俺の想い(遥)
亜耶を家まで背負って送る。
俺の背中でスヤスヤ眠る亜耶。
気持ち良さそうに・・・。
しかし、さっきの亜耶、可愛かった。
あんなに甘えてきたの久し振り、いや初めてかも・・・。
その姿をあいつらに見せつけられただけでも牽制、出来たんじゃないかって思う。
こんなにも毛嫌いされてる俺に、甘えた声を出す亜耶が、可愛い。
亜耶の中にある、俺の存在が少しずつ大きくなってるなら、それでいい。
だが悠磨の存在が大きいのなら、俺は・・・。
って、今、考えることじゃない。
俺は、自分で待つって、決めたんじゃないか。
亜耶が、俺の事を好きになってくれることを・・・。
今は、同年齢の男が、気になる時期だってこともわかってる。
だけど、そんな亜耶を見るのは辛い。
亜耶。
早く気付いてくれよ。
俺の想いを・・・。
「は・・・るか・・・さん・・・」
亜耶の声が、耳に届く。
夢に俺が出てきてるのか?
一体、何の夢を見てるんだか・・・。
俺は、鞠山家の玄関を開けて中に入る。
「まぁ、遥さん。重たかったんじゃありません?」
亜耶の母親が、リビングから出てきた。
「いいえ、大丈夫です。これぐらい・・・」
俺は、亜耶の靴を脱がして、玄関にあがる。。
「このまま、亜耶の部屋まで運んじゃいますね」
俺は、亜耶を背負ったまま部屋に向かう。
「お願いします」
俺は、階段を昇り亜耶の部屋に入ると、ベットの上に亜耶を寝かす。
荷物は、机の上に置いた。
その荷物の中にプレゼントが三つあった。
一つは、雅斗のであろう。
もう一つは、悠磨のか?
だとしたら、これは?
俺は、その一つを手にして包装をとく。
ちゃんとした箱に入っていたのは、マフラーだった。
これ、どう見ても俺のだよなぁ。
そう思いながら、自分の首に巻き部屋に置いてある、ドレッサーに目をやる。
やっぱり、俺のだ。
確信持てた。
亜耶が、俺のために選んでくれたんだ。
それだけで、嬉しかった。
あっ。
俺も、本当は、直接手渡したかったんだが、仕方ないか・・・。
鞄から、包装されたプレゼントを取り出し机に置いた。
今日、渡せるとは、思わなかったけど。
亜耶、気付いてくれるかな。
そう思いながら、俺は亜耶が寝てるベッドに近寄る。
邪魔な前髪を払い除け、額に口付けた。
「お休み、亜耶。いい夢を・・・」
俺は、そう言って亜耶の部屋を出る。
ちょうど、雅斗も部屋から出てきた。
「ありがとな、遥」
「何が?俺は、俺がしたいようにしただけ・・・。お礼が言いたいのは、俺の方だ」
って、雅斗に言う。
「どうせ、亜耶の事だから、半分落ちてただろ」
雅斗が、苦笑してる。
「ああ。あんな顔、あいつに見せられないしな。早めに行ってよかった」
まだ、完全に落ちてなかったことに感謝だ。
「遥さん。今日は、もう遅いですし、泊まっててください」
お義母さんが言ってきた。
「気を使ってもらって、ありがたいんですが、明日も朝早くから仕事なので、帰ります」
俺は、接待の途中で抜け出してるから、明日は、その埋め合わせをしないと・・・。
「そうですか・・・。体だけは、気を付けてくださいよ」
逆に心配される。
「ありがとうございます」
俺は、玄関に向かう。
「雅斗。亜耶にマフラーありがとうって言っておいて」
玄関まで送ってくれた雅斗に言う。
「ああ。どうせなら、直接言ったらどうだ」
雅斗が、何を思ったのか知らないが、そう言い出した。
「明日の夕方六時半に駅で待ち合わせな」
突然、言う。
「何だそれ。俺の都合は、お構い無しなのか?」
不貞腐れるように言うと。
「そうだよ。お前、無理にでも約束しないとこないだろ?」
あ、はは・・・。
長い付き合いだからか俺の性格は、把握されてるし・・・。
「わかったよ」
渋々了承する。
「メンバーは、俺と由華と亜耶とお前だからな」
沢口が来るのか・・・。
「わかった。じゃあな、お休み」
俺は、そのまま家に帰った。
翌朝。
雅斗から写メが届いた。
そこには、俺がプレゼントしたチョーカーを身に付けた亜耶の笑顔の写真。
亜耶、気付いてくれたんだ。
“亜耶、嬉しそうに着けてたぞ
雅斗“
雅斗からの一言が、添えられてた。
俺は、その写メを待ち受けに設定して、疲れた時に見ようと思った。