お泊まり
遥さん続きで、ごめんなさい。m(__)m
亜耶を背負ったまま、鞠山家の玄関を潜る。
「今晩は」
俺は、玄関で亜耶の靴を脱がし、自分も脱いで上がった。
「まぁ、遥さん。今日もですか……。ごめんなさいね」
亜耶の母親が出てきて、言う。
「いいえ。今日は、雅斗達も一緒だったんですけどね。雅斗は、沢口さんを送り行ったので、俺が、お届けに来たんです」
俺、役得な気もするが……。
「そうだったんですか。本当、ごめなさいね。この子のこの体質、いつになったら改善されるのか…」
「大丈夫ですよ。自然と治ると思いますよ。それより、部屋のドアを開けてもらえますか?」
「あっ、はい」
母親にドアを開けてもらい、中に入ってベッドにおろす。
「今日は、泊まっていけるのかしら…」
亜耶の母親が、遠慮がちに言う。
明日は、呼び出されてるが、午後からだし、まあいいか。
「では、お世話になりまっす」
俺は、そう言って頭を下げた。
「あらあら、そう畏まらないで頂戴」
そう言って、母親は出て行った。
俺は、亜耶の額にかかった髪を退かし、口付けた。
早く、俺の事を認めて欲しいよ、亜耶。
そっと、亜耶の部屋を出て、下に降りていく。
ちょうど、母親と出くわし。
「遥さん。お風呂に入って、温まってください」
と言われ。
「ありがとうございます」
「着替え、置いてありますからね」
そう言って、リビングに行った。
高校の頃からよく泊まりに来てたから、何だかんだと着替えは置いてある。
俺は、脱衣所に向かった。
今日の亜耶、いつもと違った。
さっき言ってたことってなんだ?
俺が、何かしでかしたのだろうか?
って言うか、何か亜耶の中で俺に対する何かが、変化したのか?
それしか思い当たらない。
湯船に浸かりながら、今日の事を振り返っていた。
うーん。
亜耶の態度が、変わったのって、食事してたときだな。
その時から、俺に対する見方が変わった気がする。
明日は、いつもと違う対応してみるか…。
そう思いつつ、湯船から上がった。
水滴をタオルで脱ぐって、パジャマ替わりのスエットを着る。
そして、リビングに向かった。
「おっ、遥。今日は、泊まっていくんか?」
リビングのソファーで雅斗が寛いでいた。
「ああ。明日は、本業の仕事は休みだからな」
俺は、含みのある言い方をした。
「…ってことは、呼び出し?」
雅斗が、真剣な眼差しを向けてきた。
「そういうこと。たぶん、お見合いの話だろうな…」
俺は、溜め息をついた。
家族には、伝えない。
俺が、亜耶と婚約してることを…。
「そうなのか?」
「そうだろ。あの兄貴たちがわざわざ呼び出すんだからな。この年にもなって、浮いた話がない俺に充てようとしてるんだろ」
雅斗が、複雑な顔をする。
「そろそろ言ってもいいんじゃないか?亜耶とのこと…」
「言いたいさ。だが、まだ言えないだろ。亜耶は、まだ俺の事を見てくれてないだろ」
そう、亜耶は俺のこと毛嫌いしてる。
それは、目に見えてわかってる。
だけど、俺は、亜耶以外は、考えられないでいる。
「今は、まだいい。俺なりに断るから…。だが、これ以上押し付けられて、ナオカツ亜耶が、俺の方に靡かないなら、不本意だが、他の女と結婚するしかないだろ」
俺は、今思ってることを雅斗に伝えた。
「遥…。そんなに亜耶の事を…」
雅斗が驚いた顔をする。
「そうだよ。亜耶の笑顔にどれだけ救われたか…。亜耶が居なかったら、今の俺なんか居ないだろうって、くらいな」
亜耶が、俺の凍てついた心を癒してくれたんだ。
あの時、亜耶に会っていなかったら、俺はもっと荒んでたと思う。
「そっか…。今の亜耶は、同年代の男との関係を築きたいだけだと思う。そのうち、遥の良さをわかってくれるって…」
「ああ、そう願いたいよ」
今は、亜耶が振り向いてくれなくても、触れられれば、それでいい。
それだけ、俺の中での亜耶の存在が大きいのだ。
「遥。明後日から、また忙しいのか?」
雅斗が、質問してきた。
「そうだな。まぁ、仕方ないと思ってる。自分が選んだ道だからな」
俺は、笑って答えた。
自分がやりたくって入った会社だ。
遣り甲斐はあるんだ。
「体、壊すなよ。それこそ、亜耶が心配する」
雅斗の顔も心配そうだ。
「ああ。じゃあ、お休み」
「お休み」
俺は、リビングを出て客室(自室)に向かった。
ベッドに潜り込み、目を瞑る。
亜耶の笑顔が浮かび上がる。
亜耶……。
俺は、そのまま寝入った。
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