痛み
翌日。
何時ものように待ち合わせ場所へ行く。
悠磨くんが先に来ていた。
「おはよう、悠磨くん」
私は、悠磨くんに声をかけた」
「あぁ、おはよう。亜耶」
上の空の悠磨くん。
どうしたんだろう?
悠磨くんが動こうとしない。
「悠磨くん、どうしたの?行かないと遅れるよ」
私が声を掛けると。
「ん、あぁ」
心ここにあらずって感じ。
どうしたのかなぁ?
何か悩み事?
私に話してくれれば良いのに…。
もしかして、私じゃ頼りになら無いから言えないのかな?
話しかけても。
「うん」
ってしか返ってこない。
本当にどうしたんだろう?
教室に着くと梨花ちゃんが龍哉くんと楽しそうに話してるのが、目に入った。
相変わらず、仲が良いな。
何て思いながら、二人を見ていたら、梨花ちゃんが私に気付いて。
「おはよう、亜耶」
って、こちらに来る。
「おはよう、梨花ちゃん」
席に着き、話し出す。
「亜耶。その時計カッコいいね」
梨花ちゃんが、気付いて言ってくれた。
「変じゃないかなぁ?」
本当は、不安だったんだよね。
「全然。亜耶にぴったりだよ」
梨花ちゃんが、真顔で答えてくれたからホッとした。
「亜耶」
って、呼ばれた気がして、その方に目を向けた。
そこに居たのは、さっき別れたばかりの悠磨くんだった。
「悠磨くん」
どうしたのかなぁ?
険しそうな顔してるけど…。
「ちょっと、行ってくるね」
梨花ちゃんに一言言って、席を立ち悠磨くんのところに行った。
廊下の隅に移動する。
「どうしたの?」
悠磨くんの険しい顔つきは、継続中だ。
「なぁ、亜耶。その時計…」
悠磨くんの視線が、私の左腕にされてる時計に向いている。
気付いちゃった…。
でも、これがペア物だって知らないよね。
「ん?あぁ、これ。自分で買ったの。昨日、お義姉ちゃんと買い物に行った時に気に入っちゃったから…」
嘘はついてないよね。
本当の事だから…。
でも、罪悪感が沸き起こる。
「そうだったんだ」
なんだかホッとしてる悠磨くん…。
険しかった顔つきも何時もと変わらない顔に戻ってる。
ズキッ…。
胸が、痛い。
この痛みは、嘘ついてるからだよね。でも、本当の事は言えない。
「変かな?」
私は、オドオドしく聞いてみた。
「変じゃないよ。亜耶らしいよ」
って言葉が返ってきて、ホッとした。
その時。
キーンコーンカーンコーン……。
チャイムが鳴り響いた。
「じゃあ、オレ戻るな」
「あっ、うん。また後でね」
私はそう言って、手を振る。
悠磨くんも手を振り返してくれて、教室に戻っていった。
「亜耶の彼、カッコいいね」
教室に入り席に着くと、梨花ちゃんがそう言ってきた。
「…えっ、そうかなぁ」
そう答えるしかなかった。