遥さん?
遥さんとも合流して、そのままレストランに向かう。
「亜耶ちゃん。今日は、ありがとね」
由華さんが、私の隣を歩きながら言う。
男性人は、由華さんが私のために買ったものを両手一杯に持っていた。
「私の方こそ、ありがとうございます。でも、良かったんですか?あんなにも」
私が、後ろの二人に目線を送る。
「いいの。あたしが、亜耶ちゃんに買ってあげたかったんだから・・・ね」
由華さんが、笑顔で言う。
「お義姉さん、本当にありがとう」
私は、由華さんに飛び付いた。
由華さんは、なんとか私を受け止めてくれる。
って、さっきと逆か?
「もう、亜耶ちゃん。可愛い・・・」
由華さんが、頭を撫でてくれる。
「ちょっと待て。沢口が、姉ってどういう事だ」
遥さんが、戸惑ってる。
あれ?
遥さん、お兄ちゃんから聞いてなかったんだ。
「来年の春に結婚するんだよ。だから、由華は亜耶の義姉になるんだよ」
お兄ちゃんが説明する。
「はーーー?」
困惑気味な遥さん。
「雅斗。それ、聞いてないぞ」
遥さんが、お兄ちゃんに詰め寄ってる。
「しかも、今日一度も亜耶に触れてない!」
そう言いながら、遥さんは由華さんを睨んでる。
「今日は、あたしの義妹とデートしたかっただけで、雅くんと高橋先輩は、荷物係として呼んだだけです!」
って、由華さんが、遥さんを睨み返してる。
この二人、もしかして・・・。
私が、そう思ったときだった。
「遥。さすがこの荷物でレストランは、無理だろうから、一旦置きに行くぞ」
お兄ちゃんが、遥さんに言う。
「置きにって・・・」
ポカンとする遥さん。
「俺、今日、車で来てるから、駐車場まで頼む。由華と亜耶は、ここで待ってて」
「はーい」
私は、素直に返事をした。
「ほら、行くぞ。遥」
お兄ちゃんが、遥さんを従えて行った。
「亜耶ちゃん。災難だね。高橋先輩に懐かれちゃって」
それ、どういう意味だろう?
「高橋先輩。亜耶ちゃんと出会ってから、性格変わったから・・・」
エッと・・・。
何て言えばいいのか・・・。
「雅君から聞いてない?亜耶ちゃんと出会う前の先輩って、近寄りがたくて、誰も近寄らなかったんだから。唯一、雅君とは気があってたみたいだけどね」
由華さんが、にこにこしながら言う。
そうなんだ。
「私の前では、そんな素振り無いですよ。何時も、遥さんから引っ付いてくるので、逆にどうしようか、悩みますけど・・・」
私の言葉に由華さんが、驚いてる。
「えーっ、それ本当!それは、見てみたいかも・・・」
由華さんが、大きな声で言う。
「エッ・・・。って言うか、たまにですけど、甘えも入ってて、手に追えないですよ」
私は、そんな遥さんを思い出し、苦笑した。
「嘘ー。あの先輩が、亜耶ちゃんに・・・。絶対にみたい!その貴重なシーン見てみたい。そして、他の人に・・・」
由華さんが、善からぬ事を考えてるような・・・。
「そこのお二人さん。お暇なら、僕たちと一緒にどうですか?」
との声が・・・。
振り返ると、見知らぬ男性が立っていた。
「暇ではありませんよ。これでも、人を待ってるのですから」
由華さんが、私を庇うように男の人の前に立って、やんわりと断る。
その言い方じゃ、諦めてもらえないと思うんですが・・・。
「そっちのお嬢さんは?」
って、私の方にってくる。
「彼女も、あたしと一緒なの。だから、諦めて・・・。って言うか、諦めた方がいいよ」
由華さんの言葉使いが変わった。
由華さん、何をしようと・・・。
「君には聞いてないんだな。彼女自身に聞いてるんだけど・・・」
「そう。だけど、彼女は、あたしの義妹だからね。一緒にいるのが、当たり前でしょ」
庇われてて、由華さんの顔は見えないが、かなり凄んでるのが、声でわかる。
「妹なんだ。似てないな」
相手の言葉使いも崩れてきた。
「そりゃ、そうよ。血の繋がっていない、義妹だもの」
由華さん?
一体何をしたいんですか?
不安がよぎった時だった。
「亜耶ー!」
そこに、遥さんの声が聞こえた。
振り向けば、慌てて此方に来る遥さん。
そして、由華さんの前に立ちはだかると。
「俺の連れに何か用か?」
って、今までに聞いたことのない低い声で言う。
しかし、相変わらず、足早いなぁ。
何て、のんきな感想が浮かぶ私って・・・。
「嫌、彼女たちが困ってるみたいだったから・・・」
って、見苦しい言い訳が聞こえてくる。
「ほう、この期に及んで、言い訳ですか?みっともないですね。さっさと認めてしまいなさい。彼女たちに声をかけて、ナンパしてたと、さもないと・・・」
遥さんが、彼らに詰め寄ってる。
あれ?
遥さん、口調おかしくないですか?
「遥、その辺にしておけよ。お前、武道全般師範代なんだから、手だすな」
お兄ちゃんの声がした。
その言葉を聞いた二人は、慌てて逃げていった。
「亜耶。大丈夫?」
遥さんは、そう言って、私に抱きついてきた。
あれ、元に戻ってる。
さっきのは、一体・・・。
「うん。由華さんが立ち塞がってくれたから、何もされてないよ」
私が、そう言うと遥さんがほっと息をつくのが見えた。
本当に心配してくれたんだ。
「由華も大丈夫だったか?」
お兄ちゃんの声がした。
「あたしは、平気だよ。こんなのしょっちゅうだし・・・」
って言いながら、震えてる。
そんな由華さんをお兄ちゃんは、抱き締めてた。
「亜耶を守ってくれて、ありがと。それから、俺の前では、強がるな」
お兄ちゃんが、由華さんに言ってる。
その間も、遥さんに抱き締められたままだ。
「遥さん、そろそろ放してもらえませんか?苦しいです」
私が言うと、ゆっくりと手を離してくれた。
やっと、顔を見て話せる。
あ、お礼言わなきゃ。
「遥さん。昨日はありがとうございました。それから、これ、凄く嬉しかったです」
私は、自分がしているチョーカーを指で触れた。
遥さんが、嬉しそうな顔をする。
「亜耶に似合うだろうなぁっと思って、買ったやつだから、着けてもらえるだけで嬉しいよ」
遥さん、心なしか、顔が赤いような・・・。
「遥、亜耶。そろそろ行くぞ」
お兄ちゃんが、声をかけてきた。
「ああ」
遥さんが、そっけなく返事をする。
由華さんは、さっきのがまだ落ち着かないのか、お兄ちゃんに肩を抱かれて歩いてる。
私は、遥さんの後ろをついて歩いた。
遥さん、歩くの早いんだな。
って思っていたら、ピタリと歩みを止めた遥さん。
「どうしたんですか?」
私が聞くと。
「手、繋ごうか?人通りも多いから、迷っちゃうと大変だし・・・」
遥さんが、手を差しのべてきた。
エッ・・・。
いいのかなぁ。
「・・・はい」
私は、遥さんの手を取った。
遥さんは、優しく包み込むように手を握ってくれたのだった。