婚約解消!
俺は、あれから実家の事業を立て直すために奮闘していた。
「いらっしゃい、遥」
って、出迎えたのは、雅斗だった。
「あれ?今日は、雅斗が相手なのか?」
俺は、不思議に思い聞いてみる。
「ああ、社長なら急な出張が入ってな、その代わり、俺に話を聞いておけってさ」
雅斗が、坦々と話す。
そっか、それで連絡無かったのか…。
「それから、これ…」
雅斗が、内ポケットから何かを取り出した。
?
「親友なんだから、出てくれるだろ?」
俺の顔を真顔で見る雅斗。
俺は、それを受け取り中を見る。
そこには、畏まった文章と日時と場所が書かれた結婚式の招待状だった。
「ついでにスピーチもな」
ハッ?
「ちょっと待て。何で俺が!!」
俺の声が大きすぎたのか、社内に居た者達が、一斉に俺を見た。
「遥、声がでかい」
雅斗に咎められて、軽く会釈した。
「お前が、一番の適任者だろ。会社の顔も潰さずにすむんだからな」
雅斗が、悪戯を成功させた子供のような顔をする。
確かにそうかもしれないが…。
何も、こんな急に言うなよ。
「それから、亜耶なんだが。高校合格したぞ」
亜耶なら、当たり前だ。
あんなに頑張ってたんだから。
合格祝い何をやろうかなぁ…。
「“合格祝いは要らないから、もう私に付きまとわないで!!”だって…」
えっ……。
その言葉に驚愕する。
な…なに……。
雅斗は、今何を言ったんだ…。
「お前、亜耶に何したんだよ。お前に靡き初めた矢先だったんだぞ」
雅斗が、残念な顔をする。
へっ……。
何って……。
「亜耶、完全にお前の事拒否ってるんだよ。亜耶の前で、お前の名前だすと“遥さんの事なんて、聞きたくない!!”って、直ぐに居なくなるんだよ」
俺には、身に覚えがないんだが……。
「それから、お前と亜耶の婚約解消が決まった」
雅斗が、真面目な顔で言う。
何で…。
「ちょっ、雅斗。それって…」
俺は、焦って聞き返す。
「そう。お爺様が、“認めん”と言い出した」
なんだそれ。
何で、そうなるんだよ。
「遥。親友のよしみで言うが、どこぞのお嬢様とお見合いしたんだって?」
お嬢様とお見合い…。
あっ……。
ゆりか嬢の事か…。
「まぁ、したっていたら、したんだろうな…」
「はぁーーーー」
雅斗が、盛大な溜め息をついた。
「それ、うちのお爺様に筒抜け。“亜耶という婚約者が居ながら、お見合いとは”って怒ってたぞ」
何で、ばれてるんだ?
「バレてるのは、そのお嬢さんがうちの親父のとこまで乗り込んできたんだよ。“高橋遥さんの相手は、中学生のお嬢さんじゃ勤まりません。私の方が、余程釣り合いがとれますわ”って、豪語して言ったんだよ。それを偶々通りかかった会長が聞いてたんだ。それに亜耶の事を馬鹿にしたもんだから、お爺様はそれはもうカンカンでさぁ、取りもつ暇なし」
何…。
あのお嬢が、亜耶を馬鹿にした。
俺でも、許せぬ行為だ!
「…っと、私情は終わり。仕事の打合せで来たんだろ」
雅斗、自分で振っておいて、それはないんじゃ。
だけど、何で、亜耶が突然拒否反応を起こしたんだ?
俺は、それが気になった。




