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食事で

 二人に案内されて、ついたところは、ホテルないにあるレストラン。

 しかも、窓側の席を予約していた。


 亜耶は、目を輝かせて、窓の外の景色を食い入るように見ている。


「亜耶。そんなに食い入るように見て、楽しいか?」

 何気に聞いたんだが・・・。

「そりゃあ、遥さんは見慣れてるでしょうけど、私は、初めてだもん」

 うっ・・・。

 そんな口を尖らせて、言うなよ。

 抱き締めたくなるだろう。


「アハハ・・・。先輩が、振り回されてるの始めてみた」

 って、沢口が、笑いながら言う。

「由華。やめとけって、後で仕返しされるぞ」

 雅斗が、口を出す。

「ねぇ、亜耶ちゃん。先輩って、亜耶ちゃんの前では、ああいう顔するの?」

 って聞こえてるぞ。


 ああいう顔って、どういう顔だよ。


 亜耶も困った顔をする。


「えっと、ですね。時々ですね。たまに、拗ねた顔もしますから・・・」

 亜耶、それは言わなくていい。

「それって、珍しい顔だよ。超貴重じゃん」

 沢口、言葉使いが、おかしいから・・・。


「そうなんですか?私は、普段から見てますけど・・・」

 だから、それは言わなくても・・・。

「ああ、俺も見てるから、珍しいとは、思わないぞ」

 雅斗までか・・・。

「二人はそうかもしれないけど、あたしには、貴重です」

 と、沢口が、力説する。


「お待たせしました」

 ボーイが、料理を運んできた。

「美味しそう」

 亜耶が、ニコニコしながら言う。

 ・・・が、いっこうに食べようとしない。

 どうしたんだ?

 亜耶の事を見てたら、テーブルマナーがわからないようで、あたふたしてる。

「亜耶。外側のナイフとフォークから使うんだ。もし、無理だったら言って・・・」

 亜耶が、俺の方を見る。

「ありがと」

 少し顔を赤めて、小声で言う亜耶。


 もう、いちいちやることが可愛い。


 その後も悪戦苦闘をしながら、食べている様が、可愛くて、手を出してしまいそうになる。


「亜耶には、ちょっと早かったかな?」

 苦笑しながら、雅斗が言う。

「そんな事ないよ。今から覚えておいた方が、将来、為になるって」

 沢口が、要らんことを言う。

 亜耶は、キョトンとした顔で、話を聞いていた。

 うーん。


「先輩が、もう少し色んな所へ連れていけば、自然と亜耶ちゃんも覚えますって・・・」

 沢口?

 それは、思いっきり勘違いしてる?

 俺と亜耶は、婚約はしてるが、俺の一方通行で、亜耶は俺の事、なんとも思っていないことに気付いてないみたいだが・・・。


 俺は、雅斗に目線を向けると雅斗も首を横に振った。

 訂正するつもりは、無いらしい。

 ハァーー。


「先輩。何暗い顔してるんですか?もっと楽しみましょうよ」


 人の気も知らずに・・・。


「はいはい」

 俺は、適当に返事をする。


「遥さん?」

 亜耶も、心配そうに見てくる。

「大丈夫だよ。亜耶が行きたいのなら、何時でも連れて行ってやるぞ」

 俺は、意地悪ぽく言うと。

「本当?」

 上目使いで俺を見てくる。

 いつそんな事を覚えたんだ?


 って、その前に、マジに食いついてきた?


「エッ、ああ。亜耶が、行きたいところがあればだが・・・」

 俺の方が、ドギマギしてる。

「やった。約束ですよ」

 満面な笑顔で言う、亜耶。


 そんな顔が、見えるとは・・・。


 その横で、沢口がニタニタしてるし・・・。

 その笑い、やめろ。

 仮にも、女だろうが・・・。

 突っ込みたい気分だ。


「よかったね、亜耶ちゃん」

 沢口が亜耶を見る。

「はい、由華さん」

 ったく・・・。


 なんか、罠に嵌められたみたいだが・・・。

 まぁ、いいか。

 これで、確実にデートできるわけだし・・・。

 俺としては、万々歳だ。


「亜耶。勉強、はかどってるか?」

 雅斗が、亜耶に聞く。

「なんとかね」

 亜耶が、難しそうな顔を見せる。

「そっか。亜耶ちゃん、受験生だ。わかんない所があったら、先輩に聞いた方が早いよ。先輩、教免も持ってるから、どの教科でも教えてもらえるよ」

 沢口が、ニコニコする。

「そうなんですか?遥さん」

 亜耶が、興味津々でこっちを見る。

「うん。まぁ、一様、持ってるよー」

 無理矢理取らされたようなもんだが・・・。

「凄いなぁ」

「亜耶、知らなかった?遥、文武両道だから、出来ないものをあげた方が早いんだよ」

 雅斗がまた、要らぬ事を・・・。

 亜耶の俺を見る目が変わった。


「いつも、あんなふざけてばっかりなのに?」

 ちょ・・・ちょっと、亜耶さん。

 それは、俺の事をどう見てたんですか?


「へぇー。亜耶ちゃんの前では、ふざけるんですね」

 沢口が、いいこと聞いたかのようにニマニマしてる。

 あっ。

 もう・・・。

 俺、こいつの前で、崩壊したな。


「由華。その顔は、やめた方がいい」

 雅斗が、沢口に言う。

「だって、あのマジな顔しか見せてこなかった先輩がですよ、亜耶ちゃんの前では、波顔するんだよ。見てみたいです」

 余計なことを・・・。


 誰が、そんなの見せるかよ。

 亜耶は、キョトンとした顔をして、黙々と食べてる。


 何に対しても、一生懸命な亜耶。

 可愛い。


「その顔ですね」

 沢口に突っ込まれる。


 ヤバイ。


「成る程。これが、あの先輩かと思うと、別人ですね」

 納得する沢口。


 これ以上は、見せないようにしないと・・・。


「そろそろ、行くか」

 雅斗が言い出す。

「そうだね」

 沢口も言い出す。

 亜耶を見ると、二人につくみたいだ。


「ここは、俺が払うよ。遅れてきたお詫びに・・・」

 俺は、さっさと伝票を掴み席を立った。





 支払いを済ませ、店を出る。

「遥、よかったのか?」

 雅斗が聞いてきた。

「あぁ。いいよ。そのつもりだったからな」

「誘ったのは、俺たちだぞ」

「うん。俺、あまり使い道無いしな」

 俺がそう言うと。

「ご馳走さま」

 沢口が、にこやかに言う。

 お前が、それを言うか・・・。


「遥。悪いけど、亜耶を送ってってくれるか?」

 雅斗が言う。

「いいよ。亜耶、帰るよ」

 俺は、亜耶を見た。


「う、うん・・・」

 あらら・・・。

 もう、お寝むの時間か・・・。

「宜しくな」

「わかった」

 雅斗たちと別れると亜耶の手を引いて歩き出した。




「亜耶、眠い?」

 俺は、亜耶に訪ねた。

「うん・・・」

「背中におぶされるか?」

「いいの?」

 亜耶の甘えた声。

「いいよ。ほら」

 俺は、亜耶の前に屈む。

 亜耶がゆっくりと俺の背に乗る。

 亜耶の腕が、俺の首に回される。

「立つよ」

「うん」

 俺は、ゆっくりと立ち上がり、亜耶を背中に背負う。


「遥さんの背中、温かい」

 亜耶が、俺の耳元で言う。

 くすぐったい。

「そうか?」

「うん。安心できる場所だよ」

 へッ・・・。

 “安心できる場所“

 そう、言ったのか?

 亜耶にとって、俺は、安心できる場所なのか・・・。

 そんな嬉しいこと・・・あるはず・・・。

「どうしたの遥さん?」

 亜耶の不思議そうな声。

「う、なんでもないよ。それより、大丈夫か?」

 何が、大丈夫かなんだ?

 自分で言っておいて、おかしなもんだ。

「うん・・・。大丈夫だよ・・・。遥さんが、優しいの・・・わか・・・ってるから・・・」

 エッ・・・。

 どうしたんだ?

 今日の亜耶、何かおかしくないか・・・。


「亜耶?」

「ん?」

「今日の亜耶、おかしいぞ」

「うーん。そうかなぁ・・・。もし、そうなら、遥さんのせい・・・だと、思う・・・よ」

 俺のせい?

 なぜ?

 俺が、何かしたのか?


「亜耶・・・」

 改めて聞こうとしたが・・・。

「スー・・・、スー・・・」

 と、規則正しい寝息が、耳に届いた。


 ハァーー。

 ったく。

 肝心なときに寝るなよ・・・。

 まぁ、これも亜耶らしいか・・・。

 俺は、そう思い家までの道を歩いた。

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