初デート……亜耶編①
今日は、悠磨くんとの初デート。
皆と一緒に遊びに行ったりはしてたんだけど、二人だけでってのは初めてで、何を着ていけばいいのかわからなかった。
「う~ん。どうしよう?」
悩んでいたら。
コンコン。
って、ドアがノックされた。
「はーい」
私は、ドアを開けて確認する。
「亜耶。これからでかけないか?」
って、お兄ちゃんだった。
「ごめんなさい。これから、悠磨くんと会う約束してて…」
私の言葉に。
「そっか…。それなら仕方ないな」
お兄ちゃんの残念そうな顔。
そうだ!
お兄ちゃんに服決めてもらおう。
私は、それが得策だと思った。
「ねぇ、お兄ちゃん。ちょっと相談があるんだけど…」
私がそう言うと。
「何?小遣いか?」
怪訝そうな顔を向けてくる。
くれるの?
首を傾げながら。
「違うよ。何着ていけばいいのかわかんないの…。だから、お兄ちゃんに見立ててもらおうと…」
慌てて否定した。
「それなら、由華に相談しろよ」
お兄ちゃんが、私にスマホを貸してくれた。
エッ……。
「勝手に掛けてもいいの?」
疑問に思った私に。
「うん。由華、亜耶に頼られるの待ち望んでるからな」
お兄ちゃんが、忍び笑いする。
「リダイヤルの一番最初に由華の番号があるだろ」
お兄ちゃんの言葉に頷いた。
私は、由華さんのところをタップして電話を掛けた。
『はい。雅くん、どうしたの?』
って、由華さんの元気な声が聞こえてきた。
「由華さん。私、亜耶です」
『えっ、亜耶ちゃん』
由華さんが驚いた声を出す。
「はい。由華さんに相談したいことが…」
『ん?何かな』
改まって聞く私に優しい声で返してくれる。
「初デートに着ていく服って、どんなのがいいですか?」
私は、素直に聞いた。待ち合わせの時間ギリギリだったから。
『そうね。行く場所によっては替わるから、詳しく教えて』
由華さんの楽しそうな声。
私は、由華さんに大まかに話した。
すると、的確なアドバイスをくれたのだ。
それから、着て行く服wl決めた。
上から下に向かって、淡い黄緑色から淡い黄色のグラデーション(春っぽく見えるかなって思ったから)の膝丈のワンピースに白のジャケット(襟元に小花の刺繍が施されてる)を羽織った。黒の七分丈のレギンスに少し低めの薄桃色のヒールを合わせた。
髪は、片方だけを編み込んでアップにした。
口許も薄いピンクのリップを塗った。
そこまでして時計を見た。
待ち合わせの時間ギリギリだった。
私は、鞄にお財布と携帯を突っ込んで、慌てて家を出た。
ヒールで走るのは、難しそうだったので(慣れてない)早足で駅に向かった。
時間、間に合うよね。
心なしか、慌ててる自分がいる。
駅に着き、キョロキョロと悠磨くんの姿を探した。
居た。改札口の横。
人の邪魔になら無い場所で、携帯を弄っている。
「悠磨くん。お待たせ」
私は、悠磨くんの側まで行くと声を掛けた。
悠磨くんは、ゆっくりと目線を私に向けてきた。
いつもと違う雰囲気の悠磨くん。
何が違うのかな?
首を傾げながら、マジマジと彼を見た。
あっ、服装がいつもと違うからか…。
普段、カジュアル系の服で、髪も下ろしてるから、幼く感じてたのが、前髪を後ろに流してて、普段は着ない黒のジャケットが、少し大人っぽく見えるんだ。
「うん。亜耶は、何が観たいんだ。
突然聞かれて、悠磨くんが携帯画面を見せてくれる。
その画面には、映画のタイトルとストーリーが並んでいた。
う~ん。そうだなぁ。
あっ、このSF面白そう。
私が画面から顔を上げて、悠磨くんを見るとボーと私の方を見ていた。
「悠磨くん?」
思わず声をかけてしまった。
「……」
返事がない。
「どうかした?」
もう一度訪ねると。
「亜耶が、可愛すぎて…」
って、言葉が返ってきた。
その言葉によって、顔でお湯が沸かせるんじゃないかってくらい熱くなる。
俯いてしまった私に。
「亜耶。観たいの決まった?」
って声がかかる。
「う…うん。これ」
私は、画面に出てる一タイトルを指で示した。
「上映時間まで時間があるから、お昼を食べてから行こう」
「うん」
私は、素直に頷いた。
すると、悠磨くんが、スッと手を差しのべてきた。
私は、オズオズと手を彼の手に乗せると歩き出した。
映画館の近くにあるファミレスに入った。
席に着くと悠磨くんがメニューを渡してきた。
「亜耶、先に決めていいよ」
ありがたい申し出だった。
こう見えて、目移りするタイプだったから……。
「…う~んっと…」
私は、メニューと睨めっこ。
あれもこれも食べたいけど……。
食べきれる自身がない。
う~ん。
あっ、これにしよう。
「決まったよ」
そう言って、悠磨くんにメニューを渡す。
それを受け取った悠磨くんは、捲っていく。
さほど迷わずに決まったみたいだ。
「押すよ」
悠磨くんがブザーを押した。
暫くすると店員さんが来た。
「お待たせいたしました。ご注文をどうぞ」
って言われて、悠磨くんを見ると先に言っていいよって、目で言っていた。
「海老ドリアとドリンクバーで」
私は、遠慮がちに言う。
「ハーンバーグセットで。パンとドリンクバーで」
ハンバーグセット!
流石、男の子だよ。
私、そんなに食べれないよ。
感心してる間に店員さんがテーブルから、離れていった。
「ねぇ、悠磨くん。映画の後、付き合って欲しいんだけどいいかな?」
私は、断られるっと思いながら言ってみた。
悠磨くんは、一瞬喜んだような顔を見せて。
「うん、いいよ。何を見るの?」
優しい声で聞き返してきた。
「あのね。今度、お兄ちゃんが結婚するんだけどね。二人にサプライズプレゼントしたくて」
上目遣いで悠磨くんを見やれば、何か思ったのか。
「そっか…。うん。一緒に見て回ろう」
笑顔で答えてくれた。
お昼を食べ終えると手を繋いで、映画館に向かった。