二人の先輩と龍哉
「なぁ、なぁ。どっちが鞠山亜耶ちゃんの彼氏?」
後から来た二年生の先輩が、聞いてきた。
「オレですが・・・」
正確に言うとオレではなく社会人の彼・・・婚約者ですが、とは言えない。
それこそ、個人情報漏洩してしまう。
二人の先輩は、オレを値踏みするように頭から爪先まで視線を送ってくる。
何なんだ?
「大したこと無いじゃん」
ボソリと言われて、頭にきたが、今はこの二人は、外って置いても大丈夫だと思った。
そんなこと言われなくても、自分でも解ってます。
暫くすると開会宣言が行われ、簡単なルール説明があり、大縄が始まった。
失敗を何度も繰り返し、終わった頃には他の班は、もう散らばっていた。
「俺等、最後じゃんか」
ぶう垂れてる先輩。
「さて、何処から回りましょうか?」
舘石先輩が、気遣いながら言う。
「あれでいいじゃん」
さっさとバックネットの方に歩いていく二人。
「班行動の意味、わかってるのかねぇ」
龍哉が、オレの横に並んで言う。
はぁー、ほんとだよ。
「仕方ありませんね。行きましょうか」
舘石先輩も呆れ顔で言う。
乾さんが、舘石先輩の横に並んで歩く。
バックネットの所のお題は、ストライクアウト。
縦、横、斜めの数字を抜いて、ビンゴすればいいらしい。
男子と女子では、投げる位置を変えてるみたいで、ボールも各班十球ずつ最初に与えられて、一ビンゴ出来なかった班は、最後尾に並び直すって事になってる。
「誰が投げてもいいなら、俺が投げるな」
ほんと自分勝手な先輩だ。
「お前が?出来るのかよ」
もう一人の先輩が言う。
「任せておけ」
自信満々だが、本当に大丈夫なのか?
自信満々だった先輩は、見事に外しまくって、一つも抜く事が出来ない。
残り四球となったところで。
「おい、一年。お前に任す」
龍哉に丸投げした。
「俺ですか?いいですよ。悠磨、鞄、よろしく」
龍哉が、嬉しそうに承諾して、オレに鞄を預けてきた。
あの先輩達、龍哉が一枚も抜けなかった時龍哉に全て押し付ける気だ。
そう思ってたら、龍哉が利き腕の肩をぐるぐる回し始めた。
「ちょっと、久し振りに投げるから、上手くコントロール利くかな」
何て、楽しそうに言う龍哉。
「もしかしてだが、中学の時野球部でピッチャーだったりする?」
オレが聞くと。
「もしかしなくても、野球部のエースだったが?」
悪戯がばれた子供みたいな顔をする龍哉。
「ちょっと、やってくるわ」
そう言って、龍哉は決められたラインに立つと、集中して投げる。
ズコン!
と音がして、的に命中させた。しかも二枚抜きで。
もう一球も狙ったとこに当たり、ビンゴして戻ってきた。
「二球残っちまった。」
何て言いながら、肩をほぐしてる。
「ちょうどいい、緊張感だったぜ」
得意気に言いながら。
それを見ていた先輩達が、目を剥いたかと思ったら、直ぐに元に戻り。
「まぐれに決まってるだろ」
口にしてる。
負け惜しみだな。
「まぁ、取り敢えずクリアしたから、チェックしてもらってきます」
舘石先輩が、チェックシートを持って先生のところへ行く。
「さて、次は・・・」
先輩達、何処へ行きたいんだか・・・。
「プールだな」
って、先に行ってしまう。
「お待たせ。あれ、二人は?」
舘石先輩は、二人が居ないことに直ぐ気が付き辺りを見渡して聞いてきた。
「プールの方に先に行っちゃった」
乾さんが答える。
「はぁ・・・、またですか。では、僕達も行きましょう」
舘石先輩は、呆れたように言い体育館の裏にあるプールにオレ達は向かった。