初デート…悠磨編①
兎に角オレは、待ち合わせ場所の駅に向かった。
兄貴から黙って拝借した黒のジャケットを羽織って。
始めてのデートに何を着ていけばいいのかわからず、普段着使いでは…って悩み、兄貴の部屋に勝手に入り込み、クローゼットから、黒のジャケットを見つけて、それを拝借し、それに合わせるように服を選んだ結果、白のカッターシャツに萌木色のチノパンにスニーカーって、ちょっとシンプルかと思いながら、これが今のオレの精一杯だった。
駅には約束の十分前に到着。
キョロキョロと亜耶の姿を探す。
…が、まだ来ていないようだった。
ホッ……。
さて、何を観るかだが……。オレは、携帯を操り、今やってる映画を検索する。
恋愛は、まだ一緒に観るのは、恥ずかしい気がする。
ホラーは、亜耶が苦手だって言ってた。
後は、SFかコメディーか……。
そう悩んでいたときだった。
「悠磨くん。お待たせ」って声がかかる。
亜耶が、はにかんだ笑顔でオレの前に立っていた。
「う、うん。亜耶は、何が観たい?」
オレは、自分の携帯を亜耶に見せる。
って……。
これ、ただの照れ隠しだったり。
だって、今日の亜耶、メチャ可愛いんだ。
春色のワンピースに白のジャケットには、可愛らしい花の刺繍が襟元にあって……。
髪は、編み込んでアップにしてて、唇には色付きリップが塗られている。
それが、また亜耶を可愛くさせてて……。
まともに亜耶の顔をみれない……。
「悠磨くん?」
亜耶が、オレの顔を覗き込んでくる。
「……」
「どうかした?」
亜耶が、小首を傾げてオレを見るから。
「亜耶が、可愛すぎて……」
ポロッと口からこぼれでた。
あっ…ヤバイ……。
その言葉を聞いた亜耶の顔が、赤くなっていく。
うわーーー。
何、この可愛さ。
誰にも見せたくなくて、抱き締めてしまいそうになった。
「亜耶。観たいものあった?」
「う…うん。これ」
って、亜耶が指したのは、SFだった。
「上映時間まで時間があるから、少し早いどお昼食べてから行こう」
「うん♪」
オレは、亜耶に手を差しのべた。
亜耶は、ちょっと戸惑いながら、オレの手に重ねてきた。
はにかむ亜耶。
そんな亜耶も、可愛いと思いながら、歩き出した。
映画館の近くにあるファミレスに入った。
(中学生では、この程度しか無理です…はい。)
「亜耶、先に決めていいよ」
オレは、メニューを亜耶に渡す。
「…う~んと……」
亜耶はメニューを見て睨めっこ。
食べたいメニューを見つけては、目を輝かせてる。
本当に可愛い奴だよ。
「決まったよ」
亜耶が、ニッコリと微笑む。
オレは、メニューを受け取り、ペラペラと捲る。
うん、オレはこれにしよう。
「押すよ」
オレは、呼び出しブザーを押した。
暫くして、店員さんが来た。
「お待たせしました。ご注文をどうぞ」
と言われ、亜耶に先に言わせた。
「海老ドリアとドリンクバーで」
それだけで足りるのか?
そう思いながら。
「ハンバーグセットで、パンで。後ドリンクバー」
オレは、亜耶に続いて言う。
「注文を繰り返させていただきます。海老ドリアとハンバーグセットで。主食はパンで。ドリンクバーが二つですね」
「はい」
「今暫くお待ちください」
そう告げ、軽くお辞儀して去っていった。
「ねぇ、悠磨くん。映画の後、付き合って欲しいんだけど、いいかな?」
亜耶が、不意に聞いてきた。
願ってもない申し出だった。
「うん、いいよ。何を見るの?」
「あのね。今度、お兄ちゃんが結婚するんだけどね、二人にサプライズプレゼントしたくて…。一緒にみてくれるかなぁ?」
あっ……。
亜耶と十も離れてるから……か。
「そっか…。うん。一緒に見て回ろう」オレは、笑顔で答えていた。
オレたちは、昼食を食べ終えると店を出て、映画館に向かう。
その間、逸れないように…違う、ただ、亜耶が逃げないように手を繋いで歩いた。
こんなに独占欲が強いなんて、オレ自身思ってもみなかった。