尾行?
義之の家からの帰り道。
オレは、亜耶の事を考えていた。
亜耶……。
オレは、どれだけ頑張れば良いんだ。
目標となる人は、あの人、高橋遥さん。
あの人の情報が、もっと欲しい。
何でも良いから……。
そう思っていた矢先だった。
オレの目の前に本人が歩いてるではないか。
オレは、彼に気付かれないように後を着けることにした。
彼を追って着いた場所が、帽有名ホテルだった。
こんなところに何の用が……。
そう思いながら、中に入る。
キョロキョロ辺りを見渡してみた。
そこのロビーで、三人の男と一人の女に囲まれていた。
もう少し近付いて会話を盗み聞こうとしたが……。
人目があって、近づく事が出来なかった。
だが、あの人に似てるところから、兄弟だろうと予測できる。
しかも、立ち振舞いがとても優雅だ。
これは、幼い頃からの躾でしか、身に付かないだろうってほど。
兄貴が言ってたことは、本当だったみたいだ。
どこかの御曹司……。
その御曹司が、一般人である亜耶と婚約できるとは、思えない。
これは、何かの間違いなのであろう。
オレは、そう結論を下して、ホテルを出た。
しかし、あのひ人の周りには、美形が多い。
うーん。
って、そこじゃないか……。
後を付けて行ったのに、結局何の収穫もない。
ただ、本当に御曹司だったってだけで、それ以上の事は、得ることが出来なかった。
誰か、いなかったか……。
あの人の事を良く知ってる人……。
考えろ……。
あっ!
居た。
亜耶のお兄さん。
あの人と親友だって、兄貴が言ってたっけ……。
だが、どうやって接触すれば……。
まさか、亜耶の家に行ってお兄さんを呼び出す。
……わけにはいかないか…。
どうしたらいいんだ?
家に足を向けながら、考えを巡らせてた。
ふと、なにげに目線をあげると、亜耶の姿が飛び込んできた。
ラッキー。
まさかこんなところで会えるとは……。
その横には、お兄さんの姿も……。
これは、チャンスだ。
オレは、足早に亜耶の元に向かった。
「亜耶」
オレは、亜耶に声をかけた。
「あれ、悠磨くん。どうしたのこんなところで?」
亜耶が、不思議そうな顔でオレを見る。
「うん。ちょっとね」
オレははぐらかすようにそう答えながら、お兄さんに。
「こんにちは」
と向かい合い、挨拶する。
「こんにちは」
お兄さんも挨拶を返してくれた。
「亜耶。俺、先に帰るな」
って、亜耶の頭をポンポンと叩くと、行こうとする。
オレもやりたい。
って、違う。
オレが、用があるのは、お兄さんの方だ。
「あのー」
オレは、お兄さんを引き止めるために声をかけた。
「何かな?」
お兄さんは、優しい笑みを浮かべてはいるが、目は笑っていない。
「えっと……。少し聞きたいことがあるのですが……」
オレの言葉に少し不思議そうな顔をする。
「俺で答えることが出来るのなら…」
と、言ってくれた。
でも、オレが聞きたいのは、亜耶に聞かれたくないことで……。
オレが、チラリと亜耶に目線を向けると亜耶が、キョトンとした顔でオレを見ていた。
「亜耶。先に帰って、勉強の続きやってなさい」
お兄さんが、オレが聞きたいことを察したのか、亜耶にそう告げていた。
「うん。じゃあ、悠磨くん。明日の塾でね」
「うん。明日な」
亜耶は、軽く手を振ると家に帰っていった。
読んでいただき、ありがとうございましたm(._.)m