亜耶の体質
今回は、遥さん目線です
あーあ。
この時期、毎年忙しいんだよなぁ。
連日の残業に接待、休日出勤。
亜耶不足だよ。
早く亜耶の顔を見て、この腕に抱き締めて閉じ込めてしまいたいー。
そう思いながら、接待に向かう。
向かう途中で、会いたくてたまらない人物が、目の前に・・・。
幻じゃないよな。
亜耶が、友達と楽しそうにこっちに向かってくる。
「亜耶。何してるんだ?」
俺が、亜耶に声をかけると振り返り驚いた顔をする。
「何って、これから皆とパーティー・・・」
と、返ってきた。
亜耶がマズイって顔をする。
「パーティー?」
俺は、そんな事、聞いて無いが・・・。
「大丈夫。終わったら直ぐに帰るから・・・」
亜耶が、それだけ言って友達のところに戻って行った。
そんな亜耶の背中を見つめていた。
何で、言ってくれないんだよ。
言ったら止められるとでも思ってるんか?
同世代の友達も大事なの知ってるから、前もって言ってくれれば認めるし、連絡さえくれれば迎えにも行くんだよ。何も知らないのって、悔しいだよ。
亜耶は、俺がフィアンセで恥ずかしいのか?
俺は、亜耶だけなんだよ。早く気付けよ。
「高橋、どうした?早く来いよ。時間に間に合わなくなる」
同僚に言われて。
「ああ、すぐ行く・・・」
俺は、亜耶の事を頭の片隅に思いながら、本日の接待先に向かった。
こじんまりとした、小料理屋。
今日は、ここで得意先の上司との接待だ。
「高橋さん。まだ、結婚されてないですよね。私なんて、どうですか?」
相手の上司のお嬢さんが、売り込んでくる。
まぁ、確かに綺麗なんだけどね。
「ごめんね。結婚はしてないけど、婚約者は居るから・・・」
嘘はじゃない。俺の婚約者は、まだ中学生なんだよ。
結婚なんて、何時になるかわから無い。
けど、俺は待つって決めてるんだよ。亜耶しか要らないから。
「嘘。高橋さんって、浮いた話、一つも無いですよね」
そんなの当たり前じゃん。
亜耶を悲しませることするわけないじゃん。
「ねぇ・・・」
なおも諦めず言い寄ってくるが、俺は、時計を見た。
九時半か・・・。
って・・・。
ヤバイ。
アイツラに亜耶の寝顔見せたくない。
「ちょっと、失礼します」
俺は、そう言って鞄を掴むと、同僚の田中の腕を掴んで席を立つ。
「何だよ」
田中が、忌々しげに言う。
「悪い、田中。俺、用事があるから抜ける。後、よろしく」
俺は、それだけ言って、背を向けて歩き出した。
「ちょっ、高橋・・・」
田中の声が、背中でするが、そんなの無視。
今は、亜耶だ。
亜耶の事が、心配だ。
友達の家だって言ってたな。
雅斗なら知ってるか?
俺は、雅斗の携帯に電話を掛けてみた。
『はい』
直ぐに雅斗が出た。
「お楽しみのところ悪いな。亜耶の事で聞きたい事が・・・」
雅斗の事だ、婚約者と仲良くしてるところだろうと思って、そう言ったんだが・・・。
『亜耶ならいないぞ』
「それは、知ってる。会ったから・・・。どこで、パーティーするか聞いてるか?」
焦りながら、言葉を紡ぐ。
『ちょっと待ってろ』
雅斗がそう言うと、バタン、ドタドタと音が聞こえてくる。
家に居たんだな。
『母さん。今日、亜耶どこでクリスマスパーティーするって言ってた?』
そんな声が聞こえてきた。
通話のまま持って、聞きに行ってくれてるんだなとわかる。
『遥、わかったぞ。三丁目の相馬くんの家だ』
三丁目の相馬ね。
「ありがとう、雅斗」
『いやいや。早く亜耶を迎えに行ってくれ』
雅斗が、背中を押してくれる。
「ああ、わかってる」
俺は、電話を切ると三丁目まで走った。
相馬・・・相馬・・・。
あった。
一軒家か。
俺は、チャイムを押す。
ピンポーン。
『はい』
「高橋だが、亜耶を迎えに来た」
玄関が開く。
「どうぞ」
家主が、俺を招き入れてくれた。
俺は、そのまま騒がしいリビングに行く。
案の定、亜耶が、寝落ちしそうになってる。
回りは、俺が来たことで、驚いていたが、そんなのどうでもよかった。
「亜耶、帰るよ」
俺は、亜耶を揺り起こす。
「遥・・・さん?なんで・・・居る・・・の?」
亜耶が、寝ぼけ眼で言う。
「うん・・・、帰・・・る。遥さん、ありが・・・とう」
亜耶が、とろんとした目で言う。
俺は、亜耶にコートを着せる。
「亜耶。荷物はこれだけか?」
俺は、亜耶に聞く。
「うん・・・」
「じゃあ、帰るぞ。皆に挨拶して・・・」
「ごめんね。先に帰るね。お休み」
亜耶が、俺の腕にすがるように立つ。
可愛い事しやがる(本人無意識なんだろうけど)。
「邪魔して、悪かったな」
俺からも一言言って、亜耶を支えながら歩き出す。
亜耶が、靴を履くのを見て玄関を出る。
「亜耶。もう、限界だろ。おぶってやるから・・・」
そう言って、亜耶の前にしゃがむ。
「うん・・・。ごめんね、遥さん・・・。ありがとう」
俺は、亜耶を背負って、家までの距離を歩く。
亜耶・・・。
「遥さん・・・」
「うん?」
「メリークリスマス・・・」
「メリークリスマス」
亜耶は、俺の言葉を聞いて、そのまま寝入ってしまった。
亜耶・・・。
俺の大切な子。
ちょっと、迎えに行くの遅くなったけど、ちゃんと頼ってくれてるんだな。
背中に亜耶の温もりを感じながら、幸せを感じていた。
なんと、亜耶はお子様体質だったんです。
規則正しい時間帯に眠くなるという・・・。