弱気
あ~あ。
オレ、もしかしたら嫌われたかも……。
あんなことするつもり無かった。
…けど、オレだけだったのかなって思ったら、気が付いたら抱き締めていた。
あの華奢な体を……。
明日、どんな顔して会えばいいんだ。
オレが、頭を抱え込んでいると。
「何やってるんだ?デート後なのに暗いヤツだな」
ノックも無しに部屋に入ってくるのは、一人しか居ない。
「勝手に入ってくるな!」
って、怒鳴ってた。
「デートは、楽しかったんだろ?」
兄貴が、からかうように言う。
「まぁな」
亜耶のはしゃいだ顔を思い出す。
すると自然に口許が綻ぶ。
「じゃあ、何で落ち込んでるんだ?」
兄貴が、不思議そうに聞いてくる。
一様、兄貴の方が経験豊富だろうから、オレの思ったことを打ち明けてみるのも良いのかも…。
そう思ったら、自然と言葉が紡がれた。
「記念にブレスレットを買ったんだ。別れ際に渡したんだけど、オレだけが渡して、彼女から何も貰わずにその代わりに彼女を抱き締めたんだ」
オレは、さっきの光景を思い出しながら言う。
「ふーん。それで?」
他人事だと言わんばかりの兄貴に少し、ムッとする。
「オレだけが、彼女の事を好きなのかなって思って…」
気弱なオレってらしくないかも……。
「それって、悠磨の我が儘じゃねぇの?一緒に居て楽しかったんだろ?それ以上を求めてる自分が居るんだろ?オレだけを見て欲しいって欲が出てるんだと思うぞ」
兄貴が、真顔で答えてくれた。
「俺だけがって思ってるってことは、悠磨だけじゃなく誰もが持つ思いだと思うぞ。それだけ、悠磨が彼女を想ってるけど、彼女から見返りを求めてしまうのは、いた仕方ないと思うが…。求めすぎも良くないと俺は思うぞ」
兄貴の言葉に考えさせられた。
そこに行き当たるまでに兄貴にも色々在ったんだろう。
「好きになるって、難しいよな。最初は、見返りなんかいらない。ただ傍に居たいって思って付き合い始める。すると自分だけを見て欲しいって欲張りになる」
確かにそうだ。
付き合う前は、ただ傍にいたい。近くで見ていたいって思っていた。付き合い始めたら、自分だけを見て欲しいって、自分だけに他の人に見せない素顔を見せて欲しいって…何時の間にか欲張りになってた。
「彼女を縛り付けるのは良くないと思う。彼女の想いを大切にすることも大事なんじゃないのかって、俺は思う」
兄貴の考えなのだろう。
オレも、その考えに納得できた。
「そうかもしれない。オレの想いを押し付けすぎても彼女が困るだけだもんな」
兄貴が、オレの言葉に頷いた。
「お前ら、付き合い始めたばかりだろ?焦る必要ないだろ」
兄貴に諭されて、オレはそうだよなって、自分で納得した。
付き合い初めてまだ3ヶ月。
急ぐ必要なんて無いんだっと自分に言い聞かせた。