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思惑

気が付けば今日は、雅斗と沢口の結婚式。

どんだけ忙しい日々が続いてるんだか……。


ハァー。

俺は準備をしながら溜め息を漏らした。



ヤベー、遅れる。

俺は、披露宴だけじゃなく式にも呼ばれてるから急がないと……。

雅斗の親友ってだけで呼ばれるんだから、ありがたいよ(これが、会社絡みだったら厄介だ)。

…っと、早く家を出なければ……。

truuuu…truuuu……。

ったく。

誰だよ、こんな時に……。

「はい」

『遥、今日時間あるか?』

隼人兄からだ。

出るんじゃなかった。

「無い。今から出掛けるんだよ。親友の結婚式だから、一日がかりだから、兄貴達の相手できない」

俺は、そう言いながら家を出た。

『細川商事のお嬢が、お前に会いたがってるんだが…。少しでも時間作れないか?』

はぁ?

何だよ。

あのお嬢、まだ諦めてないのか?

「今日は、無理なんだって…。一番大事なお得意様の息子の結婚式だって言ってるんだよ!」

怒気を含んで答える。

『それって、鞠山家のか?』

兄貴が、一瞬戸惑いながら聞いてくる。

「そうだよ。本人直々に招待状を渡されたよ。今も、遅れそうなんだよ」

大通りに出てタクシーを捕まえて、式場を伝えて向かってもらう。

『はぁ?普通は、披露宴からだろ?』

って、驚きの声が飛んできた。

「だから、雅斗とは大親友だって言っただろう。お嬢の事は、兄貴に任せたから」

それだけ伝えると電話を切った。

切る前に何か言ってたが、無視した。

鞠山家の名を出せば、兄貴は引き下がると思った。

だから、説明だけで電話を切った。


鞠山家の結婚式に呼ばれ得る企業は多いだろ(披露宴の方は)。

式の方から出てるのは、少いと思う。

そのなかに俺は、入ってるんだと兄に伝えることによって、お嬢の相手は出来ないんだと遠回しで言ってるようなものだ。

それに気付かない兄貴じゃない筈。

そう思いながら、シートに体を預けた。


何とか、間に合ったみたいだな。

俺は、式場の一番後ろの空いていた席に座った。

その後、雅斗が白のタキシード姿で入ってきた。

何時もなら上げない前髪を後ろに流して固めていた。

おっ、男前じゃん。

そう思いながら、見ていた。

神父の前に辿り着く前に亜耶に声を掛けてる。

何かあったのか?

一瞬動揺してるような姿が目にはいる。

それから直ぐにこっちに振り返ってきた。

目が会うとはにかんだ笑顔に戸惑いの色が出てる。

ちょ…それ、反則だよ亜耶……。

何で、そんな切ない顔で俺を見るんだ?

今すぐ、抱き締めたくなるだろ。

そして、俺だけに満面の笑みを見せて欲しいって、言ってしまいそうだ。


今までとはどこか違う亜耶。

三ヶ月間の間に何があったんだ?

アイツと何かあったのか?


式が終わる間、ずっとそんな事が頭の中にを駆け回ってた。




外に出て、空を見上げる。

雲一つ無い空。

何やら、騒がしくなりそっちに目をやる。

女子どもが、一ヶ所に集まっていた。

ああ…。

ブーケートスか……。

まァ、今の俺には関係ないが……。


よく見るとその中に亜耶の姿があった。


そんなに早くアイツと結婚したいの?

俺は、そんな光景を見つめていた。



亜耶…。

今すぐ抱き締めて、俺の腕の中に閉じ込めてしまいたい。

他の男どもに見せたくない。

年を重ねる毎に変わっていく姿を傍で見ていたい。

あの白いうなじに“俺のモノ”だと口付けしたい。



ヤバイ。

亜耶不足が爆発しそうだ。

こうも独占欲が強いとはなぁ。

自分の知らない感情を教えてくれたのも亜耶なんだよなぁ。

亜耶に会わなかったら、こんな感情知らずにただ政略結婚させられてただろう。

何せ、俺は末っ子だし。

会社の道具としてしか成り立たなかっただろうな。



今のうちにご両親に挨拶だけしとくか…。


俺は、辺りを見渡した。

二人の姿は、直ぐに見つけることが出来た。

俺は、そちらに足を向けた。



「おじさん、おばさん。今日は、おめでとうございます」

俺は、そう声をかけた。

親友の親に対しての挨拶。

「あァ、遥くん。今日は来てくれてありがとうな。親友代表のスピーチ、楽しみにしてる」

変なプレーッシャーを掛けられた。

「遥さん。亜耶との事、聞きました。あの娘は、自分を素直に出すことが出来る相手が誰なのかまだわかっていないの。だから、待ってて欲しいんです。あの娘が気付くのを……」

おばさんが、申し訳なさそうに言う。

「それにお父様…お爺様は、貴方の事を試しているだけで、元々遥さんの事を凄く気に入ってるの。でも、何も試すことなく亜耶を貴方の元に嫁がせるのが嫌で、今回、試すようなことをしたんだと思うの。貴方なら、雅斗の片腕としてやれると思ってます

おばさんが、一気に捲し立てた。

えっと……。

俺が、雅斗の片腕……?

なんで?

そこまで信頼されてるってことか?

俺の顔に出てたのか、おばさんが。

「それはそうでしょ。お父様は、今は会長です。家の人が社長をやってます。…が、雅斗は近々副社長と言う肩書きが付きます。では、会長が退陣した後、会長につくのは家の人です。社長は雅斗になるでしょう。副社長の座が宙に浮くのです。そこに亜耶は入れません。入れるのは、亜耶の夫となる人です」

って、力説された。

いや、それは俺じゃなくても……。

「おい。その話は、今する事ではないだろ」

おじさんが、声を潜めて言う。

まァ、どこで誰が聞いてるかわからない。

「そうでした。今日は、雅斗と由華さんの為に来てくれて、ありがとうね」

優しい笑顔を浮かべておばさんが言った。

「いいえ。こちらこそ呼んでいただいて光栄です」

俺はそう返していた。




さっきの話だと俺は、試されてるってことだ。

俺という器を……。

それって、喜んで良いのか?

逆にプレッシャーを感じる。

だが、今は己を信じて進むしかない。


亜耶をこの腕に抱き締め、護っていきたいから……。


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