距離感
散々楽しんだカラオケ(途中変な雰囲気になったが…)を出て、近くにあるファミレスに入った。
六人掛の場所に案内をしてもらい、互いの彼の前に座る。
私の右側に姫依ちゃん、左側に瑠美ちゃんが座る。
メニューを見ながら、何にするか考えた。
そう言えば、今日はお兄ちゃんと食べに行くって言ってたっけ…。だったら、ドリンクだけの方がいいか…。
何て思いながら、捲っていくとデザートのページに辿り着いた。フと目についたのが、季節のフルーツタルト。フルーツが、これでもかってふんだんに盛ってあって、食べてくださいって言ってるみたいで、誘惑に負けそのタルトと紅茶を頼むことにした。
各々決まったようで、店員さんに注文すると喋りだした。
「亜耶。学校での悠磨くんってどう?」
姫依ちゃんが聞いてきた。
「どうって?」
逆に聞き返しちゃったよ。
「中学と同様で、人気あるでしょ?」
う~ん。
「今のところわかんないな。クラスかなり離れちゃったし…。唯一の接点が、委員会と部活ぐらいだから…」
私の言葉に二人が驚いた顔をする。
そんなに驚くこと?
「今度の球技大会でわかるんじゃないかなぁ?」
クラスでは、誰も悠磨くんの事言う人居ないし…。
「ちょ…、亜耶。そんな呑気に構えてていいの?」
姫依ちゃんが焦りながら言う。
なんで、焦る必要があるんだろう?
「別にいいんじゃない。悠磨くんが亜耶大好きなの一目瞭然なんだし…」
留美ちゃんが姫ちゃんに言う。
ん?
そんなにベタ惚れしてる?
私には、わかんないや。
「部活って、陸上?」
「…うん。マネージャーだったんだけど、今回だけリレーの選手」
私は、そう二人に告げる。
「今回だけって?」
「ん。女子部人数足りなくて、出ることになったの」
渋々だけど。
「亜耶、足早いもんね」
留美ちゃんが思い出したように言う。
「うん。そういやそうだったね。混合リレーやスウェーデンリレーに選ばれてたもんね」
姫ちゃんも思い出したように言う。
うん。そうだったね。気付いたときには、リレー枠に入ってた。
そういや、あの時の体育祭の時、お兄ちゃんに無理言って百メートル走に出てもらったっけ(遥さんも道連れで)…。
あの二人、必要以上に人を引き付けていたっけ…。
思いに耽っていた。
「亜耶。さっきから携帯鳴ってる」
留美ちゃんが小声で言ってきた。
「…あっ」
私は、慌てて鞄の中を探って携帯を開く。
ディスプレイには“お兄ちゃん”と表示されていた。
私は、それを手にして。
「ちょっと外すね」
店の外に出た。
外に出ると着信が切れて、直ぐにかかってきた。
「もしもし」
私は、そのまま通話ボタンを押して出た。
『もしもし、亜耶?今何処に居るんだ?迎えに行くから、場所教えて』
お兄ちゃんの優しい声。
「駅の近くにあるファミレス。前、お兄ちゃんと行った場所だよ」
私がそう言うと。
『あそこか…。今、近くに居るから準備しとけよ』
お兄ちゃんはそれだけ言って、通話を切った。
私は店の中に戻り。
「ごめん。私この後、用事があるから、先に帰るね」
椅子に置いておいた鞄を掴んで、財布を取り出して、自分の分の支払いをテーブルに置く。
「じゃあ、また遊ぼうね」
一言だけ言って店を出た。
店を出ると入り口で由華さんが立っていた。
「亜耶ちゃん。久し振り」
元気な声と笑顔に迎えられた。
「お久し振りです、お義姉さん」
私も笑顔で返した。
一瞬驚いた顔をして、抱き締められてた。
「何。この可愛い娘」
って、頭をワシャワシャとメチャクチャに掻き回された。
「由…お義姉ちゃん…」
由華さんにされるままで居る私。
「由華。いい加減やめてやれよ」
苦笑交じりでお兄ちゃんが言う。
「えーっ。もっといじりたい」
由華さんが、駄々をこねる。
「うん。わかってるけど、ここ店の入り口だからね、移動しよ」
「はーい」
由華さんは、素直に頷いて、私の腕に絡み付く。
「行くよ、あやちゃん」
って、引っ張り出す。
私は、目でお兄ちゃんに助けを求めたけど…。
“ごめん、無理”って口パクで言ってきた。
うっ…。
また、由華さんに振り回されるのか…。
心の中で溜め息をついた。
76話 割り込み投稿してます。
そちらも見てくださいませ。