告白?
「……で、どこがわからないんだ?」
図書館に着き、席に座れば悠磨くんが聞いてきた。
私は、数学の参考書を取り出して、指を差しながら。
「ここなんだけど……。」
と伝えれば。
「あぁ、これは……。」
と覗き込むように参考書を見て、丁寧に説明してくれる。
「あっ、そっか……。ありがとう。」
私がお礼を言えば。
「じゃあ、オレもここを教えてくれ。」
って、私の顔を覗き込むように聞いてくる。
うっ……。
顔が近いよ。
顔に熱が集まってくる。
「亜耶?」
何ともない顔をして私を見てくる悠磨くん。
こんなに近距離に顔があるのに、なんとも思われてないのって、脈無しなのだろうか?
悶々と考えながら。
「あっ、うん。これは……。」
私は、どうにかそれに答えた。
顔の赤みは、引いてないと思うけど……。
「お前ら、見せつけてくれるなよ。」
と相馬くんが茶化すように言ってくる。
えっ、あっ。皆が居るの忘れてた。
周りが見えてなかった自分。
「そうだよ。こっちの方が恥ずかしいよ。」
瑠美ちゃんが追撃するように言ってくる。
「ばッ……、そんなんじゃねぇよ。」
悠磨くんが、慌てて誤魔化してるけど皆が生温い温度でこっちを見てくる。
「そうだよ。ただ教えあってるだけで、他意はない、よ。」
私も慌ててフォローに回るけどなってないかも……。
「もう、二人とも慌てすぎ。」
「って言うか、それじゃあ亜耶ちゃん悠磨が可哀想だけど……。」
と的場くんが言う。
可哀想?
何の事だかわからず首を傾げ悠磨くんを見る。
「なんでもない。気にしなくていいよ。」
悠磨くんが気まずそうに言うから、私はまた勉強に打ち込んだ。
横で、悠磨くんが何か呟いていたが聞こえてこなかった。
こんな何でもない付き合いが、大切だと私は思うんだよ。
最近は特にそう思うようになった。
図書館の閉館時間になるまで、勉強した(途中休憩も入れたけど)。
それでも、充実した時間が送れたと思う。
「明日からのテスト。悔いないようにな。」
誰からの言葉かわからないが、そんな言葉が聞こえてきた。
「うん。」
「おうよ。」
何て返事まで。
そんな様子を見ていたら。
「男子は、女子を送って行くんだぞ。」
って、悠磨くんがそう声をかける。
辺りは、夕闇になってるからこその言葉なのだとわかる。
皆が各々家路に帰るなか、私と悠磨くんはそれを見送る。
唯一、私と悠磨くんは同じ方向なだけなんだけどね。
「オレらも帰るか。」
悠磨くんの言葉に頷き、足を動かしだした。
「あのさぁ、亜耶。」
突然悠磨くんが話しかけてきた。
「ん? 何。」
「昼間のさぁ、男の人って、本当に亜耶とは関係ないんだよな?」
確認をするように聞いてくる悠磨くんに。
「うん、関係ないよ。お兄ちゃんの友逹ってだけ。それが、どうかしたの?」
疑問に思いながら、そう聞けば。悠磨くんが立ち止まって、私の方に向き直ると。
「亜耶……。オレ……オレさぁ、亜耶のこと、好き。だからオレと付き……付き、合って……。」
「亜耶ーー!!」
最後の言葉を遮るように聞きなれた声が私の名前を呼ぶ、振り返れば 絶口宣言した遥さんが居て。
「迎えに来たよ。」
甘い笑顔を浮かべながら言う。
さっき、絶口宣言した筈なのだが、何故に……。
って言うか、絶妙なタイミングで現れたよね。
もしかして、何処かで見ていたって事はないよね。
背中に冷たい汗が流れた気がする。
「あっ、迎えが来たなら、オレはこれで。」
って、悠磨くんの方を慌てて向けば、顔を真っ赤にして、走り出すところだった。
えっ、ちょっと悠磨くん、何を言いかけてたの?
って言うか、悠磨くんが私のことを?
あーもう、ちゃんと言って欲しいよ。
思考の渦に呑まれてると。
「亜耶、寒いだろ? さっさと帰るよ。」
私を後ろから抱き締めて、そう言う遥さんを睨み付ける。
それから、ずっとその事が頭から離れなかった。
悠磨君の告白、遥さんに遮られてしまいましたね。
悠磨君、告白できるのでしょうか?