決意
妹の爆弾発言で、オレは、亜耶の事しか考えられなくなっていた。
昨日の亜耶、どことなく慌ててたが……。
それが、お兄さんと女の人それとあの人のダブルデート……。
どう考えても、大人の中に子供が一人という感じなんだが……。
あの人は、亜耶にベタ惚れしてる。
じゃあ、亜耶は?
最初聞いた時は、嫌がってたと思ったが……。
それは、オレの勘違いだったのだろうか?
あの時の亜耶の甘えたような態度。
あの人にしか見せてない気がする。
心置きなく許せる相手なのかと思わされる。
あーー。
もう、わからない。
オレは、どうしたらいいんだ。
頭を掻きむしる。
亜耶を好きな気持ちは、誰にも負けないと自負できる。
だが……。
亜耶の想いが、どこにあるのかが、サッパリわからない。
わからないんだ。
「あーーーーーーー!」
オレは、部屋で声をだして叫んでいた。
「煩いよ、悠兄ちゃん!」
妹の千春が、ノックもなしにオレの部屋に入ってきた。
「勝手に入るな!」
「何さ。悠兄ちゃんが叫ぶからでしょ」
妹が、ブツクサ言いながら出ていく。
明かに八つ当たりだ。
誰に話せばいいんだよ。
turrrr…turrrr……。
携帯が鳴り出した。
「はい?」
『悠磨。悪いが、俺の家に来てくれないか?ちょっとわからないところがあってさぁ…』
との義幸からだった。
「わかったよ。今から行く」
オレは、そう返事を返した。
ピンポン。
義幸の家の呼び鈴を押す。
「悠磨君。久し振りね。中に入って。義幸、自分の部屋にいるから…」
義幸の母親が出てきて言う。
「はい、お邪魔します」
オレは、玄関を潜って、二階にある義幸の部屋に向かった。
コンコン。
ドアをノックする。
「はい?」
義幸が、中から返事を返してきた。
「オレ、入るぞ」
オレは、そう言って中に入った。
そこには、水口も居た。
もしかして、オレ邪魔なんじゃ…。
そんな考えをよそに。
「そんな所で突っ立ってないで、入れよ」
義幸が言う。
「あ、ああ…」
オレは、そう言うと中に入った。
「で、わからないところって?」
オレが聞くと。
「俺じゃなくて、姫が…」
義幸が、言葉を濁す。
水口がどうしたんだ?
オレは、水口の方を伺った。
「実は、昨日の夜。亜耶が、あの人の背中に背負われて、帰って行くのを見たんだ。亜耶、とても幸せそうな顔をしてた」
って…。
水口からも爆弾を投下された。
ハッ………。
何で、今日に限ってこんなのばっかり…。
「俺は、何かの見間違いだっていうんだが…」
義幸が、フォローしてくれるが……。
「ううん。見間違いなんかじゃない。昨日してた薔薇のチョーカーしてたもの」
薔薇のチョーカー……。
あれか…。
核心的だな。
「どうするんだ、悠磨」
義幸が聞いてきた。
「どうすると言われても…」
どうすればいいのか、オレにもわからないんだよ。
「何もしないの?」
水口が聞いてきた。
「しない。今は、出来ない」
オレは、そう口にしてた。
「何で!悠磨君は、亜耶の事好きなんでしょ?」
水口が、声を荒げて言う。
「好きだよ。だから今は、何もしない。オレは、亜耶にとっては、まだ、物足りない男だってだけだ」
そう。
あの人に嫉妬するのは、オレに持ってないものを持ってるから…。
オレは、あいつに追い付いてから、勝負したいと思ってる。
それで、追い付いたと思った時に亜耶に告白しようと思う。
「悠磨くんの意気地無し!」
水口が、オレに罵声を飛ばす。
「姫、やめろ。悠磨には、悠磨の考えがあるんだよ」
義幸が、水口を止める。
「いや、ありがとう。水口のお陰で、ハッキリわかった」
オレは、水口にお礼を言った。
水口は、オレの言葉に驚いた顔をした。
「ということだ。姫、もう気が済んだだろ。悠磨も呼び出して悪かったな」
義幸が、苦笑する。
「いや、こっちこそ、ありがとな。取り合えず、目標みたいなのが出来た」
オレは、笑顔で返していた。