水族館デート②…亜耶編
人気があるショーだけあって、座る席が見当たらない。
「流石にないね」
ちょっとで遅れちゃったかな。
何て思いながら、辺りを見渡す。
「まぁな」
素っ気なく答えながら、席を探す悠磨くん。
暫くして。
「亜耶。あそこ空いてる」
って、悠磨くんが指を指しながら移動する。
っプールから遠い場所だった。
まぁ良いか。
座れるし、巨大モニターに撮し出されるんだし…。
そして、席に着いたとたん進行役のお姉さんが出てきて、挨拶し出す。
「座れてよかったね」
周りの邪魔にならないように悠磨くんにそう呟いた。
「そうだな」
冷静沈着の言葉が返ってきた。
飼育委員の命令に忠実なイルカ達のパフォーマンスに圧倒させられて、興奮せずにはいられなかった。
悠磨くんの前だというのに恥ずかしかった。
「ねぇねぇ、悠磨くん。イルカさん達、凄かったね」
興奮冷めやらぬ勢いで、悠磨くんに言う。
「そうだな」
悠磨くんが静かに言う。
あれ?
つまらなかったのかな?
でも、口許は綻んでるから、違うのかな?
それから、少し遅めの昼食を摂ってから、もう一度館内を見て歩く。
最後に土産物に寄った。
私の目入ってきたのは、ストラップ。
それも、海の生物の(当たり前か)。
今度、あの四人にも会うから、お土産として、買ってもいいよね。
後、梨花と龍哉君にも…ね。
「あっ、これ、可愛い。悠磨くん、これ買ってきても良い?」
私は、ストラップを6個手にして、悠磨くんに声をかける。
「えっ、あ、うん」
ちょっと驚いた顔をして、直ぐに手を離してくれた。そのままレジに並んだ。
待ってる間に、店内を改めて見渡せば、見たことのあるぬいぐるみに目が止まる。
あのイルカのぬいぐるみ、前に遥さんに買ってもらったものと一緒だ。
って、ダメだ、今は遥さんの事は封印しなきゃ。
首を振って、自分を戒める。
支払いを済ますと、店内を見渡した。
悠磨くんが、レジに並んでいたから、店の外で待つことにした。
暫くして、悠磨くんが出てきた。
「悠磨くん。何買ったの?」
「ん?今は、まだ内緒」
って、悪戯っ子みたいな笑顔を向けてきた彼に少し頬を膨らませた。
教えてくれてもいいのに……。
「ほら、帰ろ。余り遅くなると心配するだろ」
って、悠磨くんが私の手を掴んで歩き出した。
家まで送ってもらっい。
「今日は、楽しかった」
私は、自然と笑顔になる。
「オレも、楽しかった」
悠磨くんが、笑顔で言う。
「本当?」
余り、楽しそうに見えなかったから、もう一度聞いてみた。
「うん、本当に楽しかった。亜耶の意外な一面が見れたし…」
って、意地悪な顔を見せる。
あっ、うん。
見せちゃったね。今頃になって、恥ずかしくなってくる。顔が、熱い。
「じゃあ、また明日ね 」
って、恥ずかしくて家に入ろうとしたら、腕を捕まれた。
振り返ると……。
「亜耶、これ……」
って、さっきのお土産屋さんの袋を出してきた。
「へっ…」
思わず変な返事しちゃった。
「着けてくれたら、嬉しい」
そう言った悠磨くんの顔が赤い。
私は、それを受け取って。
「ありがとう、悠磨くん」
笑顔でお礼を言う。
「私、何もないや…」
あの時、お揃いの何か買っておけばよかった。
後悔してる自分がいる。
「気にしなくてもいいよ。オレの自己満足で買っただけだから…」
寂しそうな瞳を伏し目がちにする彼。
「…でも、悪いよ」
私だけもらうなんて…。
「オレは、これでいいよ」
悠磨くんが一歩近づいてきて、ギュッと抱き締められた。
エッ…。
何で急に…。
戸惑いを隠せない…。
「ゆ…悠磨くん」
悠磨くんを見上げる。
「…もう少しだけ、このままで…」
悠磨くんの切な気な声が耳元で囁く。
遥さん以外の男の人の腕に抱き締められるのが、初めてで、どうしたら良いのか分からないまま、私は、されるがままで居た。




