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退職届

亜耶の入学式から一ヶ月。

随分と会社の方も持ち直してきた。


さて、前の会社に退職届を出しに行かなければ……。

今まで、忙しくて出しに行く暇がなかった。

最も遣り甲斐のある仕事だっただけに辞める気は全然なかったんだよなぁ。

俺は、退職届を書いた。

それを手にして、部屋を出た。


廊下に出ると丁度良いタイミングで多香子姉さんが居た。

「多香子姉さん。ちょっと抜けて良いかな?」

「えっ、ちょっと遥。これから会議だって…」

戸惑う姉さんに。

「すぐ戻るから、先に進めておいてください」

それだけ言って、歩き出した。

「遥が居ないと進められないのわかってるでしょう!」

って声が背中から聞こえてくるが、思った時に出さないと行けなくなる。

背中の声を無視して、歩いた。



行き先は、目と鼻の先。

歩いて十分足らずで着く。

同じエリナ内にある会社。

久し振りに足を踏み入れた。

「高橋さん。体の方は、もう良いんですか?」

受付の子が俺に気付いて声をかけてきた。

体調?

あぁ、そうか。

体調不良で休んでたっけ。

「あっ、はい。ご心配かけました」

それだけ言って、自分の居た部署に向かう。

すれ違う社員の方々に声を掛けられ、その度にお礼の言葉を返す。

う~ん。思ってたい以上に心配されてるなぁ……。

苦笑を漏らすしかなかった。


四月を過ぎてしまってるから、新卒の社員も居るなかを馴れたように歩く。

周りが、ざわついてるが気にせずに部長席に向かう。

「おっ、高橋。体調はもう良いのか?」

久し振りに会う部下にこんなに気さくに話す部長もいないよなぁ。

何て思いながら。

「はい。お陰さまで、良好です」

苦笑を交えて答える。

「部長、お話が…」

俺の言葉を察したかのように。

「わかってる。それを出しに来たんだろ?」

と俺が手にしてるものを見て、寂しそうな顔をして言う。

「いずれ、離れていくと思っていたが、こんなにも早くなるとはなぁ…」

!!

何時から、部長は気がついていたんだろう?

「送別会は来週の金曜日で良いか?その方が、高橋も都合着くだろ?」

茶目っ気たっぷりで言う部長。

来週の金曜日?

俺は、手帳を取り出して確認する。

たまたま、予定は入ってない日だった。

「空いてるなら、何時もの場所に十九時な。お前らも、忘れるなよ。来週の金曜に何時もの場所だ。いいな」

部長の声が部内に響く。

「はい」

全く、結束力のある部署だよ。

「それでは、これで失礼します」

俺が言うと。

「式とか決まったら、連絡くれよ」

って、ニコニコして言う。

あははは……。

気が早いですって…。

早くても、後二年は先ですよ。

心の中でそう呟きながら、自分が使っていたデスクに向かった。

私物を手にしてた鞄に突っ込んだ。


「今まで、ありがとうございました」

俺は、出入り口で頭を下げた。



なんだか、清々しい気分だ。


さてと、会社に戻って仕事するかな。

俺のいるべき場所で……。


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