お爺様
「亜耶。卒業おめでとう」
って、お爺様が私に抱きついてきた。
ある店の個室には、お爺様とお婆様が待っていた。
「ありがとうがございます。お爺様」
私は、お爺様を抱き締め返した。
「本当。亜耶は良い子だよ。これ、私からの卒業祝のプレゼントだ。まだ、早いかと思ったが、高校生になるのだから、良い機会だと思ってな」
お爺様が、そっと離れて包みを手に私の元に戻ってきた。
私は、それを受けとる。
「開けても良い?」
私の問いかけにお爺様はニコニコしながら頷いた。
私は、丁寧に包装紙を剥がす。
蓋を開けると高級な万年筆が顔を覗かせた。
「お爺様、ありがとうございます。大切に使わせて頂きます」
私は、お爺様に抱きついた。
「うん。喜んでくれたならうれしいぞ」
お爺様が私の頭をガシガシと撫で回す。
「お義父さん。亜耶が困ってますって……」
お父さんが、私を見てそう言う。
うん、確かに痛い。
さっきから、首がガクガクして振り回されてる感が……。
「ワシは、亜耶が可愛いんだよ」
お爺様が、満面な笑みを浮かべて言う。
「あなた。もうそれぐらいにして、お昼にしませんか?」
お婆様の鶴の一声で、お爺様の手が止まる。
流石、お婆様。ツボを心得てます。
「そうだな。今日は、亜耶のために休みを取ったんだ。これからゆっくり話そう」
お爺様の優しい眼差しが私に注がれる。
「それに、雅斗の結婚も喜ばしいことこの上ない。由華さん。これから、宜しく頼みますな」
お爺様はそう言って、由華さんに頭を下げた。
「そんな。こちらこそ、宜しくお願いします」
由華さんが、慌てて頭を下げた。
「そう畏まらなくても良い。雅斗をこれからも支えてやってくれ」
真顔でお爺様が言う。
「はい」
由華さんも真剣な眼差しで返事をしていた。
「さぁ、食べようか。亜耶は、ワシの隣な」
お爺様が、私の頭をポンって軽く叩いた。
「はい」
私は、そう返事を返して、お爺様の横に座った。
昼食会は、楽しく進んで行く。
ここに遥さんが居たら、もっと楽しいのかも …。
って思ってしまう。
遥さん…。
今、何をしてるのかなぁ。
私は、上の空で会食していた。