家族水入らず…?
「亜耶ちゃん。今日は、和食の美味しいお店だよ」
助手席座ってる由華さんが、振り返って言う。
和食なんだ。
「楽しみにしててね」
クスクス笑う由華さん。
「亜耶、最近何かあったか?」
お兄ちゃんが、ハンドルを握りながらルームミラー越しに聞いてきた。
何かとは?
私が首を傾げると。
「近況報告ってやつ。二ヶ月会ってなかったから、気にしてるんだよ雅くんは」
由華さんが、ニコニコしながら付け足した。
そっか。前はよくお兄ちゃんに報告してたからね。
「例年のごとく、クラス委員長に抜擢されました。因みに悠磨くんもクラスは違うけどクラス委員長です。後、新しい友達ができたよ。それから陸上競技会にリレーの選手として出ることになった」
私は、一気に言い尽くした。
「へー。凄いね、亜耶ちゃん」
感嘆な声をあげる由華さんに対して。
「でも、亜耶ってマネージャーだったんじゃ…」
冷静に聞いてくるお兄ちゃん。
「うん。でも、女子部の選手人数が足りなくて、出ることになった」
私の言葉にお兄ちゃんが、納得するように頷いた。
険しい顔はしてるけど…。
「応援に行くから、頑張れよ」
「もちろん、あたしも行くからね」
由華さん、今日はやたらとご機嫌だ。
ニコニコ笑顔が崩れない。
「はい。よろしくお願いします」
素の笑顔を受けて、笑顔で返した。
車で辿り着いたのは、純和風のお店だった。
中に入ると、落ち着きの有る雰囲気で、個室はすべて畳になっていた。
お兄ちゃんが、店員さんに名を告げると案内された。
そこには、両親が先に座っていた。
「遅かったね」
お母さんが、私たちに声を掛ける。
「由華が、亜耶に抱きついてその場から動こうとしなかったからな」
お兄ちゃんが苦笑しながら言う。
「えっ、だって亜耶ちゃんが“お義姉ちゃん”何て言うから、つい嬉しくて…」
由華さんが、本当に嬉しそうに言う。
そんなに嬉しかったのか。
これから、いくらでも呼ぶのに…。
そう思いながら、お母さんの隣に座った。
「今日は、楽しかった?」
お母さんが聞いてきた。
「うん。久し振りに四人に会えたことと変わってなくてホッとした」
私の言葉に胸を撫で下ろすお母さん。
何かあったのかな?
「ねぇ、母さん。亜耶、陸上競技会に出るって知ってた?」
お兄ちゃんが、確認するように聞いてる。
「それは、初耳だわ」
まぁ、昨日突然決まった事だからね。
「何に出るの?」
「リレーだよ」
「あらまぁ。大役だね。勿論応援に行くわよ。ねぇ、お父さん」
お母さんの横に座るお父さんに同意を求める。
「当たり前だろ。娘の勇姿を見ないでなんとする」
お父さんまで意気込んでいる。
ハァー。
家って、こんなに熱い家族だったけ?
「勿論、高橋先輩も来るんでしょ?」
由華さんが、爆弾を投下した。
「えっ、さぁ。来ないんじゃないかなぁ…」
私は言葉を濁す。
「えっ、何で?高橋先輩、亜耶ちゃんの行事にことごとく来てたって、雅くんから聞いてるよ」
由華さんが、お兄ちゃんを見てから私をもう一度見てきた。
「遥は、忙しくて来れないと思うが…」
お兄ちゃんが、透かさずフォローしてくれた。
「そうなんだ。体壊さなければいいけど…」
心配そうな顔をする由華さん。
「取り敢えず、注文しましょう。それからでもゆっくり話せますからね」
ニコヤカに言うお母さんにメニューを渡された。
「亜耶ちゃん。明日、買い物に行かない?」
由華さんに言われて戸惑う。
「明日は、練習が…」
「その練習が終わってからでもいいよ」
由華さんが、ニコニコしながら言う。
う…。
これは、引いてくれないパターンか。
「解りました。午後からの待ち合わせでいいですか?」
私の言葉に。
「じゃあ、お昼がてらで校門で待ってるね」
花が咲いたような笑顔で由華さんが言った。