困惑と決意
「……、遥のことで聞きたいこととは?」
オレを振り返り様に見るとそう聞いてくるお兄さん。
辿り着いた場所は、人気の無い公園だった。
「あの人の性格とか、長所を教えて欲しいんです!」
思っての外、声が大きくなる。
「性格?うーん。今は、温厚的だな。長所は、気が長い。それから、文武両道で、教師の免許を持ってる。高橋コーポレーションの四男で、末っ子。亜耶の事を小学校の時から、溺愛してる。そして、婚約者に内定してる……かな」
お兄さんが、空を仰いだかと思うとオレを見据えて言う。
亜耶の婚約者として、内定って……。
「ああ、うちは、一般家庭のように育ってきてはいるが、基を正せば、財閥の出だからな。普通に恋愛して結婚は、難しいだろうが……」
って、淡々と語ってくれる。
エッ……。
財閥って……。
それに、普通に恋愛結婚が難しいって……。
どういう事だ?
「家は、直系ではあるが、そんなに畏まってはいない。けど、世間一般に知られてる財閥の跡取りではある。だから、遥との婚約は、上(お爺様)の了承を得てるんだよ」
エッ……。
それって……。
「そう、亜耶は遥の婚約者として決定してる。ただ、亜耶は、まだ、中学生というのもあって、婚約の事は発表せずに『今は、亜耶が過ごしたいようにさせてあげなさい』と上からのお達しも出てる。遥を越え様とする努力は、買ってやるが、な。それを覆そうとする事は、難しいとは思うがな。」
真顔で言うお兄さん。
それは、亜耶には高橋さん《あのひと》が居るから、諦めろと……。
「まだ、正式な発表はされてないから、亜耶の気持ちが、今は最優先だと考えてる」
って…。
それは、亜耶には婚約者が確実に居る。
只今は、亜耶が想う相手があの人じゃないってこと?
それって……。
「少年。まぁ、頑張れな」
そう言って、お兄さんが、背中を向けて出口に向かう。
「ありがとうございます」
オレは、その背中に向かってお辞儀した。
そっか…。
いまはまだ、亜耶はあの人の事をなんとも思っていないのか。
って事は、オレにもまだチャンスがある。
よーし。
あの人を越えるためには、亜耶をオレの方に向かせる!
オレには、亜耶と触れ合う時間があの人より多い。
これを活かせば、亜耶はオレの事を見てくれるはず。
オレに対向できる唯一の手段。
ちょっと気が引けるが、やるしかない。
やる気が、湧いてくる。
亜耶、待ってろよ。
オレが、亜耶を手にいれてやる。
その想いだけで、オレは突き動かされていた。