た相手が打ち返してきたけど、エンドラインを越えアウトになった。
「やった!!」
つい、ガッツポーズして仕舞った。
う~ん、気持ち良い。
「凄い、鞠山さん。一回戦突破だよ」
クラスのメンバーも大喜び。
うん、私も嬉しい。
そうだ、悠磨くんたちにお礼言わなきゃ。
彼らのところに向かう。
「悠磨くん、応援ありがとう」
笑顔でそう伝えた。
「いや。オレも亜耶が応援してくれたから、ゴールできたようなものだし…」
そう言って、私の頭を撫でる。
なんか、違和感が…。
気付かない振りしよ。
「この次の試合、亜耶のクラスと当たるんだけど、応援してくれるか?」
悠磨くんの不安そうな顔。
「うん。ちゃんと応援してるよ。声援はできるかは、難しいけど…ね」
って、自分のクラス応援しなきゃね。
「そうだよな。まぁ、心の内でいいから、応援宜しくな」
少し寂しそうな顔を見せる。
これって、もう一度見る事になるのかなぁ。
「悠磨。そろそろグランドに戻らないと」
湯川くんが、悠磨くんを呼びに来た。
「あぁ、わかってるって…。じゃあ、またな」
私の頭をポンと軽く叩いた。
「うん」
どうしよう…。
梨花ちゃんの応援しに行くって約束してるんだよね。
悠磨くんの方は、これからだよね。
じゃあ、先に梨花ちゃんの応援しに行こう。
私は、体育館に移動した。