初デート……亜耶編②
二時間弱の映画を観終えて、私たちは、近くのカフェに入った。
「面白かったね」
私は、素直に言う。
「そうだな。あんな展開があるとは思わなかった」
悠磨くんも目を細めて、内容を思い出したように言う。
うん。
本当に展開が早くて、ハラハラドキドキしっぱなし。
「また、観に来ようね」
次の約束みたいに言う。
「うん!」
悠磨くんが、笑顔で答えてくれた。
よかった。
もしかしたら、ことわられるかと思ったから…。
「そろそろ出ようか?」
悠磨くんがそう言うから私は。
「うん」
って頷いた。
店を出ると。
「…で、何を渡すつもり?」
悠磨くんが聞いてきた。
覚えててくれたんだ。
う〜ん。
「二人で使えるやつで、カップ以外のをって思ってるんだけど…」
私は、思ってることを口にした。
悠磨くんは、私の言葉に顎に手を当てて考え出した。
「じゃあ、雑貨屋がいいのかな?」
その言葉に私は、頷いた。
「…ん。じゃあ、行くか」
悠磨くんがそう言って私に手を差し出してきたから、そのまま重ねた。
そして、指を絡めるように繋いできた。
これって…もしかしなくても…“恋人繋ぎ”…だよね。
ちょっと…恥ずかしかな。
悠磨くんがギュッて握ってきたから、私も握り返した。
そして、私の歩幅に合わせる様に歩いてくれる彼。
そんな優しいところが“好き”だなって、思えた。
雑貨屋さんに入ると色とりどりの物で溢れていた。
可愛い物からシンプルな物まで、ありとあらゆる物が所狭しに並んでいた。
私は、店内を見て回る。
っと、ストラップのコーナで足が止まった。
これ、可愛い!!
手にしたのは、ビーズでできたイルカのストラップ。色は、青とピンクのお揃いで付けれるじゃん。
「悠磨くん。これどうかな?」
私は、悠磨くんの方に向き聞いてみた。
「う〜ん。亜耶のお兄さんのイメージじゃないと思うけど…」
そう言われて、断念した。
可愛いのに…。
由華さんなら、喜んで付けてくれそうだったのに…。
そう思いながら、もう一度店内を見渡してみた。
そして、ある一角に目がいった。
ナチュラル素材で出来たフォトフレーム。
私は、その場所に移動する。
これならば、結婚式で撮った写真を入れて飾ってもらえるかも…。
しかも二枚組だし…。ガラスに四つ葉のクローバーがそっと添えられてる。
「ねぇ、ねぇ。これならどうかな?」
私が指を差すと、暫く考えたと思ったら。
「いいと思うよ」
言葉が返ってきた。
私は、それを手にすると。
「じゃあ、これ買ってくるね」
そう告げて、レジに並んだ。
「プレゼント様にラッピングしてください」
支払うときにそう告げると、店員さんが包装紙とリボンを見せてくれた。
「こちらの中から選んで頂けますか?」
そう言われて、白地に小花の包装紙にピンクのリボンを選んだ。
「包装しますので、もう暫くお待ちください」
そう言われて、私はレジの横で待つことにした。
その間に悠磨くんがレジに並んでるのが見えた。
品物を受け取って、店の外で悠磨くんが出てくるのを待った。
「ごめん」
店から出てきた悠磨くんが謝ってきた。
「…ん、いいよ。何か欲しい物でもあったの?」
私が聞くと。
「うん」
って、照れ臭そうに頷いた。
?
私は、不思議に思ってたら。
「帰ろっか。送ってくよ」
自然の手を繋ぐ。
当たり前のように…。
「うん」
ちょっと…かなり、慣れてきたかな…。
帰り道は、たわいのない話で盛り上がった。
「ねぇ、悠磨くん。高校からの課題、もしよかったら一緒にやらない?」
私は、そう口にしていた。
本当、自分でもビックリ。
「いいよ」
悠磨くんも一瞬驚いた顔をしたが、直ぐに答えてくれた。
「やったー!」
つい言っちゃった。
だって、卒業して入学式まで会わないってのも、寂しいって思ってたから…。
だから、約束が欲しかったんだ。
「今日は、ありがとうね」
私は、素直に言葉を吐き出した。
「こっちこそ、ありがとう。そうだ、これ…」
悠磨くんが、袋から何かを取り出し手渡してきた。
「開けていい?」
訪ねると軽く頷く悠磨くん。
私は、封を開けて取り出した。
そこには、ミサンガのストラップが出てきた。
色も私が好きな、スカイブルー。
「…いいの?」
「うん。今日の記念に…ね。オレとペアだから、逆につけてて欲しい…かな」
悠磨くん目線を逸らして言う。
あっ、照れてる。
「ありがとう」
私はそう言うと、自分の携帯に取り付けた。
それを見ていた彼が、自分の携帯を取り出して私に見せてくれた。
そこには、同じ色のストラップが付いていた。
本当にお揃いなんだ。
ポワーンと心が暖まってきた。
「お揃い。嬉しいな」
照れ笑いを浮かべてみた。
すると視界が真っ黒になった。
ん?
あれ?
私、もしかして抱き締められてる?
「ゆ…悠磨くん」
突然の事に戸惑ってしまった。
「可愛すぎるんだよ、亜耶は…。オレ、他の奴に獲られないか心配だったから…」
悠磨くんが、震えてる。
不安にさせてるの?
「大丈夫だよ。私は、悠磨くんしか見てないから」
私はそう言葉にしていた。
でも、本当は……。
これは言ってはダメ。
今は、封印してる想いだから……。
私の言葉に安心したのか、悠磨くんが離れた。
「じゃあ、明後日、学校で…」
「うん」
私は、悠磨くんの背中を見送った。
ごめんね、悠磨くん。
本当の気持ちを知ったら、軽蔑されちゃうよね。
だから言わない。
誰にも言えない…。