遥の決意
土曜日なのに今日も仕事。
今の俺には、休みなんて要らなかった。
兎に角、鞠山家の御大に認められるように頑張るしかない。
実家の危機を乗りきることとあのお嬢を黙らせるためにも、今が頑張り時。
亜耶不足を補うのは、雅斗から時々送られてくる亜耶の写メ。
亜耶、俺頑張るから、他の奴を好きにならないでくれ。
そう願っていた。
外回りを終えて、会社に戻ろうと足を向けたときだった。
亜耶に会いたいってずっと思ってたからなのか、目の前に亜耶の姿が…。
一瞬、幻かと思った。
でも、見間違うはずない。
髪、伸びたな。
少し大人っぽくなった?
俺は、亜耶の事をずっと見ていた。
声をかけたかった。
…が。
直ぐにアイツが、亜耶の横に並んだ。
亜耶が幸せそうな顔をする。
あ、あ。
亜耶は、アイツを選んだんだ。
俺じゃないんだ。
嬉しそうな顔しちゃって…。
亜耶を幸せにするのは、俺だって思ってたのに……。
手も自然に繋いでる。
そんな姿を見たら、諦めるしかないか……。
亜耶の為だったら俺は、諦められる。
………。
亜耶が、幸せになれるのなら、潔く身を引くことが一番なんだろう……。
けど、俺は、そんなに大人じゃない。
八年も亜耶の事を想ってきたんだ。
あんな奴に亜耶を任せたくない。
何がなんでも、実家の経営を立て直し、もう一度御大に認めさせて、告白…いや、プロポーズする!!
そう決意をすると、俺は俄然と遣る気が出た。
亜耶、待ってろよ!