なんで、コイツが…
「悠磨。昼飯食っていこうぜ」
練習を終えて、着替え終わったオレに透が誘ってきた。
亜耶も居ないことだし、まぁいっか。
「いいぜ」
オレは、そう返事を返した。
校門に向かって歩いてると。
「なぁ、あれ。鞠山さんじゃねえ。その隣に居る女性って、確か沢口財閥のお嬢様じゃ…」
透の視線が門に…亜耶に隣に居る女性に向けられていた。
「あぁ、亜耶の義理のお姉さんだよ」
オレは、普通に答えた。
って……。
ちょっと待て。今、聞き捨てならぬ言葉を言ってなかったか?
「透、今、何て…」
「えっ、ああ。沢口財閥のお嬢様」
は?
財閥のお嬢様?
何で、そんな人が亜耶のお兄さんと結婚できたんだ?
亜耶の家って、一般家庭と何ら変わらなかった筈。
「それより、何で透がそんなこと知ってるんだよ?」
オレは、疑問に思った事を口にした。
「だって、俺の姉貴の嫁ぎ先だから…」
何でもないように言う。
何?
姉貴の嫁ぎ先?
「お前、それって遠回りで亜耶と親戚って言ってるようなもんだぞ」
オレの言葉に透が、不思議そうな顔をする。
「亜耶のお兄さんのお嫁さんが、今の人なんだよ」
オレが、簡単に説明すると。
「はー?ってことは、巡り巡って、鞠山家と縁が結ばれてるってことか?」
透が、なにか考え込んでいる。
「なぁ、鞠山さんって、鞠山財閥の孫娘ってこと?」
突拍子もないことを言う透。
「何で、そうなるんだよ」
「あの沢口財閥のお嬢様の嫁ぎ先が、鞠山のお兄さんってことはさぁ、それなりの資産があるから嫁がせたわけで……。そうじゃなきゃ、成立しないんだよ。あの親父さんが簡単に嫁になんか出すわけ無いだろうし…」
透は、一人ぶつぶつと言い出した。
何の事だよ。
「悠磨。悪いと思うけど、鞠山さん婚約者居るよ。確かえっーと…」
「高橋遥さんだろ」
オレは、透の言葉を遮った。
「そう、高橋遥さん。…って、何で知ってるんだ?」
驚いた顔をする透に。
「本人自ら自己紹介を受けたから…」
オレは、あの時のことを思い出した。
「ふ~ん。まぁいいや。彼もここの卒業生だって知ってるか?相当優秀だったみたいだ。しかもファンクラブもあったらしい」
透が、彼の事を口にする。
そんなに人気があったんだ。
だけど。
「今、亜耶と付き合ってるのはオレなんだよ。あの人じゃないんだ」
オレが、亜耶の恋人なんだ、あの人ではない。
「まぁ、せいぜい頑張ることだな」
透が、憐れんだ目でオレを見ていた。
情報通の透くん。
何処から手にいれてきてるんやら……。