突然の訪問者
「久し振り、遥」
そう言って、突然部屋に入ってきたのは、雅斗。
「まぁ、久し振り」
俺は、そう言いながら応接用のソファーを勧めた。
「お前の株、大分揚がってきたみたいだな」
突然雅斗が口にした。
マジか…。
「それでだ。お爺様…会長が、お前に会いたいと言ってるんだが、お前の都合は?」
雅斗が意味深な言葉を発する。
「何だ?本当に急だな」
俺は、手帳を取りだし今日の予定を確認する。
この後は、何も入って無いから、大丈夫か…。
「まぁな。何時もの事だ。それから、亜耶の事も踏まえてるんじゃないか?」
それもあるか。
「お前、亜耶の卒業式と入学式来てただろ?」
「気付いてたのか」
雅斗に会わずに帰ったんだけどな…。
「気付くも何も、お前自体が目立つんだよ」
アハハ…。
悪目立ちか?
「そっか…」
はぁ…。
「…で、本題。お前、今でも亜耶の事」
「好きだよ。紛れもない事実だ。亜耶が居るだけで、心が休まるんだ」
俺の言葉に。
「それは解ってるって。お前のその優しい眼差しは、亜耶の時にしか見せないもんな」
雅斗が呆れたように言う。
そんなに違うか?
「まぁ、それだけ、亜耶を大切に思ってるってことだろ」
雅斗が苦笑する。
亜耶は、俺にとって大切な存在だからな。
「…んで、今から時間大丈夫か?」
雅斗が確認するように聞いてきた。
「ああ、御大がお呼びなら時間は作るよ」
「じゃあ、行くか…」
雅斗が立ち上がると俺も続いて立ち上がった。
机の横に置いてある鞄を掴む。
そのまま部屋を出た。
「遥。出掛けるの?」
廊下に出ると姉さんが声を掛けてきた。
横に居る雅斗に軽く会釈する。
「うん。鞠山財閥の会長に呼ばれてるみたいだから、ちょっと行ってくる」
俺の言葉に姉さんが、一瞬驚いた顔をしたが、直ぐに平常心を取り戻した。
「そう…。行ってらっしゃい」
笑顔で、送り出してくれた。
「遥。お前の姉さん、ビックリしてたな」
雅斗が、クスクス笑ってる。
「まぁ、そうだろう。まさか、一流財閥の会長に呼ばれるなんて、滅多に無いことだからな」
「…一流……か」
雅斗が、何処と無く遠い目をして呟いた。
雅斗からしたら、そうかもしれないが、俺等からしたら一流…名門としか言いようがない。
「なぁ、遥。お爺様の話はこれからの亜耶とお前の関係についてだと思う。お前の想いを存分にぶつければ、必ず認めてくれるさ。お前の九年間の想いをな」
雅斗が、静かに口にしていた。
「あぁ、わかってる」
俺は、雅斗の言葉にそう答えていた。