不安
何で、委員会なんかあるんだよ。
オレは、教室を出て委員会の集合場所へ向かった。
教室では、クラス毎に席が決められていて、オレはその場所に座った。
ハァー。
今日は、何の話だろう。
入学してから、頻繁に召集がある。こうも召集されたら、放課何てあってもないもんだ。
そう思いながら、始まるのを待っていた。
「悠磨くん、酷いよ。同じクラスなのに置いていくなんて」
声をかけてきたのは、泉だった。
「エッ…、悪い」
俺は苦笑を浮かべながら、謝った。
って言うか、お前と歩いていたら、亜耶に誤解されそうだから、避けてたんだよ。
何て言える筈もなく、泉の話を聞いてた。
今日の召集、二週間後に行われる球技大会の事だった。
主にルールって言うか、各球技に対して二人までの経験者を起用できること。球技毎に部の審判を出すこと。
その二点だけの注意事項とメンバー表を書く用紙を渡されて、解散となった。
「悠磨くん、悠磨くん」
泉がオレに声を掛けてくる。
「ん?」
「悠磨くんは、何に出るの?」
人懐っこい笑顔を向けてくる泉。
「サッカーかな。人数集まりそうにないし…」
オレが、何気に言うと。
「サッカーか…。応援するね」
彼女はそう言いながら、オレの隣を歩く。
何だろうな?
って、そういや亜耶見てないや。
同じ委員なんだから、声くらい掛けてくれるだろうに…。
「悠磨くん、どうしたの?浮かない顔して」
泉が心配そうに聞いてくる。
「いや。何でもない」
冷静の態度で答えた。
放課後。
何時ものように部活に参加するが、何かが違った。
何時もならグランドの隅でマネージャーの仕事をこなしているはずの亜耶の姿がなかった。
亜耶は、どこに?
オレは不安になり、辺りを見渡した。
「渡辺、どうした?」
仲の良い先輩が、声を掛けてきた。
「あっ、亜耶知りませんか?」
オレが聞くと。
「何。愛しの彼女が傍に居ないと不安か?」
って、茶々を入れてくる。
「イヤ…あの、その…」
慌て出すオレに。
「亜耶ちゃんなら、あそこ」
楽しげに答える先輩。
先輩が示した場所に亜耶が居た。
何で、練習してるんだ?
しかも、トラックで…?
「あれ、もしかして聞いてなかった?」
オレが?を頭に浮かべてると。
「女子部人数足りてなくて、リレーにだけ亜耶ちゃんが駆り出されてるんだよ」
淡々と先輩が言う。
エッ…オレ、何も聞いてない。
「その顔は聞かされてなかったか?」
先輩が苦笑してる。
「まぁ、その話が決まったの今日の昼過ぎだったから、お前に話せなかったんだろ」
オレを安心させるための言葉なんだろうけど、、それは見事にスルーされた。
亜耶の真剣な顔が、誰よりも引き付けてならない。
あいつが大会に出たら…。
「おいおい、渡辺。何て顔してるんだよ」
へっ…。
「今にも泣きそうな顔してるぜ。仮にも亜耶ちゃんの彼氏なら、もっと胸張れよ。堂々としてればいいんだよ。“オレの彼女だ”ってさ」
先輩の言葉が胸に来る。
そう出来たらどんなに良いんだろう?
だけど、何時か離れていくような気がして不安で仕方ないんだ。
「ほら、俺等も練習しようぜ」
先輩がオレの肩をポンと軽く叩いた。
オレは頷くと無心に走り出した。