受験
気が付けば、あっという間に受験当日。
オレは、クリスマスの日以後、亜耶への想いを封印して、勉強に励んだ。
うちの学校から、清陵学園の推薦を貰ってるのは、オレと亜耶だけ。
必然的に一緒に行くことになる。
しかも、二人っきりで…。
駅に七時に待ち合わせ。
「受験票は、持ったし…。筆記用具、問題集……」
忘れ物は、ないな。
オレは、再度確認してから、家を出た。
駅までは、然程かからない。
待ち合わせには、充分余裕のあるはずだが…。
亜耶の事だから、もう駅に着いてるに違いない。
オレは、自然と早足になっていた。
駅に着くと改札口の近くで、単語帳を捲って勉強してる亜耶が居た。
亜耶は、オレに気付くと。
「おはよう、悠磨くん」
笑顔を向けてきた。
「おはよう、亜耶。相変わらず早いな」
「…うーん、そうかな」
惚け顔の亜耶。
クリスマスからすると髪は伸びて、肩より少し長いくらい。それを二つに分けて耳の下ぐらいで結んでる。
これは、これで可愛いんだよ。
……って。
いかん、今は受験の事を考えねば…。
「悠磨くん。どうしたの?行くよ」
亜耶が不思議そうな顔をしながら、オレの顔を覗き込んできた。
「あっ、うん」
そう言って、歩き出した。
さすがに緊張してきた。
テストは、なんなく終わった。
これから、面接だ。
ちゃんと受け答えが出来るか、不安だ。
学校では、面接の練習もした。
礼儀や姿勢、質問の答え方、言葉使い。
全てに置いて、何度も頭の中で反復した。
今ごろになって、震えてくる。
それを必死に押さえる。
大丈夫。
ちゃんとやれる。
そう自分に言い聞かせた。
面接も無事(?)に終わり、亜耶を待つ。
男女別々の会場だったためだ。
「悠磨くん。待った?」
亜耶が、笑顔で声をかけてきた。
ホッとしてる顔だ。緊張してたんだな…。
「大丈夫だよ」
ってオレは返した。
何か、視線が痛い。
周囲に目をやれば、亜耶を狙ってる男どもの視線だった。
ちょ…ちょっと待て……。
オレは、たじろいだ。
初めて…見たんだよな?
何で、こんなに他校の生徒に注目されるんだ?
「悠磨くん。どうかした?」
当の本人は、キョトンとした顔でオレを見る。
ものすごく、無防備な亜耶。
これが、亜耶なんだけどさ……。
「…いや。何でもない。さぁ、帰ろう」
「うん!」
この笑顔。
正直、オレの方が戸惑う。
亜耶。
お前、可愛すぎ…だ。